理事長あいさつ

President
 
西田 修
一般社団法人
日本集中治療医学会
理事長
2020年3月5日より、日本集中治療医学会の第5代理事長を拝命致しました藤田医科大学病院 集中治療部の西田 修です。歴史と伝統のある本学会の理事長を拝命し、大変光栄であると同時に身の引き締まる思いです。COVID-19 の大きな渦に巻き込まれ、私自身が会長を仰せつかっておりました第47回学術集会が集会型での開催見送りとなり、社会も学会も混乱している中での理事長就任となりました。今回の一連の状況を通して、改めて危機管理のあり方を学ぶとともに、COVID-19の対応に尽力されている会員の皆様のご活躍は、我が国の医療における本学会が果たしうる位置づけを国民に伝えることができる重要な機会となることと信じております。
理事長就任にあたり、ご挨拶させて頂きます。

新専門医制度が本格的にスタートし、学会のあり方が問われる時代になって来ております。専門医機構の枠組みに残るために重要なことは、学会が社会・国民に対して如何に貢献できるかを明確に打ちだすことであると考えます。すなわち、集中治療専門医と専門教育を受けたメディカルスタッフで構成される多職種チームで行う「集中治療の存在意義」を明確にする必要があります。また、そもそも会員に対するメリットを明確にしなければ、学会の発展はありません。多職種からなる本学会では、会員からの生の意見を聴きながら多角的に進める必要があります。
本学会は、今、「大きな岐路に立たされている」という認識を持ち、「ビジョンを明確」にしなければ、何に向かってどのように改革すべきかの判断を誤ることになります。

「開かれた学会を目指し、社会と会員に対する学会の存在意義を明確に!」

をテーマに掲げ、強い信念を持って理事長としての責務を果たしたいと思います。取り組むべき課題は山積みですが、特に重要と考える項目を掲げます。

●透明性が高く開かれた学会の構築
学会の方向性を決めるような重要事項については、「意見の集約と議論の公開」が大切です。メールマガジンやウェブアンケートなどを通じて広く意見を求めるなど、会員皆様の意見を聞きながら進めるシステムを構築します。
●専門医制度・教育制度・専門医研修施設認定要件の見直し
これらは学会の存在意義にかかわる喫緊の課題です。重症患者の診療の質向上に如何に貢献できるかを国民に示さなければなりません。基本領域の診療科と集中治療専門医の立ち位置・あり方を学会全体で考えていく必要があります。専門医試験・教育に関しては、全身管理に必要な知識・マネージメント能力の教育を行い、それを問う仕組みを構築する必要があります。「認定施設要件の見直し」も急務で、専門医の働く場所で縛るのではなく、如何にICUのマネージメントに関わり、質の高い集中治療と教育のために「専門性を発揮するシステムが構築されているかを問うべき」であると考えます。
●委員会のあり方の再考
委員会は学会運営の柱です。「委員、委員長の選出法を見直し、活動状況の見える化」を推進していきます。学会の方向性を決めるような委員会では、委員の選定や審議の方向性が非常に重要であり、理事会と密な「連携を図るシステム」を構築していく必要があります。
●多職種連携と組織のあり方の再検討
本学会は、チーム医療推進の旗手としての役割を果たす必要があります。職種毎の「教育システム・学会認定制度」などの構築を今後も更に進める必要があると同時に、多職種や専門領域、地域性などを考慮した「理事会・評議員会等の構成も再検討」を要すると考えます。
●会員サービスの充実とホームページの充実
年会費に見合う「会員であることのメリット」を如何に構築していくかは非常に重要です。多職種からなる会員の様々な声を聴き、ニーズに合ったサービスを実現していくための委員会を設立し、各種委員会・理事会と連携しながら多角的に取り組む必要があると考えます。また、ホームページを充実し、会員のためのコンテンツ、本学会の存在意義を社会に知らしめるコンテンツの充実を図ります。
●国際的な学術研究の推進のためのプラットフォームの構築
英文機関紙Journal of Intensive CareにImpact Factorがつくことが決定しました。本学会が、今後さらに国際的に重要な地位を占める学術団体として発展するためにも、本学会が主体となり、質の高いエビデンスやガイドラインを世界に向けて発信し続ける必要があります。その一環として、「学会主導多施設共同研究、国際連携共同研究、企画・推進・支援を行う特別組織」を作り、大型プロジェクトを含めた学術研究推進のプラットフォームを作ります。
●長期予後の質改善を見据えた明日の診療のための取り組み
重篤な病態からの生存者の多くが、長期にわたり社会復帰が困難となり、その家族にまで影響を及ぼしている現状が明らかになっています。少子高齢化が進む中で、集中治療により救命しても、その多くが要介護となるような構図は決して健全な状態とは言えず、集中治療の存在意義が揺るぎかねない潜在的な問題をはらんでいます。集中治療は、救命の先にある社会復帰を目標とすべきものであり、集中治療医学会が中心となって、地域の受け皿との連携など社会全体で考える取り組みを行っていく必要があると考えます。長期予後の質改善を目指した取り組みとして、「集中治療早期リハビリテーション委員会」に引き続き「PICS対策・生活の質改善検討委員会」を立ち上げ活動が開始されております。有効な予防策・治療法を確立し、これに対する診療報酬獲得などの働きかけを多面的に行っていきます。
●学術集会の改革
「学術集会あり方検討委員会」を中心に様々な改革を行い、運営面での改革、財政面での改革、構造化抄録と査読基準の均質化、査読結果の通知、採択率の見直しなどを皆様の意見を聴きながら進めております。また、今回のCOVID-19 の経験を通して、学会開催に関する危機管理のあり方なども新たな課題として取り組んでいきます。
●関連他学会との連携
本学会の守備範囲には、多くの関連領域の学会があります。これらの学会と、各種ガイドライン、委員会活動、学会でのジョイント企画などで連携することにより、大きな成果が期待できる分野が数多くあります。本学会から声掛けすることでネットワーク作りを進めていきたいと考えています。
●国際交流とグローバル化
アジアを含む世界とのグローバルな交流をさらに推進します。JSICMの存在感を示し、日本から世界に向けて多くのエビデンスやガイドラインを発信できるレベルを目指すシステムの構築を目指します。
●事務局機能の強化
会員数と多様性の増加、委員会の増加、セミナーの増加、国際交流の活発化、ガイドラインの整備、専門医制度・試験など、学会の規模が大きくなるに伴い、事業内容が増加し事務局の業務は急速に膨大化しております。学会業務・事務局業務を見直し、業務の内製化とアウトソーシングを仕分けしながら、質の高い業務を効率よくこなせるように抜本的な改革を図ります。
●財務管理と予算の適正化ならびに大型プロジェクトの取り組み
学会運営のビジョンを明確化し、必要と判断するプロジェクトには大胆な支出も時に必要です。収入と支出の管理に留まらず、全体を俯瞰しながら適正化した予算を組むことが重要と考えます。新たに財務管理委員会を設置するとともに、理事会全体で予算を考える仕組みを作ります。

上記に掲げたテーマとビジョンを信念に、理事会をONE TEAMとしてまとめ、そのキャプテンとして、本学会発展のために最大限の尽力をして参ります。
会員のご協力なくしては学会の発展はあり得ません。
何卒宜しくお願い申し上げます。

2020年3月12日