ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-778-FP-097 慢性呼吸不全患者の上腹部術後にNIV-NAVAにて人工呼吸管理を行った1 例1)社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院 麻酔科、2)社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院 臨床工学部、3)社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院 集中治療部手賀 丈太1)、平本 有美1)、和田 麻美2)、青野 宏美2)、吉野 淳1)、財津 昭憲3)、藤村 直幸1)【はじめに】上腹部手術後は、呼吸合併症の頻度が高いことが知られている。今回、II 型慢性呼吸不全患者の上腹部開腹術後にNIV-NAVA を用い術後人工呼吸管理を行った症例を経験したので報告する。【症例】67 歳女性、身長151cm、体重81kg、心不全を契機にII型慢性呼吸不全となり、近医にてNPPVによる呼吸管理が行われていた。今回、上腹部痛が出現、精査の結果急性胆嚢炎と診断され、手術目的に当院紹介、腹腔鏡下胆嚢摘出術が予定された。術前動脈血ガス分析(酸素マスク5l/min)では、pH7.375, PaO2 105mmHg, PaCO2 61.8mmHg, BE +8.9 と高炭酸ガス血症を認めた。心エコー検査ではVSD ならびに右心負荷を認めた。麻酔導入はプロポフォールで行い、麻酔維持はセボフルラン、レミフェンタニルで行った。腹腔鏡下での手術が予定されたが、腹腔内炎症が高度であったため、開腹胆嚢摘出術に術式が変更された。手術時間は5 時間58 分、麻酔時間は7 時間39 分であった。術後鎮痛は、iv-PCA にて行った。手術終了(抜管)後の動脈血ガス分析(酸素マスク5l/min)ではpH7.39, PaO2 108mmHg,PaCO2 64.2mmHg, BE +11.4 を示した。術後呼吸循環管理目的に集中治療室入室となった。入室後、Ediカテーテルを挿入留置し、NIV-NAVAにて人工呼吸管理を開始した。術後1 日目にNIV-NAVA を中止し、その後は酸素マスクにて呼吸管理を行った。術後呼吸合併症を来すことなく、術後3 日目に集中治療室を退室、術後8 日目に近医へ転院となった。【考察】NPPV は、上腹部術後の呼吸合併症の予防に有用と報告されている。今回、NIV-NAVA は患者と人工呼吸器の同調性に優れ、II型慢性呼吸不全患者の上腹部術後の呼吸合併症予防に有用であった。FP-098 flail chestに対しIRV での呼吸管理が有用であった1 例帝京大学 医学部 救急医学講座山崎 舞子、佐々木 勝教、藤田 尚、安心院 康彦、池田 弘人、坂本 哲也【はじめに】重症胸部外傷は呼吸器合併症を併発し呼吸管理に難渋することが多いが,治療法については統一の見解がない.今回我々はflail chest,肺挫傷のため呼吸管理に難渋したがInverse Ratio Ventilation(以下IRV)で管理し良好な経過をたどった症例を経験したので報告する.【症例】41歳男性,飲酒後路上に横たわっていたところを車両に轢過され救急要請となった.来院時,意識GCS E3V3M5, 血圧120/90mmHg,心拍数87/分,呼吸数18/分,呼吸音左右差なし,皮下気腫なし,頸静脈怒張なし,左flail chestを認め,CT上両側多発肋骨骨折(右第3-5肋骨骨折,左第2-4肋骨骨折),肺挫傷があった.(AISスコア4)気管挿管,人工呼吸器管理(Pressure Support Ventilation,PSV)を実施しICUに入室.第2 病日に左気胸が出現し胸腔ドレーンを挿入したがflail chestが悪化.第3 病日に酸素化障害が進行し(PaO2 161.4 mmHg,PaCO2 63.1mmHg,FIO2 1.0,RR 35/min)頻呼吸と吸気努力が強く自発呼吸と人工呼吸器との同調性が保てないため,筋弛緩薬投与を開始しIRV(PC 30mmHg,PEEP 15mmHg,RR35/min, I:E 比1.4:1)に変更し, 血行動態の悪化なく酸素化障害の改善を得た.第4 病日皮下気腫が改善し胸腔ドレーンを抜去,第6病日筋弛緩薬を中止後も人工呼吸器との同調性は保たれ,血行動態も安定して経過,第13病日気管切開術を施行し,第16病日には呼吸器離脱が可能となった.【結語】flail chestに対し,IRVを用い呼吸管理を行った報告はないが,本症例では呼吸状態の悪化に対し導入することで良好な転機を得た.FP-099 深鎮静患者における補助換気中の一回換気量に関連する因子の後方視的検討1)大阪大学 医学部附属病院 集中治療部、2)トロント小児病院古出 萌1)、山下 智範1)、小山 有紀子1)、吉田 健史2)、内山 昭則1)、藤野 裕士1)【目的】肺保護を目的とした一回換気量の制限や自発呼吸と同調させた補助換気は広く行われている。自発呼吸努力の強い場合に一回換気量を制限するために深鎮静とすることは選択肢の一つである。深鎮静下の自発呼吸努力のある患者において、一回換気量に影響する因子を後方視的に検討した。【方法】2014年に大阪大学医学部附属病院ICUに入室した全640例を対象に、ICU入室から14 日間に以下の4 項目:Richmond Agitation Sedation Scale(RASS)≦- 4、PaO2/FiO2 < 300 かつPEEP > 5cmH2O、従圧式換気モード、呼吸回数が設定換気回数より2回以上多いこと、を全て満たす血液ガスデータを診療録から抽出した。尚、同一患者ではデータの取得は1日あたり1回とした。これらを一回換気量が8 mL/kg 理想体重(PBW)未満の群(LTV群)と8 mL/kgPBW以上の群(HTV群)の2群にわけて比較検討した。【結果】データが適合したのは103症例のべ241回であった。LTV群が51 人102 回、HTV 群が69 人139 回となった。RASS 値とPaO2/FiO2には両群間で差はなかった。LTV群で体重は少なく身長は高かった。平均気道内圧とPEEPの差は4.4 ± 1.8 vs. 3.7 ± 1.5 cmH2OでLTV群が高値(p=0.004)、PEEP値は6.4 ± 0.2 vs. 7.1 ±0.2 cmH2O でLTV 群が低値(p = 0.007)となった。pH 値はLTV 群で7.42 ± 0.00、HTV 群で7.43 ± 0.00と差は認めなかった(p= 0.36)。HCO3-は27.0 ± 3.5 vs. 25.0 ± 3.3mEq/L(p< 0.001)、PaCO2 は41.9 ± 6.3 vs. 38.7 ± 6.6 mmHg(p <0.001)となり、ともにLTV群で高値となった。鎮静薬の使用には両群間に差がなかったが、麻薬の使用はLTV群の67回に比べHTV群では117回となりLTV 群では少なかった(p =0.002)。【結論】以下のことが示唆された。深鎮静下でも、また気道内圧を低くしても、低一回換気量を保てない場合が認められる。低一回換気量を保つには、背が高く痩せ形体型の患者が有利であり、HCO3-を高めにすることも役立つ可能性がある。