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早期離床の進め方

患者を起こそう!

ICUであっても意味もなく安静臥床を強いる必要はありません。
人工呼吸器を装着していても適応基準に合致していれば、段階的に離床を進め、車いす移乗、ベッド端座位、立位、可能であれば歩行も行います。ただ患者は重症のため、離床は病態や鎮痛鎮静状況、デバイスなどを確認し、安全に進められるかどうか、適応や開始基準(表1、2 1)と照らし合わせて判断をします。特に鎮痛鎮静のコントロールは必須です。早期離床に先立ち、医師や看護師、理学療法士、臨床工学技士などによる多面的な患者評価を行い、綿密な離床の実施計画を立てます。また人工呼吸器回路、輸液ルート、ドレナージなど実施環境の整備、デバイス設定の変更を行い、施行時の介助や急変時の対応などに備えて必要なスタッフ数を揃えておきます。さらに早期離床について患者や家族に説明し同意を得ることも必要です。

早期離床の実際は、あらかじめ設定したプロトコルに沿って進めます 2)(図)。
座位、立位と進めていく各段階で、呼吸循環動態、鎮静や疼痛、自覚症状、他覚症状を評価します。
また筋力や関節可動域など動作に耐えうる身体機能を持ち合わせているかの確認も必要です。


参考文献

1) 日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会:集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~. 日集中医誌 24:255-303, 2017

2) Engel HJ, Tatebe S, Alonzo PB, et al. Physical therapist-established intensive care unit early mobilization program: quality improvement project for critical care at the University of California San Francisco Medical Center. Phys Ther. 2013;93(7):975-85.
日本集中治療医学会


表1. 集中治療室で早期離床やベッドサイドからの積極的運動を原則行うべきでない


1) 担当医の許可がない場合
2) 過度に興奮して必要な安静や従命行為が得られない場合 RASS≧2
3) 運動に協力の得られない重篤な覚醒障害(RASS≦-3)
4) 不安定な循環動態で、IABPなどの補助循環を必要とする場合
5) 強心昇圧薬を大量に投与しても、血圧が低すぎる場合
6) 体位を変えただけで血圧が大きく変動する場合
7) 切迫破裂の危険性がある未治療の動脈瘤がある場合
8) コントロール不良の疼痛がある場合
9) コントロール不良の頭蓋内圧亢進(≧20mmHg)がある場合
10) 頭部損傷や頸部損傷の不安定期
11) 固定の悪い骨折ある場合
12) 活動性出血がある場合
13) カテーテルや点滴ラインの固定が不十分な場合や十分な長さが確保できない場合で、早期離床やベッドサイドからの積極的運動により事故抜去が生じる可能性が高い場合
14) 離床に際し、安全性を確保するためのスタッフが揃わないとき
15) 本人または家族の同意が得られない場合

RASS, Richmond agitation-sedation scale; IABP, Intra aortic balloon pumping: 大動脈内バルーンパンピング



表2.早期離床やベッドサイドからの積極的運動の開始基準

指標 基準値
意識 Richmond Agitation Sedation Scale (RASS) -2≦RASS≦1
30分以内に鎮静が必要であった不穏はない
疼痛 自己申告可能な場合Numeric rating scale(NRS)
もしくはVisual analogue scale(VAS)
自己申告不能な場合Behavioral pain scale(BPS)もしくはCritical-Care Pain Observation Tool(CPOT)
NRS≦3 もしくは VAS≦3

BPS≦5 もしくは CPOT≦2
呼吸

人工呼吸器
呼吸回数(RR) <35回/分が一定時間持続
酸素飽和度(SaO2) ≧90%が一定時間持続
吸入酸素濃度(FIO2 <0.6
呼気終末陽圧(PEEP) <10cmH2O
循環 心拍数(HR) HR:≧50拍/分 もしくは ≦120拍/分が一定時間持続
不整脈 不整脈 新たな重症不整脈の出現がない
虚血 新たな心筋虚血を示唆する心電図変化がない
平均血圧(MAP) ≧65mmHgが一定時間持続
ドパミンやノルアドレナリン投与量 24時間以内に増量がない
その他 ・ ショックに対する治療が施され、病態が安定している。
・ SATならびにSBTが行われている。
・ 出血傾向がない。
・ 動く時に危険となるラインがない。
・ 頭蓋内圧(ICP)<20 cmH2O。
・ 患者または患者家族の同意がある