TO JOIN THE INTENSIVE CARE TEAMインタビュー 福勢 麻結子
略 歴
女子栄養大学卒業。2012年イムス葛飾ハートセンターに入職。給食管理(直営)、栄養管理に携わる。栄養サポートチームでの活動を通して、心不全患者に対する栄養管理とともに、集中治療室における早期経腸栄養に関心を抱く。2020年より東京医科大学病院に勤務。現在はICU・CCUでの栄養管理に携わりながら臨床研究にも取り組んでいる。保有資格はNST専門療法士、栄養経営士、心不全療養指導士。

公開日:2024年3月26日 ※所属・役職等はすべて記事公開時点のものです

Q 集中治療の魅力とは?

私が集中治療に携わるようになったきっかけは、栄養管理の重要性を感じたためです。急性期病院で働く中で、病院食や栄養指導以外にも患者さんに必要な栄養管理があるのではないかと考えるようになりました。自己学習を続ける中で「早期経腸栄養」が重要であることを知り、集中治療室での栄養管理に取り組み始めました。多職種とともに重症患者さんの栄養管理に携わることができることに魅力を感じています。

Q 集中治療との関わり

私は卒後8年程、給食直営病院(病院栄養士が調理などの給食業務を行う)で働いていました。給食業務に加えて一般病棟、外来、集中治療室の栄養管理にも携わりました。現在は、当院のICU・CCUで専任管理栄養士として常駐しています。

Q この道に入って感じたこと

管理栄養士が集中治療室で栄養管理に取り組むにあたり、知識の習得や体制の整備については容易ではないと感じています。
集中治療室で日常的に使われる共通言語や治療方法などは、管理栄養士にとって馴染みがないものが多いため、自己学習が必要だと思います。
また、集中治療室における栄養管理は患者さんの状態により、日々あるいは時間ごとに変化します。そのため、管理栄養士は病棟に常駐していることが理想であると感じています。

退院後の生活も見据えた急性期栄養管理には多職種連携が重要

Q これまで所属してきた施設を選んだ理由

管理栄養士の職域は幅広く、私の場合は臨床以外での就職を考えていましたが、結果的には病院勤務となりました。もともと臨床栄養が苦手であったため、働き続けることに自信はありませんでしたが、多職種とともに患者さんのサポートに携わることにやりがいを感じるようになりました。以前の病院には8年ほど勤務しましたが、様々な病態への栄養管理や研究活動に対してより積極的に取り組みたいと考え、当院に入職しました。

Q これから力を入れていきたい分野

卒後、循環器内科・心臓血管外科で構成された循環器専門病院に勤めていた経験から、心不全療養指導士を取得しました。療養指導は主に一般病棟や外来になりますが、CCUにおける心不全患者さんへのサポートを模索しています。私が携わるのは急性期の栄養管理のため、経口摂取が可能であれば食事摂取量の確認・調整、挿管人工呼吸器管理であれば経管栄養や静脈栄養を検討します。その他、心不全の進行・増悪予防のために食生活や栄養状態をアセスメントし、一般病棟へ引き継ぐように心がけています。心不全の栄養管理は多職種との連携も重要であり、毎朝の多職種カンファレンスで情報共有を行っています。

キャリアプランの一つとしての「集中治療室専任管理栄養士」

Q これからやっていきたいこと

研究と教育です。私がはじめて研究に取り組んだのは、卒後3年目のことでした。医師のご指導の下、学会発表や論文作成に取り組むことができました。研究活動は時間と労力を要しますが、管理栄養士自身が栄養管理と向き合い、アウトカムを発信していくことの必要性を感じました。現在も研究活動に取り組んでいます。 また、集中治療室における管理栄養士の教育にも関心があります。私自身、自己学習の他に他職種から学んだことが多かったため、管理栄養士同士の教育方法を検討するとともに、他職種と連携した学習にも取り組みたいと考えています。

Q 多職種連携で大切にしたいこと

毎朝多職種カンファレンスがあります。患者さんの病態や治療方針を確認して、管理栄養士の視点で提案・相談をしています。常駐しているため、カンファレンス以外にも他職種と相談をしながら栄養管理に取り組んでいます。

Q 印象に残る経験

集中治療室で働きはじめた当時は、他職種と同じようにディスカッションに参加をすることは容易ではありませんでした。日々不安げに病棟を歩き回る様子を察してか、他職種から声をかけていただくことも多く、私のモチベーションとなりました。

Q 次世代の仲間へのメッセージ

近年、集中治療領域の栄養管理やタスクシフト・シェアが注目されはじめ、管理栄養士は時代の変化に対応することが求められていると感じています。大切なことは、一医療職であるとともに栄養の専門家であると自覚をもち、自分にできることを考え、行動し続けることだと思います。集中治療専任管理栄養士をキャリアプランの一つとして考えていただけると幸いです。

Q 10年後の自分へ

10年前の私からしてみたら、まさか集中治療室を担当しているとは予想もしていなかったでしょう。それと同じように、10年後の私が何をしているかということは今の私には想像もつきません。どのような環境であっても、真摯に取り組む姿勢と周りの方への感謝を忘れずに過ごしていれば良いと思います。