TO JOIN THE INTENSIVE CARE TEAMインタビュー 山下 遊平
略 歴
群馬大学医学部保健学科作業療法専攻を卒業後、群馬県立心臓血管センターに入職し、ICUでの作業療法に携わってきた。心血管疾患患者の早期リハビリ、PICS予防、嚥下機能支援に取り組み、多職種と協力しながら患者の回復を支えている。現在は群馬大学で非常勤講師も務め、学びを深めながら研究・教育にも関わっている。日本集中治療医学会集中治療PT・OT・ST委員会などの活動にも参加し、心臓リハビリテーション指導士などの資格を活かしながら、引き続き努力していきたいと考えている。

公開日:2025年10月15日 ※所属・役職等はすべて記事公開時点のものです

Q 集中治療の魅力とは?

集中治療の魅力は、生命の危機にある患者に対し、多職種が連携して迅速かつ適切な医療を提供できる点です。私は作業療法士として、重症な患者さんの身体機能だけでなく、認知機能や精神機能の維持・回復にも関わることにやりがいを感じています。特にICUではせん妄やPICS(集中治療後症候群)への対応が重要であり、早期リハビリが身体・精神の両面に与える影響を強く実感しています。急性期からの適切な介入が、その後の転帰を大きく左右する点が、集中治療の大きな魅力です。

Q 集中治療との関わり

ICU担当の作業療法士として、PICS予防を目的に、人工呼吸器装着下からの早期リハビリを実施しています。特に嚥下機能評価・練習や認知機能の維持、日常生活活動(ADL)への移行支援に注力し、多職種と連携して包括的なケアを行っています。

Q この道に入って感じたこと

集中治療では、患者の病態が刻々と変化するため、リアルタイムでの評価と適応が求められます。リハビリの視点からも、安静による廃用症候群を防ぐための早期介入が重要であり、ICUではその効果を強く実感します。また、多職種連携の中で、各専門職が対等に意見を交わし、最適な治療方針を検討するプロセスが大きな学びとなっています。他領域と比較しても、医療チーム全体の協力が不可欠である点が特徴的だと感じています。

重症患者さんへの早期作業療法を確立・標準化したい

Q これまで所属してきた施設を選んだ理由

急性期心血管疾患に特化した医療機関であり、集中治療とリハビリの融合に注力できる環境が整っていたためです。早期リハビリの導入や多職種連携が進んでおり、作業療法士としての専門性を最大限に活かせると考えました。

Q これから力を入れていきたい分野

重症な患者さんに対する早期リハビリテーション(作業療法)の確立に注力したいと考えています。特に、ICU在室期間中の廃用予防、PICS(Post-Intensive Care Syndrome)対策、認知機能・身体機能の早期回復を促すためのエビデンス構築に貢献したいです。また、心血管疾患患者における急性期からの適切な作業療法の導入がその後の転帰に与える影響について、さらなる研究と臨床応用を進めたいと考えています。

Q 今後のキャリア

今後は、ICUリハビリテーション(作業療法)の標準化に向けた取り組みを強化したいと考えています。特に、重症患者のリハビリ介入プロトコルの策定、リスク管理の確立、多職種連携の強化を通じて、質の高い医療を提供したいです。また、研究活動を通じてエビデンスを発信し、国内外のICUリハビリの発展に寄与することも目標としています。

Q 多職種連携で大切にしたいこと

ICUでは多職種の協力が欠かせません。私の施設では、リハビリカンファレンスの開催や情報共有の工夫を重ねながら、チームとしての連携を深めています。今後も学びながら、より良い支援ができるよう努めていきたいです。

早期離床の重要性を理解し、協力してくれる医師や看護師の存在が大きな支えに

Q 印象に残る経験

早期離床の重要性を理解し、積極的に協力してくれる医師や看護師の存在が大きな支えとなっています。特に、リハビリの視点を尊重し、適切な鎮静管理を行ってくれる医師や看護師の対応には感謝しています。

Q 次世代の仲間へのメッセージ

ICUでの作業療法はまだ発展途上の分野であり、試行錯誤の連続ですが、その分、多くの可能性があります。多職種と協力しながら、一緒により良い支援の形を模索していけることを願っています。

Q 10年後の自分へ

初心を忘れず、ICUリハビリの発展に貢献し続けているか? 多くの患者の回復を支え、後進の育成や研究活動にも積極的に取り組んでいることを願います。