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PICSとは

PICS とは、ICU 在室中あるいは ICU 退室後,さらには退院後に⽣じる⾝体障害・認知機能・精神の障害で、ICU 患者の⻑期予後のみならず患者家族の精神にも影響を及ぼします(図 1)。 PICS は近年の救急・集中治療領域のホットトピックスの1つで、近年 ICU 患者における⻑期的な運動機能・認知機能・精神の障害として様々な報告がなされるようになり、市⺠および医療従事者へのPICS の啓発活動は 2010 年以降の集中治療医学における解決すべき重要課題になりつつあります。


PICS の3つの症状

集中治療後症候群(PICS)とは 1)運動機能障害
PICS の運動機能障害として、肺機能障害、神経筋障害、全般的⾝体機能障害などがあります。特に重症疾患の罹患後に左右対称性の四肢のびまん性の筋⼒低下を呈する症候群を ICU-acquired weakness(ICU-AW)と呼び、PICS の運動機能障害のなかで最も重要なカテゴリーとして注⽬されています。

2)認知機能障害
認知機能障害は、ICU退室患者の30-80%に発症します。認知機能が障害された高齢者は、死亡率増加のリスク因子だけでなく、医療費の増加にも関連し、さらに家族の大きな負担となるため、大きな社会問題となります。ICU で遭遇する認知機能障害の多くはせん妄ですが,うつ病の発症による認知機能障害や高齢者では認知症の悪化なども認められます。

3)精神機能障害
うつ病、不安、⼼的外傷後ストレス障害[posttraumatic stress disorder (PTSD)]が PICS の精神障害を構成する要素です。重症患者の⽣存者のうち、30%はうつ状態に苛まれ、70%は不安に苦しみ、10−50%は PTSD を発症します。そのため、可能な限り精神的なアセスメントを⾏い、適切な対応が必要です。


患者家族における PICS

PICS は⽣存している ICU 患者でのみで発⽣する⼀⽅、PICS-F は生存者および非生存者の家族で発生することがあります。これを postintensive care syndrome-family (PICS-F)といい、5)の項で解説します。


PICS を予防しよう!

PICS予防のためのABCDEFGHハンドル 患者および家族におけるPICSの有病率を減少させるためには、危険因子を予防または最小化することです。ABCDEバンドルとは、人工呼吸管理患者の管理においてPICSを予防するためにABCDEを頭文字とする管理をバンドルで行う概念で、2010年頃より提唱され始めました。その後、さらにPICSを減少させるためならびに、PICS-Family(PICS-F)を予防するために「FGH」が加えられ、ABCDEFGHバンドルとなりました(図2)。


まとめ

PICSとは、ICU在室中あるいはICU退室後、さらには退院後に生じる運動機能、認知機能、メンタルヘルスの障害です。
さらには患者家族のメンタルヘルスにも影響を及ぼす。PICS患者の長期予後改善には、PICSの予防をし、いかにICU患者およびその家族に質の高い生活を提供できるかが重要です。


文献

1. Needham DM, Davidson J, Cohen H, et al. Improving long-term outcomes after discharge from intensive care unit: Report from a stakeholders' conference. Critical Care Medicine. 2012;40(2):502-509.
2. Davidson JE, Harvey MA, Schuller J, Black G. Post-intensive care syndrome: What is it and how to help prevent it. American Nurse Today. 2013;8(5):32-38.