ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-842-FP-289 Viridans Streptococcusによる電撃性紫斑病の1 例宝塚市立病院中川 弘大、桑原 正篤、小林 敦子【症例】特に基礎疾患や既往歴はない77 歳男性。発熱・意識障害を主訴に当院へ救急搬送され、ICU で呼吸管理などの全身管理を開始した。明らかな感染源は不明であったが、血液培養からグラム陽性球菌(のちにViridans Streptococcusと判明)が検出された。著明な肝機能障害・腎機能障害・DIC を認めた。スルバクタム/ アンピシリンの経験的治療を開始した。第2 病日に両下肢の紫斑を呈し、皮膚科に電撃性紫斑と診断された。起炎菌のViridans Streptococcusに対してアミノペニシリン(ABPC)とクリンダマイシン(CLDM)などの抗菌薬投与を実施し、腎不全に対して血液透析など実施していたが、壊死した下肢に二次感染を起こし感染コントロールが困難となったため、下肢切断を施行し一命を取り留めた。【考察】電撃性紫斑病は、四肢末端優位の虚血性壊死で、二肢以上が同時に侵され、近位の動脈閉塞を伴わないものと定義される。原因菌としてStreptococcus pneumoniae、Neisseriameningitis、A 群溶連菌、Vibrio vulnificus などの報告は多いが、Viridans Streptococcus による電撃紫斑は極めてまれである。リスク因子としては脾摘患者や透析患者などが上げられるが、本症例は発症まで特に免疫系の異常はなく、感染の既往歴や免疫抑制剤の投与も無かった。HIV感染も否定された。明かな免疫不全のない健常者に弱毒のViridans Streptococcusによる電撃紫斑を発症し、下肢切断によって救命しえたので、若干の考察を加え報告する。FP-290 Toxic shock syndromeを合併した重症A群溶連菌肺炎に対し集学的治療を行い救命し得た一例東京医科大学病院 感染症科 感染制御部下稲葉 みどり、中村 造【症例】61歳 フランス人女性【既往歴】高血圧症【現病歴】受診10日前観光目的にフランスより来日した。渡航時より咽頭痛と微熱を自覚し市販薬で対症しながら観光を続けたが高熱を認め息苦しさが出現したため当院救急外来を独歩受診した。胸部レントゲンで右大葉性肺炎の診断となり同日集中治療室へ入院となった。【入院時現症・検査】意識清明だが衰弱強く, 体幹を中心にびまん性紅斑性発疹を認めた。BT 40.0℃, SpO2 77%(室内気), BP 82/50mmHg, PR 112/min, 急性期DIC スコア 3 点 APACHE II20点 APACHE III 58点, WBC 14000/μ(l Neu. 84.5%), Hb 12.1g/dl, Plt 13.6万/μl, CRP 69.0mg/dl、BUN 76.4mg/dl, Cr 3.62mg/dl, プロカルシトニン 80.58ng/ml, IgG/A/M 467/259/81mg/dl, 尿中レジオネラ, 尿中肺炎球菌抗原陰性, 咽頭溶連菌迅速試験陽性であった。【入院後経過】大量急速補液, ノルアドレナリン 0.15 γ(day2 でshock 離脱, day4 で終了), 抗菌薬MEPM(3g)+LVFX(500mg), Toxic shock syndrome 合併と考え免疫グロブリン製剤5g × 3days の投与を開始した。血液培養, 痰培養からA群溶連菌(Group A streptococcus:GAS)が検出され抗菌薬をday3 にPCG(2400 万単位)+ CLDM(1800mg)へ狭域化した。day1-3にNPPV, day4-9は気管挿管の上呼吸器管理を行った。day14まで抗菌薬の静脈内投与を行いその後14 日間はAMPC(2000mg)の内服加療を行った。全身状態は改善しday 27 独歩退院し同日フランスへ帰国した。【考察】GASによる重症肺炎にToxic shock syndromeを合併した一例である。GAS による菌血症、ならびに肺炎の発症は極めて珍しく死亡率も高いとされる。またToxic shock syndrome の合併は多く、本症例は全身性紅斑やIgGの著減から免疫グロブリン製剤とCLDMを併用するよい適応であったと考える。大葉性肺炎を呈する起因菌としてのGAS を鑑別に挙げ適切な抗菌薬選択と合併症の対処をすることで救命し得た一例であり報告する。FP-291 降下性壊死性縦隔炎により敗血症性ショックをきたした一例横浜労災病院 集中治療部小野 富士恵、柏 健一郎、木村 康宏、七尾 大観、赤川 玄樹、藤本 潤一、西澤 英雄症例は63 歳,男性。発熱,咽頭痛に対し近医で経口抗菌薬の処方を受けるも,症状の改善なく3日後当院を受診した。来院時はショックバイタルで,右頸部の著明な腫脹と発赤,熱感を認めた。CT検査を施行したところ,頸部に膿瘍形成は認めなかったが,頸部深部間隙の強い炎症と浮腫を認め,深頸部感染症と考えられた。気道閉塞をきたす可能性があるため同日ICU入室となった。気管支鏡検査にて,喉頭蓋から声門にかけて周囲組織からの圧迫による著明な気道の狭小化を認めたため,気道確保目的に気管挿管を施行した。画像検査上,喉頭から咽頭後間隙,さらに縦隔への炎症の波及を認めており,深頸部感染症から降下性壊死性縦隔炎をきたしたと考えられた。抗菌薬治療(SBT/ABPC + CLDM)を開始したが,カテコラミンへの反応も乏しくショックが遷延,AKI も併発したため第3 病日よりCRRT を開始した。第5 病日より循環動態の改善がみられたが,発熱と炎症反応高値が持続し,CTにて降下性縦隔炎の残存が疑われため,第14病日に胸腔鏡下縦隔ドレナージ,第16病日に頸部洗浄ドレナージを行った。しかしその後も炎症反応と画像所見の改善が認められなかったため,第39 病日に胸骨正中切開で縦隔ドレナージを行ったところ,その後は良好な臨床経過を得ることができた。降下性壊死性縦隔炎の治療は,感染源のコントロールとして積極的な縦隔ドレナージが必要となる事を想定した集学的管理が必要であると考えられた。