ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-843-FP-292 肺炎桿菌による急性感染性電撃性紫斑病の一例日本大学 救急医学系 救急集中治療医学分野賀川 哲夫、伊原 慎吾、堀 智志、桑名 司、小豆畑 丈夫、木下 浩作症例)70歳女性 現病歴)入院当日起床後に意識障害認め、救急要請し、当院に搬送。既往歴)間質性肺炎、多発性筋炎、高血圧、甲状腺機能低下症臨床経過)来院時ショックを認め、気管挿管後、人工呼吸を開始した。入院当日の尿培養と血液培養から肺炎桿菌が検出され、尿路感染症による敗血症性ショックと診断し、大量輸液、抗菌薬の投与、ノルアドレナリン、バソプレシン、ヒドロコルチゾン、γグロブリン製剤を点滴投与した。また、敗血症性ショックに対してPMX施行し、その後AKIに対してCHDFを施行。第2病日にDIC が進行し、トロンボモジュリン製剤、アンチトロンビン製剤の投与を行った。循環は改善傾向だったが、右上肢と右手、両下肢に紫斑出現し、肺炎桿菌性敗血症性ショックによる急性感染性電撃性紫斑病と診断した。第3病日には循環が安定し昇圧剤を中止。第7 病日にはヒドロコルチゾンの点滴を中止し、第8 病日に抜管した。四肢の紫斑は次第に黒色へと変色し、四肢末梢は壊死した。全身状態改善後のプロテインS、プロテインC の活性は正常範囲内であり、先天的な凝固制御因子の欠損は否定された。その後形成外科にコンサルトし、プロスタグランジンE1 製剤の投与を継続した。第84 病日に形成外科による四肢切断術(右手はPIP 関節、左手は手関節、右足は中足骨、左足はMP 関節でそれぞれ切断)を施行した。考察)急性感染性電撃性紫斑病は敗血症性ショックあるいは敗血症性DIC を基礎とし、急速進行性に四肢末端優位に虚血性壊死を呈する疾患である。本症例の原因菌は肺炎桿菌で、過去に4例のみが報告されている。今回、我々は本邦や世界的にも稀な肺炎桿菌による急性感染性電撃性紫斑病を経験したため、若干の文献的考察を踏まえて報告する。FP-293 敗血症管理の教訓:難治性神経疾患の感染症管理の一症例名古屋大学大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学分野福田 幸寛、眞喜志 剛、海野 仁、日下 琢雅、東 倫子、田村 有人、江嶋 正志、沼口 敦、角 三和子、松田 直之【はじめに】難治性神経疾患である視神経脊髄炎スペクトラム疾患に合併した感染症管理とICU管理について紹介する。【症例】66歳男性,169 cm,87 kg。繰り返す意識消失で前医に救急搬送され,急性自律神経障害と診断された。進行する四肢麻痺と呼吸筋麻痺に対して,ギラン・バレー症候群疑いで,当院に転院された。転院時には,強い換気機能低下と自律神経異常と敗血症性ショックを認め,気管挿管,人工呼吸器管理としてICU入室とした。第7病日に気管切開を行い,全身状態の安定をはかり,第13病日にICUを退出とした。しかし,その後,内科系病棟で誤嚥性肺炎を繰り返し,第34病日に緑膿菌による菌血症を発症し,第45病日には病棟で敗血症性ショックとなり,ICUに再入室とした。再入室日のAPACHE2スコア34,意識混濁,血圧65/37 mmHg,心拍数82/ 分,呼吸数 35/ 分,体温(膀胱)37.6℃ ,乳酸値1.0mM だった。再入室時の中心静脈カテーテルおよび血液より3 時間でCandida albicans が検出され,他の菌種を認めず,カンジダによる敗血症性ショックと診断した。MCFG で治療を開始し,血液中のカンジダを消失させ,βD グルカン値の低下を確認できたが,第48病日眼内炎を併発したために静注用VRCZに変更し,第55病日にはVRCZを内服に変更した。この間,急性腎傷害を併発したために持続血液濾過(CHF)を併用したが,カンジダ血症の消退とともに,CHFを離脱できた。本症例では,リンパ球数の減少,好中球のアポトーシスと細胞死を認め,自発的な交感神経緊張持続に伴うと評価した。本症例は,敗血症性ショックとして,90病日を超えて生存している。【結語】ギラン・バレー症候群や視神経脊髄炎スペクトラム疾患などにおける自律神経障害では,免疫低下が生じることが知られている。免疫低下状態では,一般診療科主治医や家族の判断により,繰り返させる敗血症性ショックより90 日生存が達成できない可能性があると評価した。FP-294 パーキンソン病を基盤とした敗血症性ショックの1 症例名古屋大学大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学分野中原 光三郎、塩屋 悠人、錦見 満暁、東 倫子、山本 尚範、田村 有人、江嶋 正志、沼口 敦、角 三和子、松田 直之【はじめに】パーキンソン病の治療過程で脳深部刺激装置の調節中に,腸閉塞を発症し,重症誤嚥性肺,敗血症性ショック,ARDS,急性腎傷害により,集中治療管理を必要とした症例を報告する。【症例】症例は,69歳女性,153cm, 32kg,ICU入室日のAPACHE2スコアは34だった。パーキンソン病の治療目的で挿入された脳深部刺激装置と内服薬の調整過程で,麻痺性腸閉塞となり,さらに糞便性腸閉塞を合併した。その後,嘔吐と誤嚥の3 日後から38 度の発熱と呼吸不全を認め,救急・集中治療部への入室とした。PaO2/FIO2113.1 mmHg レベルのARDS に対して人工呼吸管理とし,平均血圧60 mmHg 以下と乳酸アシドーシスを伴う敗血症性ショックに対してnoradrenaline を開始した。無尿の状態に対して,敗血症ショックに伴う急性腎傷害として持続濾過(QF 130-150mL/時,QB1.2-1.8L/時,PMMA膜)を併用した。疑われる肺炎に対しては,当診療科のストラテジーとしてDoripenem3g/ 日とトラフ濃度20 μ g/dL のTeicoplanin を抗菌薬の初期治療とした。血液および喀痰の培養検査では,Klebsiellapneumoniae が検出され,Ampicillin/Sulbactam にde-escalation した。初日には敗血症性ショックを離脱し,利尿も得られ,持続血液濾過は3 日目で終了できたが,ARDS はPaO2/FiO2 111mmHg レベルで推移し,ARDS からの離脱に難渋した。入室第23病日に一般病床への転棟とした。【結語】本症例は,経腸栄養を施行しないで管理されていた症例であり,ARDS と経口栄養の回復に23 病日の時間を必要とした1 症例である。