COVID-19重症例急増と診療報酬の特例措置に関する理事長声明


新型コロナウイルス感染症の確定者が、4月18日の段階で1万人を突破いたしました。
前回、4月1日に理事長声明を出させて頂いた時の4倍以上であり、日々増加が続いております。COVID-19重症例の多くは、発症1週間ほどで急激に重篤化する例が多いことが指摘されています。我々の重症患者登録システム"CRISIS"での集計結果を見ても、ここにきて人工呼吸器やECMOの装着を要する重症患者が急増しており、現場で働く会員の皆さまから、ひっ迫した声が届けられております。

COVID-19重症例の受け入れは医療機関側にとって、風評被害以外にも、患者・スタッフへの院内感染リスク、感染防御対策費用、通常医療への圧迫などによる経営面での負担は大変大きく、ICUスタッフの大量自宅待機による、病院機能停止のリスクもあります。このため、引き受ける医療機関が大変少なく、一部の医療機関に集中する結果、集中治療の現場でも医療崩壊が一部で始まりつつあり、重症患者の受け皿拡充は喫緊の課題となっております。

このような事態を想定し、日本集中治療医学会では関連学会、関連団体とも協同し、様々な取り組みを行ってきております。

4月13日には、日本救急医学会と連名で、政府に診療報酬の特例措置の要望を提出致しました。COVID-19重症患者管理に必要な集中治療にかかる多大な医療資源提供や、COVID-19以外の患者も含め、集中治療室以外のハイケアユニット等での集中治療の提供などに相応した診療報酬等を求めるものです。
・要望書 (日本集中治療医学会・日本救急医学会連名)

日本看護協会と日本病院会からも、ほぼ同じ内容の要望をそれぞれ提出して頂くことができました。
その結果、4月18日事務連絡が発出されました。歴史的な特例措置であると思います。
・新型コロナウイルス感染症患者(中等症・重症患者)への診療報酬における対応について (中央社会保険医療協議会)
・新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて (厚生労働省保険局医療課)

この場を借りて、政府の迅速かつ柔軟なご対応に心から感謝いたしますとともに、ご協力頂きました日本看護協会と日本病院会に深く御礼申し上げます。

今回の特例措置で、重症患者の受け皿が広がる準備が整いました。
今後は、各都道府県知事が、軽症から重症に至るまで、地域の実情に根ざした医療機関の再編成等を指示するなど、COVID-19以外の症例も含め適切な医療が維持できるよう、強いリーダーシップを発揮して迅速なご対応を頂くことを強く望みます。
さらに、残された課題として、最前線で働くスタッフの不安・恐怖、心無い差別から守ることが重要であり、モチベーションを失わないように、危険手当の充実、速やかな労災認定、宿泊手配などの対応が急がれるものと思います。

日本集中治療医学会では、集中治療に精通していないスタッフで重症症例を管理せざるを得ない状況に対応するために、医療従事者からの質問を広く受け付ける相談窓口を開設しました。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集中治療相談窓口

また、日本呼吸療法医学会、日本救急医学会の3学会合同 日本COVID-19対策ECMOnetの有志による、人工呼吸教育ビデオを作成し、一般医療職を対象に公開しております。現場の教育に用いやすいように、ダウンロードして使用する形式としております。
・人工呼吸教育ビデオ 三学会合同 日本COVID-19対策ECMOnet

感染拡大のスピードが増すと、一気に重症患者が増え現場での対応が益々大変となることと思われます。マンパワーの確保を踏まえ、日本麻酔科学会と共同声明を出させて頂いております。
・COVID-19対応に関する日本麻酔科学会・日本集中治療医学会 共同声明

現状、皆様のご尽力により、我が国の致死率は低く押さえられております。先の理事長声明にも書かせて頂きましたが、感染が蔓延した状況では、我が国から如何に死者を少なくするかが大切であり、これはCOVID-19の患者だけではありません。命を守る最後の砦としての集中治療の体制を維持することは大変重要であり、最も効果的なことは、感染を拡大させないことです。これには、国民一人一人の皆様のご協力が不可欠です。この全世界的な困難に、国民の皆様と共に、一丸となって立ち向かって参りたいと思います。
会員の皆様にあってはこれからが正念場です。自施設でまた院内外での指導的立場として、如何なくその専門性を発揮し国民の命を守って頂くことを期待致します。

末筆ではございますが、皆様ご自身の体調管理には十分にご留意頂きますようお願い申し上げます。



2020年4月20日
一般社団法人 日本集中治療医学会
理事長 西田 修