ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-754-FP-025 急激な呼吸・循環不全により経皮的心肺補助装置装着を要するも救命できなかった頚髄損傷の1 例松戸市立病院 救命救急センター遠藤 英樹、庄古 知久、漆畑 直、千田 篤34歳男性。バイク対車の交通外傷で救急搬送された。来院時、四肢の感覚および運動神経の麻痺を認めた。精査の結果、第5頚椎脱臼骨折を認めた。その他に大きな外傷は認めなかった。損傷高位はC4 で、American Spinal Injury Association ImparimentScale Aであり、神経学的予後は不良と考えられた。腹式呼吸も認め、外来で気管挿管、人工呼吸器管理となった。ICU入室後、ハローリングで牽引・固定を行い、第2 病日には、ハローベスト装着を行った。また、第2 病日より肺炎に対し抗生物質投与を開始した。第5病日より40℃前後の発熱、酸素化の低下を認めるようになり、第9病日には人工呼吸器設定では改善不能な酸素化低下、換気不良を起こし、血圧も低下したため、経皮的心肺補助装置装着となった。CTでは、緊張性気胸や肺塞栓は否定的であり、肺炎像も軽度であった。採血では、クレアチンキナーゼの上昇(最高値約340000U/l)、腎機能障害を認めたが、悪性症候群を積極的に疑わせる薬剤投与はなかった。その後、無尿となり、高カリウム、高リン、低カルシウム血症から心停止となったため、持続的血液濾過透析を開始した。電解質異常が改善すると心機能は回復したが、呼吸機能は回復せず、PaO2/FiO2比は100以下、高い吸気圧にも関わらず換気不良の状態が続いた。両肺に多量の痰貯留を認め、連日気管支鏡で吸痰を行った。心肺補助装置の交換を二度行うも、第23病日脳幹反射消失、脳波平坦となった。第31病日死亡確認となった。本症例のように頚髄損傷から急激な呼吸・循環不全の経過をたどり経皮的心肺補助装置を装着した症例の報告はない。頚髄損傷に典型的な呼吸器合併症である肺炎、無気肺および横隔膜機能不全を起こした経過とも異なり、病態生理学的な側面から考察を行い報告する。FP-026 外傷性膵損傷と腕神経叢引き抜き損傷を合併した交通外傷の1 例国立病院機構 長崎医療センター増田 太郎、日宇 宏之、増田 幸子、山田 成美、中道 親昭、高山 隼人症例は34 歳男性。バイクの自損事故で救急搬送された。離島の搬送先病院で施行された造影CT で右鎖骨窩動脈損傷による出血性ショックを疑われ、経口気管挿管後、集学的治療目的に当院にヘリ搬送となった。来院時の血圧は128/74mmHg、脈拍は100回/分、呼吸数は30回/分、呼吸音良好で左右差なし、末梢冷感・湿潤あり、意識レベルはGCS E1VTM5、瞳孔2.0mm/2.0mm 対光反射‐ / ‐ 、右顔面発汗低下、右上肢麻痺を認めた。血液検査で膵酵素上昇を認め、画像検査では右腎周囲に腹水の貯留を認めたが、主膵管の拡張や膵の造影不良は認めなかった。その他、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、右鎖骨骨折、右血胸など認めた。右鎖骨窩動脈の血管外漏出像は認めなかった。右上肢麻痺は腕神経叢引き抜き損傷を疑った。保存的治療の方針となり、救命センターに入院となった。入院翌日に右血胸の増悪を認めたため、胸腔ドレーンを留置した。意識状態の改善に乏しく、呼吸状態も多発肋骨骨折により不安定であったため、入院6日目に気管切開を行った。また、膵酵素上昇は改善傾向にあったが、腹水は増加傾向にあり、外傷性膵損傷と診断した。治療としてW-ED tube を留置し、非脂肪製剤の経管栄養を開始した。以後は、エコーおよび造影CT で仮性膵嚢胞のフォローを行った。治療開始後5週間目にICUを退室した。経口摂取を開始し、腹部所見や画像所見の増悪を認めなかったことから、脂肪制限食を開始し、徐々に食上げを行った。現在は常食で問題なく経過しており、独歩退院し、今後はMRIで診断された腕神経叢引き抜き損傷に対して治療を行う予定である。外傷性膵損傷は鈍的外傷の中でも稀であるが、外傷性膵損傷に腕神経叢引き抜き損傷を合併した報告はこれまでに認めなかった。貴重な症例を経験したので報告する。FP-027 20mの高さからコンクリートに転落して受傷した多発外傷患者の1 救命例岡山赤十字病院 麻酔科角谷 隆史、溝渕 有助、石川 友規、進 吉彰、三枝 秀幸、小林 浩之、奥 格、實金 健、福島 臣啓、時岡 宏明【症例】23 歳男性。高所作業中に誤作動したクレーンに接触し、20m の高さからコンクリートに転落して搬送された。【経過】意識は清明であったがショック状態であった。造影CT 検査により骨盤骨折、外傷性胸部大動脈損傷、右脛腓骨開放骨折、右踵骨開放骨折、左足関節脱臼骨折、第6 頸椎骨折、右眼窩内壁骨折と診断しICU に入室した。extravasationを伴う骨盤骨折に対して塞栓術、創外固定を行った。外傷性胸部大動脈損傷に対してステントグラフト内挿術を開腹下腸骨動脈アプローチで試みたが、開腹したところで著明に血圧が低下した。後腹膜出血がコントロールできなくなる可能性があり中止となった。損傷血管破裂予防のため、降圧療法、絶対安静で保存的に経過を見た。降圧療法、造影剤の使用、横紋筋融解症による影響から良好な利尿は得られず、第3病日に血清Cr が1.6mg/dl まで上昇し、溢水による呼吸不全、DIC、肝不全、脳室内出血も認めた。出血リスクのため、血液浄化法の導入は可能な限り遅い方が望ましかった。早急なステントグラフト内挿術が必要と考え、骨盤出血の止血が得られていると判断した第10 病日に大腿動脈よりステントグラフト内挿術を施行した。術後は降圧目標が緩和され、腎機能は改善して安静度制限も軽減されたことから各部位の整形外科手術を進めることができた。全身状態は改善して第14 病日に抜管した。塞栓術の合併症である臀部褥瘡等の疼痛の治療に難渋したが、第46 病日に集学的治療は必要なくなりICUを退室した。第195病日には松葉杖による歩行で退院した。【結語】高所転落による多発外傷の救命には難渋することが多い。本症例は出血の制御や損傷血管破裂予防のための血圧管理と、重要臓器の血流維持を両立するのに苦慮した。すべての臓器を治療しなくてはならない立場として、他科と綿密な連携を取りながら治療の順序のマネジメントを適切に行うことが重要である。