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ABCDEFGHバンドルとは

PICSの精神機能障害の一部は薬剤による治療法がありますが、PICSは自然経過では完治が困難であるため予防や早期介入が重要です。PICSあるいはPICS-Fを減少させるためにABCDEFGHバンドルが提唱されています 1。これは、2010年に人工呼吸患者での管理を包括的に改善するために提唱されたABCDEバンドル2に、PICSあるいはPICS-Fを減少させるために「FGH」が加えられた概念です。

ICU退室後の不安・うつ・PTSDの割合

ABCDEバンドル

A:Awaken the patient daily: sedation cessation(毎日の覚醒トライアル)
毎日、鎮静薬を中止し意識レベルを確認します。

B:Breathing: daily interruptions of mechanical ventilation(毎日の呼吸器離脱トライアル)
毎日、人工呼吸器が離脱できるかどうか確認します。

C:Coordination: daily awakening and daily breathing(A+Bの毎日の実践)、Choice of sedation or analgesic exposure(鎮静・鎮痛薬の 選択)
毎日A+Bを実践することで、人工呼吸期間やICU滞在日数の短縮、死亡率の減少が報告されています。
慎重に鎮静薬や鎮痛薬を選択し、投与量を最適化して中止するタイミングを考えることが重要です。

D:Delirium monitoring and management(せん妄のモニタリングとマネジメント)
せん妄は認知機能障害の独立した危険因子であり、薬理学的介入のみならず、非薬理学的介入(光・騒音対策、音楽療法など)を行いせん妄を予防することが重要です。

E:Early mobility and exercise(早期離床)
早期リハビリテーションを行うことで、PICSを予防できたとする報告があり期待されています。
ABCDEバンドルでは、鎮静、せん妄、不動化がPICSのリスクであることを強調しており、それらのリスクを減らすためにABCDEバンドルが導入され実践されています。

このABCDEバンドルに加え、さらにPICS、PICS-Fを予防するために「FGH」が追加された概念がABCDEFGHバンドルです。

F:family involvement(家族を含めた対応)、follow-up referrals(転院先への紹介状)、functional reconciliation(機能的回復)
家族の希望・疑問を治療計画に組み込んだり、ICUラウンドに家族が立ち会ったりすることで家族の不安が軽減するという報告があります。紹介状にPICSやPICS-Fに関わる情報を記載することで、転院先でも同様の活動度を保つことが可能となります。また、患者の機能的回復には医師・看護師と理学療法士との連携が重要であることが強調されています。

G:Good handoff communication(良好な申し送り伝達) 申し送り事項にPICSやPICS-Fの情報を盛り込むことで、スムーズな治療の継続性を担保しPICS予防にもつながるとされています。

H:Handout materials on PICS and PICS-F(PICSやPICS-Fについての書面での情報提供)
PICSやPICS-Fに関するパンフレットの活用やICU日記がここに含まれます。
ICU日記は集中治療によって歪んでしまった記憶を正し、心理的回復を促すツールとして今日注目されています。

現時点では、ABCDEFGHバンドル全体でのPICSやPICS-F予防をアウトカムにした臨床研究はありませんが、ABCDEFバンドルを遵守することで、重症患者においてせん妄日数が短縮したという報告があり、今後ABCDEFGHバンドルがPICSやPICS-F予防につながるものと期待されています。


文献

1. Harvey MA, Davidson JE. Postintensive Care Syndrome: Right Care, Right Now…and Later. Crit Care Med. 2016;44(2):381-385.

2. Vasilevskis EE, Ely EW, Speroff T, et al. Reducing iatrogenic risks: ICU-acquired delirium and weakness--crossing the quality chasm. Chest. 2010;138(5):1224-1233.