ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
792/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている792ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-790-FP-133 上腕動脈からの出血によるコンパートメント症候群を契機に診断された後天性血友病の一例1)東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター、2)昭和大学医学部救急医学講座鈴木 茂利雄1)、清水 敬樹1)、萩原 祥弘1)、濱口 純1)、小野 将平1)、荒川 裕貴1)、光銭 大裕1)、金子 仁1)、森川 健太郎1)、三宅 康史2)【症例】80歳代, 女性【既往歴】高血圧,2 型糖尿病【臨床経過】入院前日から肉眼的血尿,下腹部の膨満を自覚し前医を受診.CTで右腎盂の拡張を認め発熱・炎症反応の上昇もあり当院泌尿器科を紹介受診,複雑性UTIおよび腎後性腎不全の診断で入院.同日採取した血液培養で大腸菌菌血症の診断となり抗菌薬治療および血尿に対して膀胱灌流を連日施行,血小板値や凝固能は経時的に増悪したが敗血症性DIC として原疾患の治療を行った. 第4病日のCTで腎盂の拡張は軽度残存していたが結石などの閉塞起点を認めなかった.第8病日に膀胱鏡を施行,一部に凝血塊を認めたのみで器質的狭窄を認めず尿細胞診も陰性.同日午後右上腕の腫脹・疼痛が出現.CTで上腕内部の出血・血腫の形成がありコンパートメント症候群と診断,緊急で右上腕筋膜切開を施行し集中治療室管理となった.原因としてUTIの治癒過程で血小板数や凝固能は改善したがAPTT は基準対象の3 倍程度で推移していたことから精査を行った. その結果第VIII 因子活性の低下と第VIII因子インヒビターが検出され後天性血友病と診断した.1mg/kg/日の投与と止血処置を行い,バイパス療法として活性型プロトロンビン複合体の投与によりAPTT は基準対象の1.8 倍までは短縮し, その後活性型第VII因子製剤に切り替えて治療を継続した.APTT は正常化し出血合併症なく経過, 第45 病日に退院.【考察】後天性血友病は本邦でも報告数が増加しており,死亡率が高く迅速な診断と適切な止血および免疫学的治療が必要な疾患である.本症例は尿路感染症・菌血症に伴いDICとなったため血小板数・凝固能の異常をきたしたがAPTTの過延長のみが臨床経過と合致せず最終的に診断に至った.高齢者での病的出血やAPTTの過延長の際には本疾患も考慮し精査を行うことが必要と考えられた.FP-134 食道癌を基礎疾患にもつ、後天性血友病Aを発症した1 例1)群馬大学医学部附属病院麻酔科蘇生科、2)群馬大学医学部附属病院集中治療部石川 愛1)、柳澤 晃広2)、日尾 早香1)、松岡 宏晃2)、坂上 浩一2)、金本 匡史2)、戸部 賢2)、高澤 知規1)、国元 文生2)、齋藤 繁2)症例は73歳男性。主訴は右大腿の疼痛と腫脹。既往は左腎癌に対し半年前に根治的手術施行と術後イレウスで解除術施行。入院経過中に上部消化管内視鏡を施行され、下部食道癌が見つかった。低栄養状態であり、放射線単独療法の方針となっていたが体力低下のため、未治療であった。約2か月後、右大腿の腫脹・疼痛、体動困難を訴え前医受診。Hb5.4(10日前は10.4)の貧血もあり、精査加療目的に当院受診した。禁食・補液・PPI注射にて加療を開始し、2 日間連続2 単位赤血球輸血したが、Hb5.7と貧血が持続した。MRI で右外側広筋内血腫と診断され、食道癌の担癌患者であること、凝固検査でPT 正常(PT 活性72%)、APTT延長(124.7 秒)、Fib 正常(431mg/dl)、Plt 正常(21.7 万/ μ L)であったことから、悪性腫瘍に伴う後天性血友病を疑った。追加検査で、第8 因子0.9、第9 因子58.0、第11 因子34.3、第12 因子31.6、凝固抑制(8 因子)因子21.8 であった。赤血球輸血を継続し、ステロイド50mgと止血剤の点滴静注と絶食にて経過観察した。その翌日、意識消失、黄色の嘔吐とともに心肺停止となった。ただちに蘇生術開始し、10 分後にはリカバーした。集中治療室に入室し、10単位の赤血球輸血、ノボセブンの投与を開始した。アシドーシス、高カリウム血症のため、透析を施行した。状態は徐々に安定し、5日間で退室できた。退室後はノボセブンを減量し、一時的には左前腕や右大腰筋、左側胸部に血腫が出現したために、ノボセブンの追加投与など行ったが、徐々に緩解させることが出来た。後天性血友病Aは100万人に1例前後の稀少な疾患であり、その中でも腫瘍を基礎疾患にもつ割合は5.5~17% 程度である。本疾患を疑って検査を行わないと診断は難しい。当日は、より具体的な検査データや治療内容を提示し、多少の考察を踏まえ、報告する。FP-135 下肢動脈閉塞に伴う消耗性血小板減少の経過中にヘパリン起因性血小板減少症を来した一例1)京都府立医科大学付属病院 救急医療科、2)大津市民病院 救急診療科渡邉 慎1)、小尾口 邦彦2)、横峯 辰生2)、宮崎 勇輔2)、渡邉 宏樹2)、加藤 之紀2)、蒲池 正顕2)、福井 道彦2)症例は86 歳の男性。腰痛と下肢痛を主訴にER 受診。左下肢総腸骨動脈閉塞及びそれに伴う消耗性の血小板減少を認め同日ICU に入室した。第1病日よりヘパリン及びシロスタゾールの投与を開始、急性腎障害を合併した為に第3病日に持続血液透析を開始、左下肢の血流障害が進行したため第4病日に下肢切断術を施行した。血小板数が著明に低下したため第5病日より抗凝固薬をメシル酸ナファモスタットに変更した。この際ナファモスタットを持続透析回路の抗凝固薬としても用いていたが、同薬剤の保険上限量に達していたため適宜ヘパリンを併用していた。以後全身状態は改善傾向にあり血小板値も僅かながら増加していったが、第11病日にナファモスタットを中止しヘパリンを増量した所、血小板が著減した。経過中に持続透析回路の頻回の閉塞、原因不明の発熱のエピソードがあったことも併せて考慮し、ヘパリン起因性血小板減少症(Heparin-induced thrombocytopenia ;HIT)の発症を疑った。ヘパリンとの接触を完全に遮断しアルガトロバンを開始した所、翌日には血小板数の速やかな回復を認めた。またHIT抗体(抗血小板第4因子・へパリン複合体抗体)が強陽性であったことが後日判明した。今回の入院以前に患者がヘパリンに暴露されたエピソードはなく、治療経過中にHITを発症したと考えられた。HITはヘパリン使用患者において一定の頻度で発症する疾患である。重症患者に血小板減少がみられた際に、安易にDIC と診断するのではなく、常にHITを含めた血小板減少を呈する他疾患との鑑別することが重要である。今回、我々は下肢急性動脈閉塞により消耗性の血小板減少を呈した患者の治療中にHIT を発症した症例を経験したので文献的考察を含めて報告する。