ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-735-CP65-4 多発嚢胞腎に合併した急性大動脈解離の2 症例1)新東京病院 集中治療部、2)公立学校共済組合関東中央病院外科、3)水戸ブレインハートセンター心臓血管外科、4)順天堂大学医学部麻酔ペインクリニック科松尾 耕一1)、原口 剛1)、望月 大輔2)、藤崎 浩行3)、三高 千惠子4)【症例1】37歳女性成人型常染色体優性遺伝多発嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney : ADPKD)と診断されており、また高血圧症に対し内服加療を行っていた。母親および母方の祖父が多発嚢胞腎、父親が急性大動脈解離で死亡。胸痛を主訴に近医受診し、CT上でStanford A型急性大動脈解離を指摘され、手術目的に当院転院。同日、大動脈基部および弓部全置換術を施行した。【症例2】65歳男性医療機関への定期受診や健診歴なし。心血管疾患や、腎疾患に関する家族歴不明。突然発症の呼吸困難で近医を受診し、CT上でStanford A型急性大動脈解離と診断。手術目的に当院転院となった。肝および腎に嚢胞が多発し、多発嚢胞腎が背景に存在していると考えられた。同日、部分弓部置換術を施行した。【考察】多発嚢胞腎は、両腎に多数の嚢胞をきたす遺伝性疾患であり、ADPKDの頻度が最も多い。一般に40歳頃から糸球体濾過値が低下し始めるとされ、末期腎不全患者の8~10%が多発嚢胞腎によるものとされる。腎臓以外の臓器障害も合併することが多く、嚢胞は肝臓や膵臓、脾臓、子宮や睾丸などにも生じることがある。脳動脈瘤の合併とともに、頭蓋内出血をきたすことも多い。心血管疾患として高血圧の合併が多いが、頻度は多くないものの大動脈解離症例も散見される。多発嚢胞腎患者の胸背部痛では大動脈解離を想起する必要があるとともに、大動脈解離をきたした症例では血圧高値例が多いとの報告もあり、多発嚢胞腎患者での厳密な血圧管理が重要であると考えられた。CP65-5 解離性大動脈瘤A型急性期における降圧療法の成績石川県立中央病院 心臓血管外科坪田 誠、池田 知歌子【はじめに】解離性大動脈瘤A型の急性期に厳重な降圧療法を行った症例の検討を行った。【対象】対象は2007年3月から2015 年7月までに、当院に救急搬送されA 型解離と診断された症例のうち、緊急手術準備中の死亡例と不可逆的な脳障害や臓器虚血・老衰などにより積極的治療が行われなかった症例を除く60 例である。急性期に循環状態が回復して厳重な降圧療法を行った52 例と、循環不全が継続し緊急手術を行った8 例を比較検討した。【方法】降圧の方法は、A型解離と診断後ただちに経静脈的降圧薬を急速に投与して、収縮期圧を100mmHg以下に抑え込み、その後内服降圧薬等に乗り換え、収縮期圧110mmHg以下を目標に管理した。CTで経過を観察し、上行大動脈に偽腔が残存する症例では、基本的に発症6週間以上経過後に待機手術を行った。【結果】降圧治療群の9例(17.9%)が死亡した。内訳は、破裂5例、臓器虚血4例であった。緊急手術群では死亡は1例(12.5%)で、心不全が原因であった。待機手術施行は15例(28.8%)で、死亡例はなし。うち6例は上行大動脈置換術、9例は上行弓部大動脈置換術であった。3 例に冠動脈バイパス術、1例に三尖弁輪形成術を併施した。発症時緊急手術の内容は、上行大動脈置換術6 例、上行弓部大動脈置換術2 例、うち冠動脈バイパス術併施が1 例であった。【考察】解離性大動脈瘤A 型急性期には手術治療が優先されるがその危険性は高い。厳重な降圧療法により手術を回避したり、手術の危険性を減らし質を向上させることができた。その一方で、降圧治療中に死亡する症例も認められている。治療成績向上のためには、より綿密な病態の把握・検討と治療法・手術時期の選択が望まれる。【結語】解離性大動脈瘤A型の急性期の厳重な降圧療法は、症例により有力な治療手段となり得ると考えられた。CP65-6 膝窩動脈瘤に合併した急性下肢動脈閉塞症に対し血管内治療で救肢し二期的に外科的根治術を施行した一例菊名記念病院 循環器内科細川 哲、本江 純子、大西 克実、椎貝 勝、武藤 光範膝窩動脈瘤に合併した急性下肢動脈閉塞症に対し,血管内治療で救肢し二期的に外科的根治術を施行し有効であった症例を経験したため報告する.症例は84 歳男性.左下肢の冷感と安静時疼痛を自覚し,持続するため翌日に当院に搬送された.造影CTで左右膝窩動脈瘤と左浅大腿動脈近位部からの完全閉塞を認め,左下肢急性動脈閉塞症と診断した.膝窩動脈瘤があることや末梢の血流が確認できないことから,動脈塞栓除去用カテーテルによる血栓除去やバイパス術が困難であり,血管内治療を行った.左大腿動脈より順行性にガイドカテーテルを挿入し,左浅大腿動脈から膝窩動脈遠位部までの血栓吸引と腓骨動脈のバルーン拡張を行い,かろうじて足底動脈までの血流を得た.そのまま膝窩動脈にカテーテルを留置し,ウロキナーゼ持続動注による血栓溶解療法を施行した.第3病日に再度下肢動脈造影を行い膝窩動脈以下の閉塞を認めたため,再度血管内治療を施行した.順行性に左大腿動脈からガイドカテーテルを挿入し,ガイドワイヤーを腓骨動脈末梢まで通過させ,腓骨動脈末梢から膝窩動脈までバルーンで拡張した.後脛骨動脈近位部からの慢性完全閉塞病変も存在し,エコーガイド下でのガイドワイヤーの通過を試みたが末梢の閉塞病変を通過せず,通過部までバルーンで拡張した.膝窩動脈に金属ステント5.0 × 60mm を留置し,腓骨動脈近位部の解離に対して薬剤溶出性ステント4.0 ×38mm を留置したところ,足底動脈までの良好な血流を得た.根治術のため第16 病日に転院し,左下肢に対し膝窩動脈瘤空置+ 遠位バイパス(大腿- 腓骨動脈)術を施行され,経過は良好である.一般に急性下肢動脈閉塞症は外科的治療が有効であるが,本症例のように急性期の外科的治療が困難である場合,血管内治療を急性期に行う二期的治療が有効であると考えられる.