ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-774-FP-085 急性呼吸不全患者においてHigh-flow nasal cannulaが有用であった2 症例1)滋賀医科大学 附属病院 救急集中治療部、2)同 麻酔科、3)同 救急集中治療学講座喜多 理香1)、宮武 秀光1)、藤井 恵美1)、今宿 康彦2)、山根 哲信1)、辻田 靖之1)、田畑 貴久3)、高橋 完1)、萬代 良一1)、江口 豊3)High-flow nasal cannula(HFNC)は高流量の高濃度酸素を投与可能なため、正確なFiO2 設定、軽度のPEEP(Positive endexpiratory pressure)の点から、急性呼吸不全症例に有効であり、さらに装着したまま会話・食事が可能であり患者のQOL 維持も大きな利点と報告されている。我々は急性呼吸不全で非侵襲的陽圧換気(NPPV)施行継続が困難と考えられた症例に、HFNCを用い酸素化の改善を得た2症例を経験したので報告する。1例目は健診でγ -GTP 軽度上昇を指摘されていた以外は生来健康な66歳女性。微熱・褐色尿・黄疸のため近医に入院し、原発性胆汁性肝硬変に合併した自己免疫性肝炎と診断され、ステロイドパルス治療抵抗性で肝移植の適応となり、転院・ICU入室した。入室day2 にCMV感染によるARDS を併発し、P/F 約170 となったが、HFNC40%,30L/minの投与でP/F 約340に改善した。その後、HLA不適合による肝移植困難のためDNARの方針となったが、急変時まで15 日間HFNC療法下で、意識状態の把握が容易であった。2 例目は40℃の発熱とふらつきを主訴に救急外来を受診した重喫煙歴のある73歳の男性。初診時、意識は軽度不穏、高熱とSpO2 93%(大気中)を認めた。血液検査上、白血球10500/dL、CRP 9.83mg/dL、PCT 2.63ng/dL と感染症が示唆され、画像検査から左下葉肺炎の診断で入院した。当初、鼻カヌラ3L/minで酸素投与し、抗生剤加療を行ったがday5に突然の呼吸苦とSpO2 70%台(リザーバーマスク10L/min)へ低下し、呼吸努力と肺雑音、喀痰の増加、画像所見の悪化のため、呼吸管理目的にICU入室した。喀痰が多くNPPVの適応から除外され、挿管せずHFNC療法下に頻回な吸痰処置で治療は奏功し、day8(入室day3)にICU退室した。呼吸補助療法が必要な急性呼吸不全状態において、NPPVの継続困難な症例に対して、HFNC療法により酸素化の改善を認めた2 症例を経験した。患者のQOL 維持にも有用と思われた。FP-086 急性心筋梗塞に伴う虚血性心不全に対してネーザルハーフローで治療した1 例産業医科大学病院 集中治療部清水 毅洋、二瓶 俊一、清水 智子、金澤 綾子、荒井 秀明、長田 圭司、原山 信也、相原 啓二、蒲地 正幸重症呼吸不全に対するNasal High-flow(NHF)は,安全性と有効性から近年注目されている。一方心原性肺水腫による呼吸不全は、最も頻度が高く、重症になりやすい。急性心不全での呼吸療法として、鼻カニューレやフェイスマスクを用いた酸素投与でも改善されない頻呼吸,努力呼吸,低酸素血症を認める場合は非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)が推奨されている。しかしNHFについては言及されていない。今回我々は、急性心筋梗塞に伴う虚血性心不全に対してNHF で加療した症例を経験したので報告する。症例は70 代男性。午前7 時30分頃胸部圧迫感が出現。症状軽減せず、かかりつけ医受診。心電図上V1~V4でST低下を認め、急性冠症候群の診断にて当院循環器内科紹介受診。同日緊急心臓カテーテル検査を施行。#11に100%狭窄を認め、同部位に対してPCI施行。手技中血圧低下を認めたため、IABP 挿入となった。PCI 終了後ICU 入室となった。ICU 入室時、FM8L にてSpO294% で、胸部X線上著明な肺水腫を認めた。虚血性心疾患に伴う肺水腫と考えNPPV を考慮したが、IABP 補助下で収縮期血圧が70mmHg台と鎮静薬が使いにくい状態であり、NHFで管理した。その後循環動態安定し翌日にはIABP抜去。呼吸状態及び胸部X線上のうっ血所見も改善し、入室4 日目に一般病棟へ退室となった。NPPV は、心原性肺水腫症例に有効であり、挿管率は低かったとする報告があり、急性心不全におけるNPPVは一定の評価を得ている。しかし本症例のように血圧が低く鎮静薬が使いにくい症例や、マスク換気に対し拒否的な症例においては、代替療法としてNHFによる呼吸療法も考慮されてよいのかもしれない。本症例の経験から、虚血性心疾患における肺水腫においてNHF の可能性が示唆された。FP-087 抜管後にミニトラックとハイフローセラピーを用いて管理した患者の検討岸和田徳洲会病院 救命救急センター薬師寺 泰匡、白坂 渉、山田 元大、鈴木 慧太郎、鍜冶 有登、篠崎 正博【背景】近年ネーザルハイフローセラピー(NHF)が導入され呼吸器科領域を中心に使用が増えてきているが、重症患者や集中治療分野の患者においての利用方法については検討が少なく議論が残っている。当院では当手技の持つ加湿性の良さ、死腔減少効果に着目し、集中治療期間においても積極的に活用してきた。【目的】抜管後に喀痰多量で気道に問題が生じる患者群に対して、ミニトラックとハイフローを用いた気道・呼吸管理を行った症例を振り返り、その有用性を検討する。【対象と方法】2014年8 月から2015年7 月まで当院救急科に入院し人工呼吸器での管理を要した患者のうち、抜管後にミニトラックを挿入し、ミニトラックよりハイフローセラピー(MHF)を用いた症例を対症に経過と予後について後ろ向きに検討した。【結果】9 例が対象となった。男性は7例、平均年齢は70.4±18.42で、全例抜管前まで頻回の気道吸引を要しており、抜管後24時間以内にMHFを開始されていた。抜管までの平均日数は10.0±3.46日で、7例がハイフローから離脱できており、1例が経過中に死亡、1例が再挿管となっていた。離脱成功例における離脱までの平均日数は12.0±8.77日であった。【考察】抜管後の酸素療法にNHFを利用することについて、近年有用性の指摘もあるが、気道分泌物による閉塞を来す場合など気道の問題は解決しづらい。この点はNPPVにおいても共通しているが、MHFでは気道閉塞の回避をしつつ、ハイフローセラピーの恩恵を受けることが可能となる。他の方法との比較検討が必要ではあるが、MHFは抜管時に頻回吸引している例でも再挿管率を下げ得る。【結語】抜管後の管理において、MHFはNPPVを補完するすぐれた呼吸管理方法である。