ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-864-FP-355 面会制限廃止への挑戦―新たなシステム導入への抵抗を原動力に変えて―社会医療法人 同仁会 耳原総合病院 ICU HCU平井 美香【はじめに】先行研究や実態調査において、ICUでは面会制限が設けられている事が多い。しかし面会制限を設けていない施設も少数ではあるが存在する。重症患者を支援する上では、家族の存在は大きく、面会の機会は重要でありその拡大が望ましいとされている。当院でも面会制限が設けられていたが、2015年4 月より面会制限は廃止となった。【目的】新たなシステムの導入時に生じる不安や抵抗を乗り越え、ICUにおける面会制限廃止に至った組織改革の成功の鍵を明らかにする。【取り組み内容】2009年にICUの終末期患者の面会制限緩和を導入した。看護師の配置転換・専従医の変更により運用が曖昧になり、面会制限緩和を廃止したいという意見が一部から出るようになった。一方では、家族ケアを深めたいという意見もあった。そこで、看護師間での討議を実施し、医師との話し合い、病院長と看護部長との連携、アンケート調査を実施した。アンケート結果と参考文献を活用し、看護師間で再度討議を実施した。【結果】1回目の討議では、個々の看護師・医師の対応の違いによるジレンマや判断を求められることのプレッシャーを抱いている事と、感染防止や医療ケアの効率が弊害になり面会制限を設けざるを得ない状況に至っている事の現状の背景を共有することが出来た。アンケートでは、76%が面会制限は必要であるが内容としては65%で見直しが必要、個別の面会対応は87%で必要であると回答していた。2回目の討議までに、医師の意向を確認し、感染防止の視点は先行研究や感染管理認定看護師の助言を受けた。また、症例検討等からの家族の意向の抽出や現状の課題を数人の看護師で共有をした。それらを踏まえて2回目の討議では、看護としての面会について考えることが出来た。面会制限廃止によるメリット・デメリットを出し合い、デメリットを補うシステムも提案し、面会制限の廃止に至った。FP-356 ICU における患者家族のニーズに合った面会体制を目指して王子総合病院三上 洋史、藤澤 憂子【目的】近年、集中治療室(Intensive Care Unit 以下ICUとする)では、面会にきた家族が患者にとって最大の心理的支持者であることが理解され、面会の制限は緩和傾向にある。当院ICU では、そういった面会の重要性を考慮し、面会時間や回数、人数に制限はしておらず、病態や家族背景、ライフスタイルに合わせた自由度の高い面会体制としている。しかしながら、こうした体制が患者家族のニーズに沿っているかは定かでない。これまで面会制限に関する実態調査やスタッフの意識調査についての研究は数多く報告されているが、当院のような自由度の高い面会体制に対する患者家族の思いを示した文献は少ない。そこで今回、当院ICUの面会体制について患者家族の思いを明らかにし、スタッフの意識調査も含め今後の方向性や課題について検討したので報告する。【対象・方法】ICUに入室となった患者37名、面会にきた家族97名へ、独自に作成した調査票を手渡しで配布し直接回収、または家族控え室に回収箱を設置し自由投稿で回収した。看護師24名に対しても、独自に作成した調査表を直接配布し、回収箱を設置し回収した。各調査項目は単純集計し、それぞれ百分率で算出し比較した。【倫理的配慮】当院の倫理委員会で承諾を得た。【結果・考察】現在の自由度の高い面会体制により、患者家族の満足度は高いという結果が得られた。一方で面会の自由度が高くなるにつれて患者の安全確保や観察、管理が行き届かなくなる可能性も明らかとなった。今後はICU という特殊な環境を患者家族にも十分理解してもらい、患者のプライバシー保護のみならず、安全に対する配慮の工夫も検討していく必要がある。また家族が一回に必要とする面会時間に比べ、実際の面会時間は短い傾向にあった。家族自らが面会時間を制限している可能性も考えられるため、家族の心理状況を把握しながら、今後も面会しやすい環境を提供していくことが重要である。FP-357 ICU の終末期ケアにおける看護師の関わり~DNARの意思表示のある患者・家族のケアを経験して~1)水戸協同病院 集中治療室、2)筑波大学水戸地域医療教育センター水戸共同病院 救急集中治療科鈴木 真里1)、長津 貴子1)、長谷川 隆一2)【背景】昨年「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」が発表され、終末期患者・家族の『こころのケア』における看護援助の重要性が示されている。今回心肺蘇生処置を行わない(DNAR)という家族の意思表示があったものの、その後救命希望に変わりICU で治療を継続したが死亡に至った症例を経験し、終末期の看護師の関わりについて検討したので報告する。なお本研究は当院倫理委員会の承認を得た。【症例】A病院ICUの60代男性。既往に糖尿病。入院1ヶ月前より背部痛、2週間前から激しい右季肋部痛があり、2015年2月某日A 病院へ入院した。右横隔膜下膿瘍、骨盤内腫瘍と診断されたが、この時家族の希望は急変時DNARであった。しかしその後呼吸不全を来した際に家族から救命希望があり、ICU 入室し気管挿管・人工呼吸管理となった。また膿瘍に対するドレナージ術も施行された。家族からは面会時に患者の苦痛を懸念する、あるいは顔貌の変化に同情を示すなどの発言があり、治療方針に対する不安や迷いが示唆された。その後もICUにおいて治療を継続したが、感染管理不良で3月某日永眠された。【考察】初めDNARであったが、その後救命治療を行う方針に変更となった際に医師・看護師・家族が十分に話し合う時間が取れず、各々の認識にズレが生じた。急な状態変化時に話し合いを持つことは難しいが、看護師が媒となり医師と家族の考えをすり合わせる必要があった。またICUで徐々に終末期となった際にも、医師の考える緩和医療と看護師の考える緩和ケアに認識のズレがあって別々に関わることが多く、それが家族の不安につながった可能性がある。職種を越えて終末期の認識とケアの方針を確認する機会(カンファレンスなど)を積極的に持つべきと思われた。【結語】ICU の終末期では、看護師の関わりが十分でないと患者・家族と医療者で意志を共有することが困難となり、家族の不安が増強しやすい。