U35 月例報告 2025年3月
■Topics第52回集中治療医学会学術集会 U35企画
報告者:福勢 麻結子 開催日:2025年3月14日(金)~3月16日(日)
第52回日本集中治療医学会学術集会では、U35企画として、若手医療者の交流と学びを目的としたコンシェルジュブースと3つのセッションを開催しました。医師・看護師・薬剤師・臨床工学技士・療法士・管理栄養士といった多職種が主体的に関わる企画を通して、集中治療領域におけるキャリア形成や多職種連携の在り方について活発な議論と情報交換を行いました。
本企画の開催にあたり、ご指導・ご支援を賜りました先生方ならびに関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
本報告書では、U35コンシェルジュブースや各パネルディスカッションで得た学びと今後の展望について共有します
U35コンシェルジュブース
報告者:奥脇 一 開催日:2025年3月14日(金)~3月16日(日)
日本集中治療医学会学術集会に参加された若手医療者に対して、集中治療領域における各職種のキャリアパスや専門認定資格の内容、学術大会の周り方などについて U35プロジェクトメンバーに相談できる場所としてコンシェルジュブースを実施しました。
学会期間中の2025年3月14日~3月16日、担当を分担してブースを運営し、3日で合計40名の方にお越しいただきました。(参加者内訳:医師11名、看護師5名、臨床工学技士8名、理学療法士7名、作業療法士2名、薬剤師6名、管理栄養士1名)
参加者からは、キャリア・認定・専門資格に関する質問、キャリア形成に関する相談、U35の活動や入会に関する質問をいただき、またU35メンバーの交流もでき有意義なブースとなりました。本企画の終了後、U35への入会者が一定数いたことも収穫であり、来年以降もU35 の宣伝、学会加入、同世代の多職種のつながりといった活動を続けていきます。


パネルディスカッション 症例検討「その時カンファが動いた –多職種で"診る":現実 (real)⇆理想 (ideal)–」
報告者:奥川 寛 開催日:3月14日(金)
多くの病院のICUでは、毎朝、多職種カンファレンスが行われています。本セッションでは、カンファレンスにおいて自分の職種が多職種から何を求められているのか、また、より良いコミュニケーションとは何かをテーマに検討しました。
まず、事前に実施したアンケート結果をもとに医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、管理栄養士、療法士の方々にカンファレンスで求められている役割について共有してもらいました。
次にこれら6職種の方々に、”望ましくないカンファレンス”と”理想的なカンファレンス”を交互に実演してもらいました。私たちが考える理想的なカンファとして、①チームの一員として、自分が他職種に何を求められているのかを理解する ②それぞれの職種が、主体的かつ対等に議論する ③様々な課題に対し多職種から意見を出し合い、より建設的な議論を行う、の3つを提示しました。
また、カンファレンスの実演中にMentimeterを使用し、会場の方々からリアルな意見を募りました。Mentimeterの活用により、より臨場感のあるセッションとなりました。

パネルディスカッション「私たちの海外渡航記-日本の常識は世界の非常識!?」
報告者:芝 真佐樹、井上 優汰 開催日:2025年3月16日(日)
この企画は、海外に挑戦したい若手医療者の背中を押すことを目的にスタートしました。
U35の枠を超えて、医師、看護師、理学療法士など多職種の若手医療者が登壇し、悲喜交々な経験をシェアしました。さらに、海外病院ツアー企画、海外大学院のリアル、国際学会の渡航費捻出方法や気になる先生の口説き方など、今日から使える実践的な経験談も多く紹介され、とても参考になりました。Mentimeterを活用した臨場感のあるセッションで、医師以外にも多くの職種の方にご来場いただきました。ぜひ多くの若手医療者の方々に参考にしていただきたい、非常に刺激的で有意義なセッションになったと感じています。
海外に興味がある、けれどその一歩が出ない。そんなあなたは、U35国際交流企画の扉を叩いてみてください!

パネルディスカッション「そんなのあり!?新時代のキャリアパス ~私はこうして自己実現した~」
報告者:星野 晴彦 開催日:2025年3月16日(日)
今回の「そんなのあり!?新時代のキャリアパス ~私はこうして自己実現した~」は、プレゼンテーションと質疑応答を交互に行うスタイルに加え、フリートークを組み合わせることで、聴講者の興味を引く対話型セッションとして好評を博しました。一方で、メインホールの広さによる緊張感や、デリケートな話題への備えなど、改善が望まれる点もありました。今後はより小規模な会場で、発表者・座長・聴講者が互いに遠慮なく質問・意見交換できる環境を整えることが重要と考えられます。
このようなキャリアパスをテーマとしたセッションを継続的に行い、多様な働き方や研究スタイルが広く共有されることで、集中治療医学における新しいキャリアパスの可能性がさらに広がっていくことを期待したいです。

■座談会報告
第23回緩和ケア座談会
報告者:吉澤 和大 開催日:3月26日(水)
今回のテーマも先日発表されたESICMのICUでのエンドオブライフケア・緩和ケアガイドライン( https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-024-07579-1?s=06)で、ドメイン3の内容に進みました。
ドメイン3は「緩和ケア・終末期ケア」がテーマであり、まさしくこの座談会で取り上げるべき内容でした。
早期からの緩和ケアががん領域では生存の面でも有用と発表され10年となり、ICU領域でも求められるようになりつつも、緩和ケアを専門とする方々の介入は人数の問題もあり、まだまだ難しいところであり、ICUスタッフによるプライマリ緩和ケアと、この分野に興味のある人たちによる専門的に近い緩和ケアを早期に提供していくのが重要です。その上で、症状評価ツールを標準化することは症状評価の頻度を増やすという点で、我々でも始めやすく、各施設がどのように症状を評価してチームで共有しているかが話題となりました。後半は、withdrawの代表格、緩和的抜管の即時抜管や設定漸減抜管などプロトコルが紹介されたり、time limited trialの再評価の方法などに関して、ECMOセンター独自の悩みも交えながら発表していただくなど、まだまだ本邦で進んでいない領域の現在のエビデンスが学べた会でした。
発行者:U35プロジェクト運営委員会