ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-824-FP-235 甲状腺クリーゼによる心停止後に遅発性意識障害を起こした1 例福山市民病院 救命救急センター山下 貴弘、宮庄 浩司、柏谷 信博、米花 伸彦、大熊 隆明、石橋 直樹【症例】36歳女性。【現病歴】自宅内で昼食後に意識消失。近医に搬送され心室細動に対して除細動施行され自己心拍再開。加療のため当院に紹介となった。【経過】来院時意識GCS E4V2M4。心拍数150 と頻脈であり眼球突出を認めた。血液検査にてTSH < 0.01 μ IU/ml FT3 > 30pg/ml FT4 4.4ng/mlと甲状腺機能亢進症を認め甲状腺クリーゼによる心停止と診断した。鎮静・人工呼吸管理を行い甲状腺クリーゼの治療を開始した。第6 病日に抜管したが抜管後の意識は清明であり神経学的症状を認めなかった。第7 病日より38℃台の発熱を認め第9病日にインフルエンザA陽性となり意識障害を認めたため再度気管挿管を行いインフルエンザ治療を開始した。甲状腺機能の悪化は認めなかった。第14 病日抜管するもGCS E4V1M5-6の状態が継続し頭部MRIにて両側基底核に虚血性変化を認めた。【考察】心停止後に神経学的症状の改善を得たものの全身状態悪化に伴い再度意識障害を起こし高次脳機能障害が残存した症例を経験した。意識障害の鑑別として遅発性低酸素脳症・インフルエンザ脳症・代謝性脳症などが考えられる。確定診断には至らなかったものの高体温による低酸素脳症の増悪が強く疑われた。FP-236 当院ICU入院となった若年者脳出血患者の対応を考える.沖縄協同病院 集中治療室佐久田 豊、山内 昌喜、伊良波 禎、城間 政尚、沖山 光則、佐久川 慶【背景】脳出血は70 歳代以上の症例が多く,高齢者への注意喚起は良くおこなわれている.しかしながら突然脳出血を発症する若年患者が存在する.死亡に至る場合があり, 本人はもとより家庭や社会へ及ぼす影響は大きい.【目的】若年脳出血患者ICU緊急入院となった症例の背景を評価し, 治療方法予防対策を検討した.【方法】2011 年7 月1 日から2015 年7 月31 日までの期間に当院ICUへ緊急入院となった45歳以下の非外傷性脳出血患者をカルテ検索にて調べた.【結果】該当症例数は51症例.平均年齢は38. 1歳.男性33人(64.7%).最年少は17歳.高血圧症患者が多かった.脳動静脈奇形は5人(9.8%),挿管対応を行った症例が10人(19.6%),手術を行った症例が27 人(52.9%), modified Rankin Scale 2 より良好な状態で退院した症例数は31 人(60.8%),5 人(9.8%)が死亡退院であった.全例急性期にニカルジピン注射の治療で降圧療法を開始していた.【考察】若年成人脳出血症例の約10人に1人が死亡しており, この事実を広く知らしめ高血圧対策を強化する必要がある.FP-237 発作性交感神経機能亢進(PSH; paroxysmal sympathetic hyperactivity):その臨床像と管理総合病院 聖隷浜松病院 救急科永井 友梨、土手 尚、植田 秀樹、峯田 健司、諏訪 大八郎、渥美 生弘、田中 茂【症例】17歳、男性。特記すべき既往歴や内服歴はなかった。バイクで走行中に対向車と正面衝突し受傷した。当院搬送時、気道は開通、呼吸と循環も保たれていたがGCS E2V2M4の意識障害を呈していた。脳挫傷、顔面多発骨折、骨盤骨折、右上腕骨骨折、両大腿骨骨折、両下腿骨骨折の診断で入院となった(ISS 27、Ps 66.8)。意識障害のため気管挿管、人工呼吸管理とし、骨折に対し手術を行い加療継続した。頭部CTでは右前頭葉脳挫傷及び中脳腹側に少量の血腫を認めたが保存的治療とした。第7病日に38~40℃台の発熱、40~60 回/min の頻呼吸、160~180 回/min の頻脈、収縮期血圧200mmHg 前後の血圧上昇、シバリングを呈する発作が出現した。発作は数分~数十分程度持続したのちに自然に改善するものであり、1 日に複数回認めた。他の内因性疾患を疑う所見は乏しく、頭部外傷によるPSHが鑑別に挙がったが、当初はレベチラセタム、ミダゾラム、フェンタニルで対応した。その後もしばしば短時間の高体温、頻脈発作がみられていた。第16病日に気管切開実施し人工呼吸器を離脱、その後前述の薬剤は順次終了とした。第42 病日に高乳酸血症や腎機能低下を伴って発作が生じたためPSH への積極的な介入としてガバペンチンの内服を開始し、漸増した。ガバペンチン2400mg/day まで増量したところ症状を認めなくなった。同量の内服を継続した状態で第80病日に転院となった。【考察】PSHは発作的に交感神経が過活動となる病態の総称であり、頭部外傷後の報告例が散見される。本症例の激烈な発作はPSH を強く疑う典型的なもので、ガバペンチンの有効性を示唆する経過を辿った。しかし外傷の急性期では感染や薬剤の影響、てんかん発作など類似の症候を呈する鑑別疾患が多数あることやPSH 自体の認知度の低さから診断及び治療介入が困難なことも多いと推測される。本報告を含め今後の症例の集積が診断、治療方法確立の一助となることを期待する。