ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-741-CP68-4 悪性症候群を合併した抗NMDA受容体抗体陽性脳炎の一例1)帯広厚生病院 麻酔科、2)帯広厚生病院 神経内科黒田 浩光1)、小渡 貴司2)、堀内 一宏2)、山本 修司1)、赤塚 正幸1)、望月 宏樹1)、佐藤 順一1)近年抗NMDA受容体抗体陽性脳炎(以下抗NMDAR脳炎)が疾患として確立されているが,その症状や経過は悪性緊張病ときわめて類似している。悪性緊張病は統合失調症の経過中に意識障害・血圧上昇・不随意運動などを伴い,悪性症候群の鑑別疾患として考えなければならない。 今回統合失調症患者に発症した悪性症候群に対して集中治療を開始したが,てんかん重積,意識障害遷延から診断に苦慮した抗NMDAR 脳炎の一例を報告する。症例 38 歳男性,元来統合失調症でA 病院精神科へ外来通院中だった。現病歴 入院1ヶ月前にてんかん発作にてA病院精神科に入院した。経過中横紋筋融解症を発症したが症状軽快し退院した。しかし,幻覚妄想状態により日常生活が困難になったため,退院1週間後にB精神病院にて医療保護入院となった。B病院入院3日後に高熱,意識レベルの低下,腎機能低下,CPK上昇,筋強直がみられ,悪性症候群として当院集中治療室へ紹介となった。ICU入室後ダントロレン投与により筋強直は改善し,検査値も改善した。しかし,意識レベルは悪化し,項部硬直,発熱が続くためICU3日目の髄液検査では初圧と細胞数の増加を認め,その後の髄液HSV- PCR は陰性だった。頭部MRIでは脳炎に特徴的な画像はみられなかったが,髄膜脳炎としてアシクロビル,セフトリアキソンの投与を開始した。ICU4 日目間欠的に筋強直と無呼吸が出現したが,脳波検査ではてんかん波はみられず,悪性症候群と考え,ブロモクリプチン・アマンタジンを開始した。ICU7日目には強直間代性痙攣が出現し,さまざまな抗てんかん薬を使用しても痙攣は続き,精査・加療を開始した。約1ヶ月半後に抗NMDA受容体抗体陽性の結果より抗NMDAR脳炎と診断を確定した。考察 抗NMDAR脳炎では初発症状が精神症状のため,統合失調症患者では診断が難しく,さらに本例では少数例の男性であり,悪性症候群も重複したことで診断を難しくしたと考えられる。CP68-5 ネオスチグミン臭化物長期内服によるコリン作動性クリーゼの1 例石巻赤十字病院 救命救急センター大邉 寛幸、小張 祐介、遠山 昌平、小林 正和、小林 道生、石橋 悟【症例】76歳男性。胸髄症術後の排尿困難に対してネオスチグミン臭化物30mg/ 日を2年前から内服。来院当日15時30 分冷汗と痰がらみが出現し吸引が頻回となった。19時30 分低酸素血症と意識障害が出現し、20時30分初期波形PEAの心肺停止状態となり10分後に自己心拍再開。21 時9分にも再度PEAとなり4分後に自己心拍再開し当院救急搬送。初診時JCS300、血圧64/37mmHg、脈拍50bpm、SpO298%(FiO21.0)。来院後直ちに気管挿管し人工呼吸器管理開始。縮瞳(左右pin-point pupil)、流涎、流涙、発汗、下痢を認め、血清ChE値が16U/Lと低値で、当初は有機リン中毒を疑って胃洗浄、活性炭下剤投与、PAM 投与を施行。精神科病院入院中であり胃内容物の刺激臭がなく、血中農薬スクリーニング検査から有機リンは検出されず。ネオスチグミン臭化物内服歴からコリン作動性クリーゼと診断した。入院後は徐脈は速やかに改善したが血圧の低下が著しく大量補液とカテコラミン投与を施行。硫酸アトロピンについては徐脈や気道分泌物の増加がなかったために使用せず、PAM も第2 病日に中止。呼吸は徐々に改善し第6 病日にはP/F300 まで改善。第8 病日に瞳孔は正常となり唾液分泌も減少した。第14 病日にカテコラミンを離脱。第16 病日には血清ChE値は124U/Lまで上昇。低酸素脳症による意識障害が遷延し第16病日に気管切開を施行。第18 病日にICUを退室。【考察】ネオスチグミン臭化物によるコリン作動性クリーゼの文献的報告はいまだ無い。縮瞳と血中ChE 低値から有機リン中毒を疑ったが各検査は否定され、今まで文献での報告がないネオスチグミン臭化物によるコリン作動性クリーゼと診断した。コリン作動性クリーゼは原因薬内服開始後2週間以内での発症が多いとされているが、本症例では長期間内服を続けていた症例であった。ChE阻害薬のネオスチグミン臭化物内服によるコリン作動性クリーゼの症例を経験したので臨床経過を中心に報告する。CP68-6 ジスチグミン5mg内服開始後5ヶ月でコリン作動性クリーゼを来した1 例兵庫県立尼崎総合医療センター 救急集中治療科恒光 健史、鈴木 崇生、松本 優、野田 健仁、生田 武蔵、堀田 幸造、四宮 真利子、橋本 由貴、吉永 孝之、佐藤 愼一 症例は81 歳の女性、既往歴に慢性心房細動、大動脈弁狭窄症(大動脈弁置換術後)、気管支喘息、甲状腺機能低下症を有し、来院5ヶ月前から神経因性膀胱に対してジスチグミン5mg を内服していた。来院当日、意識障害を主訴に当院に救急搬送された。来院時バイタルは意識GCS E3V3M6、血圧59/26 mmHg、脈拍40 回/ 分、呼吸数30 回/ 分、SpO2 98 %(酸素10L)、体温33.5 度であり軽度意識障害、徐脈、ショックを認めた。身体所見として下痢、著明な発汗、多量の気道分泌物、縮瞳を認めた。心電図、胸部レントゲン、胸腹部CTでは特記すべき所見を認めなかった。当初は既往歴が不明であったため原因不明の徐脈・ショックとして昇圧薬を投与し経過観察した。第2病日になり検査所見を見直したところコリンエステラーゼの低値(86 U/L)を認めており、また近医よりジスチグミンが処方されていたこと判明したためコリン作動性クリーゼの関与を疑った。第2病日には循環動態は安定し昇圧薬から離脱した。第3病日になり再び血圧低下と呼吸状態の悪化を認めたが、昇圧薬と人工呼吸によるサポートにより改善を認めた。その後は、循環・呼吸状態は安定し、来院時に認められたアセチルコリン過剰と関連する症状は軽快を認めた。 今回ジスチグミン5mg内服開始後5ヶ月でコリン作動性クリーゼを来した1例を経験した。ジスチグミンによるコリン作動性クリーゼは少なからず報告されているもののその存在を疑わなければ診断は困難である。コリン作動性クリーゼについて若干の文献的考察を加えて報告する。