ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-737-CP66-4 妊娠後期に高トリグリセリド血症を伴う重症急性膵炎を発症した1 例石巻赤十字病院榎本 純也、小張 祐介、大邊 寛幸、遠山 昌平、小林 正和、小林 道生、石橋 悟【症例】33歳女性 3 経妊2 経産。妊娠38 週 来院時体重 74.5kg 突然の嘔気、上腹部痛を訴え来院。血清アミラーゼ1023U/L、トリグリセリド(TG)9580mg/dLと高値であり高TG 血症による膵炎を疑い緊急帝王切開を施行。術後、造影CTで重症急性膵炎と診断し入院(入院時予後因子 1 点、造影CT grade 2)。膵炎に対して大量補液、ガベキサートメシル開始、脂質異常症に対して緊急でLDLアフェレーシス施行。吸着器差圧が上昇し血液浄化の継続は困難となり血漿処理量 4055mlの時点で終了。乳び様の廃液は多量だったが、施行前TG 値7995mg/dLから施行後7961mg/dL とほぼ変化なし。尿量の確保が困難となり持続的血液濾過透析(CHDF)開始、インスリン療法(0.064U/kg/h)も併用した。入院17 時間後血漿交換(FFP 32U、血漿処理量分離 3840ml)施行。同様に乳び様の廃液は著明であったが施行前 2276mg/dLから施行後2472mg/dLと変化しなかった。徐々に利尿は確保されるようになり、入院60 時間後TG 439mg/dL まで改善、CHDF 終了、入院6日目に一般病棟へ転棟した。【考察】本例は妊娠を契機に増悪した脂質異常症による急性膵炎と考えられた。高TG血症を伴った急性膵炎は、他の成因のものに比べ合併症が有意に多く重症化しやすい。そのため、速やかにTG 値< 500mg/dL まで低下させることが推奨されている。LDL アフェレーシスや血漿交換が有用であった報告が散見され、本例で施行したもののいずれの血液浄化療法前後でも血中のTG値を低下させることはできなかった。本例では妊娠終了という要素が本例のTG 値低下に対して最も寄与したと考えられた。CP66-5 寒冷凝集素症に対し遠心分離を用いて血漿交換を施行した1 例1)千葉市立青葉病院 救急集中治療科、2)千葉市立青葉病院 血液内科、3)千葉市立青葉病院 臨床検査科(輸血部門)、4)千葉市立青葉病院 臨床工学科齋藤 大輝1)、加藤 真優1)、森田 泰正1)、栢森 健介2)、三科 達三2)、鐘野 勝洋2)、小野田 昌弘2)、横田 朗2)、矢萩 直樹3)、高村 真吾4)現在,日本での血漿交換は血漿分離膜で血漿を分離する方法が最も多く行われている.一方,寒冷凝集素による溶血性貧血の病態では,血液の温度低下により赤血球凝集が生じやすくなるため,通常の血漿分離膜を用いた血漿交換では,脱血後外気温に暴露される事により血液の温度低下をきたし,特に膜部分での凝集により施行困難となる事を多く経験する.今回,我々は悪性リンパ腫に伴う寒冷凝集素症により,制御困難な溶血性貧血を呈している症例に対し,通常の膜型での血漿交換が施行困難となる可能性を考慮し,遠心分離を用いた血漿交換を行った.外気温による血液の温度低下を最小限に抑える工夫を行い,トラブルなく施行出来た.日本国内において遠心分離を用いた血漿交換の報告は少なく,今回の経験をもとに,考察を加え報告する.【症例】72 歳,男性【現病歴】当院受診約1 か月前から感冒様症状出現し,当院受診4 日前に前医受診し入院となった.各種検査で寒冷凝集素陽性の溶血性貧血を合併した悪性リンパ腫が疑われ,溶血性貧血に対しステロイドでの治療が開始されたものの,貧血の進行を抑えられず,当院転院搬送となった.【来院後経過】来院時,ヘモグロビン値は7.6g/dL であったが,赤血球数/ヘマトクリット値はそれぞれ37℃で1時間加温後でも70×104/μL,8.3%と高度の凝集が見られ,直接Coombs試験も陽性であり寒冷凝集素陽性であった.来院翌日,ICU にてSpectra Optia を用いた遠心分離による血漿分離での血漿交換を行った.施行中,電気毛布・携帯用カイロ・輸液加温装置を用いて回路自体に保温を施し,回路内凝固を起こす事なく血漿交換を施行する事が出来た.1 回目の血漿交換後,half-doseでのCHOP 療法を施行し,その後は溶血性貧血の進行なく,血漿交換での治療を終了した.CP66-6 中毒性表皮壊死症(TEN)に対して、血液浄化療法をはじめとする集中治療を行った2 症例藤田保健衛生大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座勝田 賢、中村 智之、山添 泰佳、磯部 恵里、川治 崇泰、前田 隆求、早川 聖子、河田 耕太郎、原 嘉孝、西田 修中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis: TEN)に対して、間歇的高効率血液浄化療法(Sustained high-efficiency dailyhemodiafiltration using a mediator-absorbing membrane: SHEDD-fA)や血漿交換(Plasma exchange: PE)が有効と思われた2 症例を経験したので報告する。【症例1】60 代男性。心原性脳塞栓症に対して外減圧術施行。症候性癲癇のため、カルバマゼピンを服用したところ、発熱を伴う広範な表皮糜爛と水疱を認めた。TENと診断しステロイド静注を開始したが、症状改善なくICU入室。入室後、ステロイド静注に加え、SHEDD-fAを12 時間施行。2日目よりAN69ST を用いた持続的血液濾過(Continuous hemofiltration: CHF)へ移行。3日目より皮膚の痂皮化がみられた。5日目までCHF を継続し、7日目にICU退室。【症例2】60 代女性。関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患を複数合併。抗菌薬によるTEN としてステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量投与を開始したが、症状改善なくICU 入室。SHEDD-fAとPE を開始し、2 日目CHF へ移行。2日目より体幹部の水疱は縮小傾向となり、四肢の水疱は消失した。血液浄化療法が著効していると判断し、3日目に2回目のSHEDD-fAとPEを施行。皮膚症状の更なる改善が得られ、5日目にICU 退室。TENの病態は表皮細胞へのアポトーシス誘導が本態と考えられている。PEではアポトーシスを誘導する高分子量タンパクの除去が期待でき、有用であったとする報告がある。我々はSHEDD-fAが強力なメディエーター除去能を持つことを報告している。今回我々はSHEDD-fA単独、SHEDD-fAとPE併用した2 例を経験し良好な転帰を得た。これらの背景には、アポトーシスを誘導するメディエーターや高分子量タンパクが、血液浄化療法により除去されたことが関与している可能性がある。今後、更なる症例の集積や各種メディエーターの血中濃度を測定することで、本治療の有用性を裏付ける必要があると考える。