ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-792-FP-139 慢性解離性大動脈瘤の術後トラネキサム酸投与の有用性名古屋大学大学院医学系研究科 心臓外科学日尾野 誠、碓氷 章彦、伊藤 英樹、寺澤 幸枝、藤本 和郎、六鹿 雅登、成田 祐司、阿部 知伸、大島 英揮【目的】慢性解離性大動脈瘤(CDAA)のエントリー閉鎖を行う手術では、術後に急速に残存偽腔内血栓化が進行し、凝固因子の消耗と線溶亢進が惹起され、DICが生じうるが、偽腔内血栓の安定、凝固因子消費抑制のため、我々はトラネキサム酸(TA)による抗線溶療法を本術後にDIC の早期治療として行っている。使用成績をここに報告する。【方法】2014 年7 月から2015 年7 月までに、Stanford A 急性大動脈解離術後CDAA に対しオープンステントグラフトを用いた弓部大動脈置換手術を行い、下行大動脈上部までのエントリー閉鎖を行った全9例のうち、機械弁置換後のためWarfarin服用の1 例を除く8例を対象とした。平均年齢67.4±6.3、男性3 人、糖尿病1例、透析1 例であった。術前値は血小板数(Plt)平均142000±38000で低下6例、FDP上昇4例、フィブリノゲン低下1例、DICスコア2を4例認めた。1例はCDAAによる慢性DICと診断され術前よりTAを内服していた。【結果】術後在院42.5 ±22.3 日、ICU滞在10.0±10.9 日で全例生存退院した。術後、下行大動脈上部までの血栓化を得たが、以遠の残存偽腔は開存であった。止血目的も兼ね術当日、翌日に6例でTA を短期静脈内投与した。DIC 傾向があると判断した7例に術後3.0±1.9日からTA250mg/日を長期内服投与した。術後最小Pltは術後2.8±0.9日に49400±20100、最大血漿FDP値は術後3.6± 1.6 日に163.1 ± 123.6 μ g/ml であり、最大DIC スコアは術後3.3 ± 1.7 日に5.9 ± 2.4 であった。出血傾向は術前慢性DIC の1 例が大量胸壁出血を術後4日目に合併し、他1 例に皮下出血を認めた。Pltは術後10.6 ±5.2 日に正常に復した。合併症は感覚障害の残存した不全対麻痺1例(Entry閉鎖による横隔膜レベルまで偽腔血栓化のためと考える)、創感染2例、間質性肺炎1例で、DICの血栓形成による合併症は認めなかった。【結語】CDAA術後で急速に偽腔内血栓化が進行する症例では、注意深いTA 投与は血小板、凝固能の安定化に寄与する。FP-140 リコンビナントトロンボモジュリンを使用したDIC症例における予後予測因子の検討山形大学 医学部 附属病院 麻酔科渡邉 翠、豊島 歩美、狩野 峻子、小野寺 悠、秋元 亮、小林 忠宏、鈴木 博人、岩渕 雅洋、中根 正樹、川前 金幸【はじめに】当院ではDICの治療としてリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)を用いており、使用開始のタイミングは主治医の判断に任されている。【目的】rTMを使用したDIC 症例における予後予測因子を調べること。【方法】対象は2012 年10月から2014年4月に集中治療室(ICU)に入室しDICに対してrTMを3日間以上使用した77症例を後方視的に検討した。【結果】男性44人、女性33 人、平均年齢は67.0 歳、ICU入室時のSAPS2スコアは46.4点、予測死亡率は39.8%、rTM 投与開始時の急性期DIC スコアは4.9 点。rTM 投与後day0、2、6 のSOFA スコアは8.7 点、7.8 点、5.6 点。生存群と死亡群間でSAPS2 スコアや予測死亡率、急性期DICスコアに有意差はなかったが、rTM 投与開始時のSOFA スコアは生存群の方が低く、血小板数は生存群で多かった。また、生存群でSOFAスコアの推移を比較すると、day2と6の間で有意に低下し、血小板数はday0と比較してday5以降に有意な上昇がみられた。死亡群ではday0、2、6のSOFAスコアや、day0~9の血小板数に有意な増減を認めなかった。【考察】rTM投与開始時の血小板数、SOFAスコアがその後の転帰に影響を与えている可能性がある。また、血小板数に影響されないSAPS2スコアはあくまで全身状態の指標であり、DICが危惧される状況では血小板数やSOFAスコアを経時的に評価し、適切なタイミングで介入を行うことで死亡率を低下させることができるかもしれない。【結語】ICU 入室時のSAPS2 スコアはDIC 症例の予後予測因子とはならず、rTM投与開始時のSOFA スコアと血小板数が予後予測因子となった。また生存群では、SOFA スコアはday2 と6の間で、血小板数はday5 で、改善を認めた。FP-141 Septic shockを契機に発見された急性骨髄性白血病の一例1)唐津赤十字病院 救急科、2)佐賀大学医学部附属病院 救急科藤田 亮1)、阪本 雄一郎2)、後藤 明子2)、今長谷 尚史2)、八幡 真由子2)、小網 博之2)、三池 徹2)、永嶋 太2)、岩村 高志2)、井上 聡2)【はじめに】重症敗血症患者では、臓器障害の1つとしての骨髄抑制が生じ、骨髄での血球産生能が低下している。そのため、敗血症に伴うDICと骨髄における造血異常症の鑑別にはしばしば苦慮することがある。【症例】73歳女性【既往歴】高血圧、高脂血症、高尿酸血症【現病歴】2日前から両下肢痛あり、徐々に悪化していた。体動困難、突然の構音障害を認めたため救急搬送となった。【経過】搬送時意識清明、BP103/63mmHg HR103/min SpO2 99%(O2 5L)RR 16 回 BT 35.3℃ 神経学的異常所見なし。左CVA叩打痛、肉眼的膿尿あり。採血にて汎血球減少、AKI、肝機能異常、CRP高値、凝固異常を認めた。画像所見から急性腎盂腎炎による重症敗血症、DICとしてICU管理としたが、突然意識障害、ショック状態となったため人工呼吸器、CHDFによる管理を要した。項部硬直あり、血液培養にてMRSA、肺炎球菌を検出、細菌性髄膜炎疑いとして治療を行ったが、白血球数、血小板数の増加なく、末梢血に芽球(50%)認めた。骨髄穿刺にてdry tap、PML-RARAキメラmRNA検出しなかったため、APL以外のAMLに合併した敗血症と診断した。AMLに対する根本的治療は困難と判断し、現行治療を継続の結果、第8病日死亡に至った。【考察】敗血症によるDIC と造血異常の鑑別には病歴、身体所見に加え、血算において複数系統に異常がある場合は、可及的速やかに骨髄における造血異常を念頭に末梢血塗抹標本を確認し、骨髄穿刺などを行い、白血病、TTPなどの緊急疾患の評価が必要である。