ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-847-FP-304 敗血症性ショック,DIC に対してリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)とPMX-DHPを併用した4 症例兵庫医科大学 集中治療医学科大橋 直紹、竹田 健太、井手 岳、堀 直人、小濱 華子、西 信一【はじめに】敗血症性ショック・DICは予後不良な疾患であり,抗凝固・抗炎症の両面から様々な治療法が報告されている。【症例】2010年8月から2013年3月の間に当院ICU入室症例のうち,敗血症性ショック・DICに対してrTMとPMX-DHPを併用した4例について報告する。症例は男性3 例,女性1 例,年齢77~88 歳,原疾患は4 例とも腹腔内感染症であり感染源コントロールとして外科的治療介入されている。アンチトロンビンは4例中3例,メシル酸ナファモスタットは4例中3例に投与されていた。rTMの投与開始日をday0、投与6 日後をday6 とした。APACHE2 スコア、SOFA スコア、急性期DIC スコアとその項目(SIRS スコア、血小板数、PT 比、D-dimer)、AT 活性値、出血性合併症、28 日死亡率を検討した。day0 のAPACHE2 スコア18(10~23),SOFAスコア10.5(9~16)であった。day0と比較してday6において,4例ともショック離脱,SOFAスコアは4例とも改善傾向 -3.5(-2~-7),SIRSスコアは4例とも改善傾向-1.5(-3~0),急性期DICスコアは4例中3例において改善傾向 -3(-4~3)を認めた。また血小板数1.6(- 2.6~7)× 104/ μ l,PT 比- 0.49(- 0.58~- 0.36),D ダイマー- 0.05(- 13.5~8.2)μ g/ml,AT 活性値1(- 62~24)% であった。中央値(範囲)。4例とも明らかな出血性副作用は認めず,28日後に生存であった。【考察】rTMとPMX-DHPの併用療法は腹腔内感染症による敗血症性ショック・DICに対して安全に使用でき,有効である可能性が示唆された。FP-305 自殺企図にて超速効型および持効溶解型インスリンアナログを大量皮下注射した2 型糖尿病の一例香川労災病院 麻酔科坂本 里沙、岡部 大輔、林 久美子、住吉 公洋、友塚 直人、鈴木 勉、戸田 成志、小野 潤二、北浦 道夫【症例】症例は38歳女性。既往歴に2 型糖尿病、高脂血症、うつ病、肥満があり、インスリン強化療法(グルリジン+グラルギン)および血糖降下薬を内服中であった。自殺目的でグルリジン1200単位、グラルギン1200単位を皮下注射し、その15分後に近医を自ら受診した。受診時の血糖値は58mg/dL であり、ただちに50% ブドウ糖液40mL およびグルカゴン1mg を静注し当院に救急搬送された。 インスリン注射1時間後の、当院での血糖値は204mg/dLまで上昇しており、意識障害や痙攣などの症状は認めなかった。ICU入室後ただちに中心静脈路を確保し、高カロリー輸液(ブドウ糖換算で11.2g/hr)を開始した。また20分毎に血糖値を測定し150mg/dL 以上を保つよう管理した。血糖低下時は50% ブドウ糖液40mL を投与する方針とした。入室当初は血糖値の変動が激しく、頻回に50% ブドウ糖液を投与せざるを得ない状況であった。7 時間後から高カロリー輸液をブドウ糖換算で18g/hr に増量し、血糖低下時は50%ブドウ糖液20mLを投与し、かつグルカゴン1mg を筋注して管理する方針に変更した。その後、血糖値は徐々に安定し、50% ブドウ糖液の投与頻度も減少した。第2 病日には血糖値の変動が緩やかとなり、経口摂取を再開し、50%ブドウ糖液やグルカゴンの追加投与は不要になった。高カロリー輸液を徐々に減量し第4 病日に中止、第8病日に後遺症なくICU退室となった。【考察】本症例で注射されたグルリジンは3時間、グラルギンは24時間ほど作用が持続するが、大量投与時は血糖降下作用が遷延すると報告されている。その機序としてインスリン効果の蓄積、皮下から血管内へのインスリン移行の遷延、インスリン受容体の占拠による半減期の延長があると言われている。本症例でも本来のインスリン作用時間以上に低血糖が遷延したが、頻回の血糖測定にて血糖降下作用が減弱するまで糖負荷を行うことで重篤な低血糖を防ぐことができたと考えられる。FP-306 多発性の虚血性病変を合併したアルコール性ケトアシドーシスの1 例福岡県済生会福岡総合病院 救命救急センター 救急科中村 周道、前谷 和秀、金城 昌志、牧園 剛大、柚木 良介、柳瀬 豪、則尾 弘文【はじめに】アルコール性ケトアシドーシス(AKA)はアルコール常用者で栄養不良から脱水を契機として発症し、基礎疾患の存在や治療の遅れ等が原因で時に重症化する。今回AKA に脊髄梗塞、脾梗塞、虚血性腸炎を合併し、治療に難渋した症例を経験したので報告する。【症例】52歳、女性。常習飲酒家(ワイン1-2本/日)。腹痛のために前医へ搬送となったが、ショックに陥り当院に転院となった。救急外来で、気管挿管の上、人工呼吸器管理とした。血液ガス検査ではアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスを認めた。CT検査では膵臓周囲の脂肪織混濁と、脾臓の造影欠損を認めた。AKAに急性膵炎と脾梗塞の合併と考え、ビタミンB1投与、および大量輸液による脱水の補正と昇圧剤の持続投与を開始した。第2 病日に下血を認めたため、再度CT 検査を施行したところ、横行結腸を主体に腸管の浮腫性壁肥厚と造影不良を認め、虚血性腸炎と診断した。外科的処置も考慮したが、昇圧剤を使用しているもののショックから離脱しつつあったこと、代謝性アシドーシスも改善傾向であったことから、保存的治療を継続した。なお、来院時の血液でβ-ヒドロキシ酪酸優位の高ケトン体血症を確認した。第4病日には昇圧剤の持続投与も不要となり、その後、呼吸状態も徐々に改善した。第20病日、人工呼吸器から離脱のため覚醒させたところ、第10胸椎レベル以下の温痛覚の低下と弛緩性麻痺が判明した。脊髄MRI検査で第1-9胸椎レベルの前脊髄動脈領域を中心に髄内T2高信号を認め、前脊髄動脈症候群の診断に至った。消化管機能障害や腎機能障害等も合併したが、意識清明で、自力で食事摂取可能な状態まで改善し、入院4ヶ月後に他院へ転院となった。【まとめ】重症化したAKAの報告は散見されるが、脊髄や脾臓の梗塞を合併した症例の本邦報告例はない。脱水によるショックの遷延および凝固機能障害が虚血性障害に至った原因と考えられた。