ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-768-FP-067 悪性リンパ腫治療中に腫瘍崩壊症候群からARDSを来した一例1)仙台市立病院 麻酔科、2)石巻赤十字病院 麻酔科、3)宮城こども病院 小児科、4)東北大学大学院医学系研究科 麻酔科学・周術期医学分野小山 友菜1)、戸井田 朋恵2)、安藤 幸吉1)、楠本 耕平3)、眞田 千穂1)、筆田 廣登1)、山内 正憲4)腫瘍崩壊症候群(TLS)とは腫瘍細胞の崩壊に伴い細胞内物質が急激に細胞外に放出することに起因する一連の多臓器障害を指す。今回我々は著しい好酸球増多で発症し、治療経過中にTLSとARDSを来した悪性リンパ腫を経験したので報告する。【症例】40代男性【主訴】発熱、倦怠感【現病歴】一ヶ月程前からの頚部リンパ節の腫脹があり開業医を受診。精査目的に当院紹介となり、採血で白血球11万と著しい増多を認めた。後日受診予定で一旦帰宅したが、39.5℃の発熱と倦怠感が出現し入院となった。【検査所見】WBC127000/ μ l(好酸球94.5%)、CRP 16.25mg/dl、LDH 686IU/l、他正常範囲【画像所見】胸部Xp: 両側肺野透過性低下、胸部CT:両肺野にびまん性間質影【経過】第3病日リンパ節生検、心エコー検査施行。EF30%と心機能の低下を認めていた。同日夕に呼吸苦強くなりICU入室。悪性リンパ腫による好酸球増多から心筋炎、肺炎を来したと考えられ、挿管し人工呼吸管理のもとステロイドパルス療法を開始した。第4病日の採血でWBC33000/μ lと急激に低下したが、腎機能低下、肝逸脱酵素の上昇を認め、TLS と診断された。胸部Xp で両側肺浸潤影ありP/F150(PEEP12cmH2O)の中等症ARDSであった。シベレスタット、PSLによる治療にも反応悪くP/F120(PEEP15cmH2O)と低下した。末梢性T細胞性リンパ腫の診断となり、心機能モニター併用でビンクリスチン開始。徐々に全身状態の改善が得られ、第10病日に人工呼吸器を離脱した。【考察】ARDSの病態には、肺を直接的に傷害する機序により生じるものと、肺以外の原因疾患により好中球や液性因子が活性化されるものがある。本症例では、原疾患とTLS に伴い炎症性因子が遊離されたことにより急激にARDS へ進展したと考えられた。文献的考察を含め、報告する。FP-068 ARDSをコントロールできなかった生体肝移植術後の1 例熊本大学 医学部 集中治療部鷺島 克之、蒲原 英伸、早田 学、山下 淳二、徳永 健太郎、木下 順弘【はじめに】生体肝移植術(LDLT)後は肝機能が不十分で免疫力が低下しており、ARDSのリスクは高い。今回我々は原因がはっきりしないLDLT後のsevere ARDSを経験し、コントロール不能で救命できなかったので報告する。【症例】4歳、男児。体重:14.5 kg, 身長:90 cm。【現病歴】20○○年7月にLDLTを施行(ABO血液型不適合移植)した。原疾患はプロピオン酸血症であった。POD3 にICU を退室したが、POD8 に液性拒絶でICUに再入室された。血漿交換、免疫抑制剤で病勢は緩徐となり、POD21にICUを退室した。POD31に肝生検を施行。同日夜に腹腔ドレンから血性排液が増加し、ショックバイタルとなり、ICUに緊急入室となった。入室当初は呼吸不全を認めなかったが、安静のため人工呼吸管理となった。【既往歴】プロピオン酸血症。気管支喘息【ICU入室後経過】出血性ショックの原因は創し開、腹壁瘢痕ヘルニアによる断裂部出血であった。POD34(入室3 日目)に根治術を施行した。術後よりAKI、肺水腫を認め、酸素化の低下を認めた。持続血液透析(CHD)の導入で、一旦酸素化は軽快したが、再増悪しhigh PEEP戦略が必要となった。モードとしてAPRV を用いたが、酸素化の改善に乏しく、換気障害も強く、アシデミアの制御は困難であった。ECMO の適応は無いと思われ、HFOV の導入となった。6 日後に従来換気モードに変更可能な状態までウイーニングできた。しかし、その後酸素化と換気は再増悪し、永眠された。【考察】ARDSを改善できなかった原因として、プロピオン酸血症の再増悪も考えられた。【結語】LDLT後の小児ARDS患者を経験した。一時的な軽快はあったが、原因も判然とせずコントロール不良で、救命できなかった。FP-069 間質性肺炎の急性増悪に対する治療戦略1)東京医科大学 麻酔科学分野・集中治療部、2)札幌医科大学 集中治療医学今泉 均1)、関根 秀介1)、竹下 裕二1)、長尾 明紘1)、崔 英姫1)、内野 博之1)、升田 好樹2)、巽 博臣2)、吉田 真一郎2)【はじめに】ICU で遭遇する難治性呼吸器疾患の代表は,間質性肺炎(IP)の急性増悪で,膠原病の合併や感染,薬剤,手術などが誘因となる。IPの種類によってステロイド(S)への治療反応性も異なり,確立した有効な治療法がない。特発性肺繊維症(IPF)の急性増悪とは,AIPを合併した病態と考えられ,治療のポイントは1)繊維化した肺病変を悪化させない,2)健常肺に新たに生じた瀰漫性肺胞傷害の治療,3)誘因(膠原病,感染,薬剤等)の除去・治療であるが,低容量換気以外有効な治療法は証明されてない。 【対象】最近5 年間にIP関連肺傷害でICUに入室した27 例(男18,女9,平均62 歳)。入室前に6 割の症例でS が投与されていた。【治療戦略】1)症状,経過,検査,肺HRCTの病変と分布を基に原因や病態の解析,2)薬物療法,3)高濃度酸素,高圧を避け,PaO2を60mmHg代に保ち,NPPV,PSV,APRVなど気道内圧の上昇を抑制しVALIを誘発させない人工呼吸モード選択,PDTの早期施行,4)栄養改善とBT抑制のため早期EN導入,5)BSコントロール,6)血液浄化:PMXやCHDF施行。重症度,検査,S投与の有無など入室時所見と予後, PMX,APRV治療の有無,人工呼吸期間と予後との関係を検討した。【結果】1)IP関連肺傷害の28日後生存率は63%,膠原病の合併や感染,薬剤の誘因症例を除いた場合67%であった。2)予後別入室時APACHEll,SP-D, KL-6 値に差はなかった。3)少数例ながらPMX で酸素化は改善しなかった。4)進行癌,血液疾患合併例,1週間以上の人工呼吸症例の予後は不良であった。【結語】誘因となる病態の治療や人工呼吸,全身管理を行っても,肺の繊維化を抑制できないS 難治性IP 症例の予後は不良であり,新しい治療方法の開発が望まれる。