ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
852/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている852ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-850-FP-313 血液透析(HD)がペントバルビタール中毒に奏功した1 例1)兵庫県立尼崎総合医療センター、2)兵庫県災害医療センター、3)防衛医科大学校病院中屋 雄一郎1)、古賀 聡人2)、菊田 正太2)、井上 明彦2)、三木 竜介2)、石原 諭2)、勝木 亮介2)、松本 直人3)【症例】46歳男性。10年前より双極性障害のため通院加療を受けていた。来院3日前に抑うつ症状が悪化し、希死念慮を訴えていた。来院当日、左側臥位で倒れている患者を妻が発見し、当院へ救急搬送された。状況から24時間以内にラボナ錠(ペントバルビタール)50mg を56 錠内服したと推測された。来院時GCS:3 点、BP: 81/54mmHg、HR:48bpm、SpO2:97%(室内気)で、舌根沈下のため下顎挙上を要した。気管挿管後、胃内容に遺残錠剤を確認したため、胃洗浄と活性炭投与を行った。意識障害遷延が予想され輸液抵抗性の低血圧から血液浄化の適応と判断した。5 時間のHD を行ったが、意識状態が改善せず第2 病日も同条件で施行した。HD終了直後に従命が確認出来たため、抜管に至った。第3病日、抜管時には見られなかった左下腿痛の訴えと同部位の腫脹を認め、圧測定で前方区画68mmHg、外側区画59mmHg と上昇していたため、左下腿コンパートメント症候群の診断で筋膜切開術を行った。以降、創傷処理と植皮術を行ったが、尖足に対して装具を要した。第61 病日に精神科病院へ転院した。 後日、ペントバルビタールの血中濃度の測定結果が得られ、来院時36.6μg/ml、第2 病日12.2μg/ml、第3 病日1.53μg/ml であったと判明した。【考察】ペントバルビタール中毒では分子量や蛋白結合率の観点から血液吸着法(DHP)がよいとされる。しかし、DHPの目詰まりの頻度、コスト、スタッフの経験、血小板減少や低カルシウム血症の合併症からHDの方が好ましいという報告もある。本症例の血中濃度はDHPの治療報告例と同様の推移を示し、HDによる除去効率がDHPと同等であった可能性がある。また、意識障害の遷延を防ぐことでコンパートメント症候群の診断にも寄与したと考えられる。【結論】ペントバルビタール中毒に対して血液透析(HD)が有効である可能性がある。FP-314 緊急血液浄化療法が奏功した、不凍液誤飲患者の一例国立病院機構 北海道医療センター 救急救命センター富田 明子、塩谷 信喜、硲 光司、七戸 康夫【緒言】自動車用品などに広く用いられている不凍液は、エチレングリコール、メタノールなどの毒性物質を多く含み、誤飲した場合は時に致死的となる。今回我々は著明な乳酸アシドーシスを呈した不凍液の大量誤飲について報告する。【症例】73 歳女性。既往歴に認知症。16:00頃に自宅の納屋でピンク色の不凍液を詰め替えて保管していたウィスキーの瓶を持っていたところを家人に発見された。服薬量を家人が確認したところ、内容の減少分より約100ml を誤飲したものと考えられた。誤飲直後には症状がなかった為に病院を受診しなかったが、19:00頃より歩行がふらつくようになったため家人が救急要請し、当院救命救急センターへ搬送された。来院時、頻呼吸以外にバイタルサインの異常は認めなかったが、血液ガス分析にて著明な乳酸アシドーシス、および尿中にシュウ酸カルシウムを認めた。誤飲した物質は不凍液であることは明らかであったが、その成分が不明であったため、一般的な不凍液の主成分であるエチレングリコールおよびメタノール中毒に準じて治療を開始した。当院ではFomepizoleを採用していなかったため、エタノールの投与、ビタミンB1・B6の補充、血液浄化療法(HDおよびhigh flow CHF)を施行した。HD後には乳酸アシドーシスの改善を認め、第2 病日には血液浄化療法を終了、第3 病日に退院した。後遺症は認めなかった。【結語】認知症患者の不凍液誤飲による急性中毒を経験した。内容液は詰め替えられており、原因物質の同定ができないまま加療を開始したが、血液浄化療法とエタノール投与により後遺症なく改善し、短期間に退院することができた。FP-315 レミフェンタニルを長期使用した重症熱傷患者のオピオイド退薬症状緩和にトラマドールが有効であった一症例1)浜松医科大学附属病院集中治療部、2)浜松医科大学 麻酔・蘇生学講座植田 広1)、小林 賢輔1)、加藤 弘美1)、川島 信吾1)、大杉 浩一1)、八木原 正浩1)、御室 総一郎2)、小幡 由佳子1)、土井 松幸1)、中島 芳樹2) 36歳男性。焼身自殺を図り2度熱傷32%、3度熱傷54%を負い、救急搬送された。両下肢、右上肢に減張切開を施行し、以後、全身管理を行いつつ、デブリドマンと皮膚移植を複数回に分けて行った。 熱傷による疼痛と気管挿管刺激除去および安静保持のために、レミフェンタニルを主体にフェンタニルを併用した鎮痛と、デクスメデトミジンとプロポフォールによる鎮静を行った。レミフェンタニルは常用で最大500 μg/h、洗浄等の処置時は一時的に1000 μg/h 程度に増量した。広範囲熱傷のため、鎮痛・鎮静薬の使用は長期間に及び、急性耐性により必要量が漸増したオピオイドの使用量を抑えるべく、ケタミンの持続静注を併用した。頚部の植皮が定着したところで気管切開を行い、一般病棟への転棟を検討するに至った。 転棟へ向けて人工呼吸器の離脱を行うにあたり、長期間にわたって使用したオピオイドの退薬症状が問題となった。37日目、50μg/hまで投与量を減じてきたレミフェンタニルを終了したが、38日目の夕刻から多量の発汗を伴う不穏状態と胃液過多を認めた。レミフェンタニルの投与を再開したところ症状が落ち着いたため、オピオイド退薬症状を疑った。 退薬症状に対応するために、弱いμ作用を有するトラマドールへの置換を行った。血中濃度の安定までは静脈投与を用い、徐々に経口投与へ移行した。その結果、退薬症状を抑えつつ、オピオイドを漸減、終了することができた。 レミフェンタニルは効果発現・消失が早く使い勝手の良い薬剤であるが、長期にわたって使用した場合は退薬症状を念頭に置き、他の薬剤で置換するなどの対策が必要となる場合がある。本症例では、病棟転棟後も内服使用できるトラマドールを選択し、退薬症状を緩和できた。