ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-759-FP-040 高血糖高浸透圧症候群,両下肢壊疽,敗血症性ショックを主病態として入院した蝿蛆症の一例1)国立病院機構名古屋医療センター 集中治療科、2)国立病院機構 名古屋医療センター 総合内科、3)豊橋ハートセンター 麻酔科森田 恭成1)、近藤 貴士郎1)、安藤 諭2)、村田 哲哉3)、鈴木 秀一1)【症例】元来病院受診歴のない43歳女性. 入院1ヶ月前より腰痛のため歩行困難となり,自宅のソファに座りながらの生活を続けていた.3 日前より食事摂取困難となり,入院当日体動困難と意識障害を認め家人が救急要請した. 家はゴミにまみれ,患者本人の下肢を中心に蛆が大量に湧いていた.来院時頻脈,頻呼吸,両下肢腐敗,著明な高血糖と乳酸アシドーシスを認めた.高血糖高浸透圧症候群,両下肢壊疽,敗血症性ショックとしてICU 入室の上,壊疽部の洗浄とデブリドマンを行いつつ,全身管理を行った.1 回/日の洗浄とデブリドマンにより第4病日には蛆は死滅し,悪臭も改善.脱水の補正とヒューマリン持続静注により血糖値も安定化してきた.画像評価の結果,両下肢骨髄まで炎症が及んでいること判明し,第11病日全身麻酔下で両下肢切断術施行した.術後も人工呼吸管理継続し第14病日に人工呼吸離脱,第15病日に一般床転床となる.【考察】本症例は未治療の糖尿病と体動困難に伴う脱水状態と劣悪な環境により,両下肢壊疽となり蝿蛆症を来したと考えられる.広範囲の壊疽にも関わらず,全身状態が比較的良好であったのは蛆による壊死組織の貪食の効果の可能性もある. 若干の文献的考察をふまえつつ報告する.FP-041 消化器外科手術後に Aeromonas hydrophilia感染症を発症し急激な経過をたどった2 症例1)名古屋大学大学院 医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座、2)名古屋大学大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学尾関 奏子1)、貝沼 関志1)、高橋 英夫2)、鈴木 章悟1)、市川 崇1)、青山 正1)、石田 祐基1)、平井 昂宏1)、林 智子1)、西脇 公俊1)Aeromonas hydrophilaは海 水,淡水,土壌に生育するグラム陰性通性嫌気性桿菌で,感染経路は経口感染,もしくは,創傷感染とされている。一般的に病原性は弱いが,易感染性宿主では一旦発症すると重篤化し致命的な経過をとることもある。われわれは消化器外科手術後にAeromonas hydrophila感染症を発症し、急激な経過をたどった2症例を経験したので報告する。【症例1】63歳男性。慢性多発根炎に対してステロイドを内服していた。胃癌術後の胸部中部食道癌に対し、胸腔鏡下食道癌切除再建術を施行した。手術当日に抜管されたが、第1病日に呼吸状態悪化のため再挿管となった。第2 病日朝よりショックバイタルとなった。同日夕には皮膚の発赤がみられ急速に増大し、皮下組織の壊死を認めたため壊死性筋膜炎と診断し、デブリドマンを行った。第3病日朝には壊死範囲が拡大したため、再度デブリドマンを行ったが、全身状態の悪化が進行し、同日午後には死亡された。第1病日に採取された血液培養からAeromonas hydrophila が検出された。【症例2】75歳女性。他院で胃全摘出術を施行されたが、手術中より血圧が低く、カテコラミン投与を必要としていた。術後も輸液に反応しない低血圧が続き、第2病日に皮下出血の急速な増大とCTでの皮下組織壊死を疑われ、全身管理目的で当院に転送となった。その後も全身状態、皮膚症状が悪化し、第3病日に死亡された。当院入院時のドレーン培養からAeromonas hydrophila が検出された。両症例とも、手術後に使用していた抗生剤はそれぞれの菌に対して感受性良好であったにも関わらず、血液浄化を含めた治療に反応せず、急激に全身状態が悪化した。Aeromonashydrophila 感染症に壊死性軟部組織感染を併発した場合は予後不良であると言われている。術前に免疫能を評価し、栄養管理を行ってbacterial translocationのリスクを低下させ、発症を予防することが重要である。FP-042 トラクター外傷の経過中に敗血症性ショックに至った一例1)君津中央病院 救急・集中治療科、2)諏訪中央病院 内科総合診療部安部 香緒里1)、北村 伸哉1)、加古 訓之1)、大谷 俊介1)、大村 拓1)、岡 義人1)、五十嵐 一憲2)【症例】83歳男性。トラクターが自走し、水田で作業中の患者の右体幹部を轢過されているところを発見され救急要請となった。来院時BP63/41mmHg、HR91/min とショックバイタルであり、FAST でモリソン窩陽性であった。意識はGCS でE3V4M5、体温32.4℃、右前腕に表皮剥離を伴う汚染創を数か所認めた。造影CT にて、右副腎動脈より造影剤のextravasation を認めた為、経カテーテル下動脈塞栓術(Transcatheter arterial embolization;TAE )施行後、ICU に入室した。来院当初より汚染創に対し感染予防目的にセファゾリンを投与していた。ICU入室後、徐々に血圧は安定し、ショックを離脱したものの、入室3 日目から乏尿となりCHDF を開始した。4日目から39℃台の発熱がみられ、sBP70 台、HR120 と再度ショック状態に陥った。敗血症性ショックを疑い各種培養検査を施行し、抗菌薬をメロペネムに変更した。後日血液培養2 セットからAeromonas hydrophila が検出されたため抗菌薬にレボフロキサシンを追加した。7 日目には循環動態が安定し、解熱したためde-escalation therapyとしてセフトリアキソンに変更した。12日目には人工呼吸器よりweaningでき、13日目には尿量も回復したためCHDFを離脱、22日にICU退室となった。【考察】A.hydrophilaはグラム陰性通性嫌気性桿菌で、河川や土壌などに広く分布している。A.hydrophilaの主な感染経路は、経口からであるが、皮膚・軟部組織感染症からの経路による発症頻度は少ない。本症例は発症以前に消化器症状なども無く、水田で受傷した際に右腕の創部からA.hydrophila が侵入した可能性が高い。本菌はβ-ラクタマーゼを産生するため、第1・2世代セフェム系抗菌薬には感受性が低いため、ニューキノロン系、第3世代セフェム系、モノバクタム系、カルバペネム系などが適応となる。本症例のような泥に汚染された外傷では感染の可能性を考慮し、第3 世代セフェム系等の抗菌薬を選択すべきであった。