ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-760-FP-043 急性腎盂腎炎を契機に、殿筋の化膿性筋炎及び横紋筋融解症をきたしたと考えられる1 例静岡県立総合病院 高度救命救急センター成田 知大、春田 浩一、三宅 章公【背景】 化膿性筋炎は骨格筋に血行性に感染が生じる疾患で、熱帯地域、免疫不全者に多いと報告されている。また、多くの報告でStaphylococcus aureus が起因菌とされている。 今回、糖尿病等の既往がない患者で、腎盂腎炎を契機に、E.coli が起因菌の化膿性筋炎及び横紋筋融解症をきたした1例を経験したため報告する。【症例】77歳女性。前日までは軽度の食欲低下のみで、他特記すべき症状は認めなかった。当日朝ベッドから起床しようとした際に左大腿部付け根の痛みがあり、動作不能であるため、大腿骨頚部骨折が疑われ当院に救急搬送となった。来院時のvital sign BP118/65mmHg HR96/min BT36.6℃で発熱は認めず、左大腿骨頚部に強い圧痛を認めた。レントゲン、腹骨盤単純CT 検査を撮影したが、殿筋の腫大のみで大腿骨に骨折の所見は認めず。右腎盂腎炎の所見あり。採血ではWBC20000/μl, CRP18mg/dl, CK5600U/L Cr1.7mg/dlと炎症反応、クレアチニンキナーゼの上昇、腎機能低下の所見を認めた。腎盂腎炎のみでは病態を説明できないことから、骨盤部MRI を撮影したところ、中殿筋、小殿筋に著明な炎症性浮腫を認め、化膿性筋炎と考えられた。尿検査のグラム染色でグラム陰性桿菌が検出されたため、TAZ/PIPCを開始の上、入院管理とした。入院直後より40℃台の著明な発熱が出現した。入院後、尿量低下がしばらく継続していたが、輸液負荷により徐々に改善を認めた。入院翌日、培養検査よりE.coli が検出されたことから、腎盂腎炎を契機に発症した化膿性筋炎であると考えられた。その後も抗菌薬投与を継続し全身状態の改善を認めた。【考察】化膿性筋炎は近年報告例が増加してきており、温暖化に伴い今後さらに流行する可能性がある。筋痛を認める場合、外傷に加えて化膿性筋炎を念頭に置き、精査することが必要であると考えられる。FP-044 急性呼吸促迫症候群を呈した粟粒結核に両側気胸を発症した1 例岩手県立中央病院 ICU科梨木 洋、宮手 美治【はじめに】急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の原因として粟粒結核は2% を占め,粟粒結核にARDSを合併する頻度は7% とされる.粟粒結核に気胸を併発したという報告は少なく,検索した限りでは我が国で文献として報告されている症例は小児を除けば6 症例である.我々は,ARDSを呈した粟粒結核に両側気胸を発症した1 例を救命することができなかった.病理学的な検討を加え報告する.【症例】42歳男性【既往歴】膀胱癌 入院1年前に経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を受け経過観察となっていた.【経過】入院3週間前に膀胱腫瘍に対して当院でTUR-Btを受けた.術後の発熱を主訴に当院を受診し,尿路感染症の診断で入院した.抗生剤に反応せず,呼吸状態が悪化した.ARDS になり,胸部CT では全肺野にびまん性のすりガラス陰影を認めた.痰,尿の抗酸菌塗抹と結核polymerase chain reaction(PCR)検査が陽性であっため,粟粒結核と診断した.人工呼吸器管理,抗結核薬の投与を含めた集学的治療を行ったが,経過中に両肺に気胸を発症した.ドレナージするも改善なく,第49病日に死亡した.病理解剖を行った.ホルマリンを気管支から注入すると右肺は気腫性変化部の数か所からじんわりと漏れがあり,左肺は1か所吹き出す程度の漏れがあり,それぞれが気胸の責任病変と考えた.陳旧性肺結核を認め感染した時期は不明だった.膀胱腫瘍と考えたものは尿路結核だった.【最終診断】粟粒結核,ARDS,両側気胸【考察】粟粒結核にARDSを合併すると予後が極めて不良とされる.本症例ではさらに両側の気胸の発症が重なった.ARDS を伴う粟粒結核に対して人工呼吸管理を行う場合は,気胸を発症しうるリスクを考慮し,陽圧換気による圧損傷に特に注意が必要であると考えた.【結語】ARDS を呈した粟粒結核に両側の気胸を発症した1 例を経験したFP-045 健常高齢者に生じた多発外傷後のサイトメガロウイルス(CMV)腸炎の一例1)高知医療センター、2)檮原病院山本 浩大郎1)、村西 謙太郎1)、野島 剛1)、盛實 篤史2)、田村 竜1)、大西 広一1)、大森 貴夫1)、石原 潤子1)、喜多村 泰輔1)CMV感染症は免疫不全状態の患者で問題となることが多く、健常者のCMV感染の報告は少ない。今回、多発外傷後にCMV腸炎を発症した一例を経験したので報告する。症例は83 歳男性、自動車運転中に誤って崖から20m転落し、当院へ搬送された。精査の結果、両側肺挫傷、非損傷、腸間膜損傷(回盲部)、骨盤骨折、第5,12 胸椎骨折を認め、骨盤骨折による出血性ショックを呈していた。大量輸血を行いながら経皮的動脈塞栓術(TAE)を行い、その後骨盤骨折の創外固定術を施行した。術後はARDS を発症し、人工呼吸器管理となった。全身状態が改善した第9病日に二期的に骨盤骨折に対する内固定術を施行した。胸椎骨折に関しては、保存的加療とした。。腸間膜損傷に関しては第3病日まで血便を認めたものの、自然に改善し、経過観察のCTでもfree airを認めず、腸管損傷は否定的であった。しかし第10 病日より水様便の量が多くなり、第12 病日には膿様の便を認め、便中白血球も陽性となった。CDトキシン陰性でMRSAも検出されず、抗菌薬も十分に投与されていたため経過観察としたが、症状は改善しなかった。第24病日に下部消化管内視鏡検査を施行したところ、下行結腸からS状結腸にかけて全周性に発赤、びらんを認めた。同部位より生検を施行したところ、CMV 免疫染色陽性細胞と巨細胞を認めた。血液検査でCMV抗原は陽性であり、CMV腸炎と診断し、ガンシクロビルによる治療を開始した。その後CMV 抗原は陰性化したが、下痢便は持続していたため維持量での治療を継続した。全身状態は安定していたためリハビリ病院へ転院し、継続加療を行うこととなった。今回CMV 腸炎を発症した原因として、多発外傷やそれに伴う低栄養状態による免疫力低下、または虚血性腸炎を基板として発症した可能性が考えられた。高齢者の多発外傷で長期管理を要する患者の下痢の鑑別としてCMV腸炎も考慮すべきと考えられた。