ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-729-CP62-4 危機的弛緩出血の一時的な止血にバソプレシン持続静注が奏効した一例独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 麻酔科佐藤 慧、松林 麻里、入江 駿、山崎 治幸、尾崎 由佳危機的弛緩出血に対し,バソプレシン持続静注により出血量を制御し救命手術まで無事管理できた一例を報告する。27 歳,妊娠41週分娩停止のため緊急帝王切開となり胎児・胎盤は問題なく娩出したが,子宮収縮不良を認め,オキシトシン,PGF2 αを投与したが著明な改善は得られなかった。閉腹後も出血は持続してHb4.5g/dl,フィブリノゲン90mg/dl,Shock Index1.8となったため,弛緩出血,DICと判断して輸血,メシル酸ガベキサートを開始した。同時に昇圧と止血を期待してバソプレシン(2~10U/h)の持続静注を開始したところ血行動態は安定しHb 値も下げ止まったため子宮動脈塞栓術のためアンギオ室に移送可能な状態となった。血管造影を考慮して過度の血管収縮を避けるため事前にバソプレシンは中止しドパミンに切り替え,両側子宮動脈上行枝の塞栓術を行った。しかしIVR 終了後に突然の出血と血圧低下を認めたため,緊急で全身麻酔に移行,開腹子宮全摘となった。最終的に出血量5668ml に対してRCC18 単位・FFP27 単位・PC10単位を使用したが,止血が得られ無事救命しえた。バソプレシンは子宮収縮目的に局注が行われることはあるが,危機的弛緩出血に対して静注を応用した報告はない。本症例では子宮頸部にはextravasationが確認できなかったため,子宮体部を貫流する上行枝のみを塞栓した。そのため動脈血流が子宮体部から頸部にシフトして破綻出血をもたらした可能性が手術所見から示唆された。またバソプレシン中止から再出血までの時間が90分程度であったため,半減期から考えてIVR終了時には正にバソプレシンの血管収縮効果が消失し,大量出血に拍車をかけた可能性もある。弛緩出血に対してバソプレシン持続静注は短期的な止血策として有効ではあるが,投与中止のタイミングには十分注意が必要である。CP62-5 出血量2000ml以上の帝王切開術症例の麻酔管理についての後方視的検討独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 麻酔科尾崎 由佳、小林 佳郎2010 年に発表された産科危機的出血への対応ガイドラインで、帝王切開時の輸血準備開始の目安として出血量2000ml以上またはSI1 以上と掲げられている。しかし、必ずしもこれらの条件のみで輸血が実施されるわけではない。今回、2010 年1 月~2015 年7月までに当院で実施された帝王切開術で、出血量が2000ml以上の症例を検討し、輸血実施に至る様々な背景因子と判断基準を比較した。前記期間中に帝王切開術は1098例に行われ、31例で2000ml以上の出血を認めた。診断別症例数は、胎盤位置異常が14例と最も多く、予定・緊急手術別では10 例と21 例で、全身麻酔7 例、区域麻酔24 例であった。31 例中13例に対して、産婦人科医により産科的DICの診断もしくは疑いで治療が開始されたが、術後2 日目までに改善し、治療は中止された。また、31 例中14例で輸血が行われ、輸血開始時のSIは0.9であった。次に、31 例を輸血群と非輸血群に分け、出血量、術前・術後ヘモグロビン値、血小板値、凝固系データ、輸液総量について比較した。統計学的検討にはt検定を用いた。結果、出血量が2739、2299(ml)、また、総輸液量が32.3、20.4(ml/kg)とそれぞれ輸血群で有意に多かった。更に、胎盤娩出後で通常、止血操作を行っている手術開始後15分までの輸液量は、802、570(ml)と輸血群で有意に多かった。この他には有意差はなかった。輸血実施の判断はSIではなく、手術開始後15分の輸液量と関連があったことから、麻酔科医は、出血や止血の程度を見ながら輸液速度を調整し、輸液速度が速い症例に輸血の判断を下していると推測できる。帝王切開時は、瞬時の判断が求められ、間接看護師から報告される出血量やSIだけで輸血を判断するのは困難であるため、循環動態を維持するための輸液速度を基準とするのが最良な判断と考える。CP62-6 周産期心筋症管理にみる、ICU常駐医の存在がもたらす変化聖隷浜松病院 救急科土手 尚、植田 秀樹、峯田 健司、渥美 生弘、田中 茂【はじめに】聖隷浜松病院は病床総数744 床(ICU+CCU 22床)、救命救急センター及び総合周産期母子医療センターを有する第三次救急医療機関である。2015 年6 月より救急科医師をICU常駐医として配置し他科の入室症例についても呼吸循環管理のみならず栄養、リハビリ、倫理面など多方向からの介入を開始した【症例】31歳女性、初産婦。妊娠36週1日で腹痛を自覚、妊娠高血圧腎症を発症しており妊娠分娩管理のため当院搬送となった。来院時に著明な肺水腫と呼吸苦を伴っていたため緊急帝王切開の方針となり、術後挿管管理のままICUへ入室しICU常駐医による管理を開始した。【経過】ICU入室後、肺水腫に加えて著明な心機能低下と心拡大を認めた。周産期心筋症による急性心不全を疑い治療を開始した。ICU常駐医とICUスタッフ(看護師、臨床工学士など)による全身管理に加え、産婦人科医師及び周産期病棟スタッフ(看護師、助産師、薬剤師など)による母子の産褥期管理、循環器科医師による心不全治療を行い第2 病日に抜管、ICU 病室内で母子の面会を行った。第4 病日にICU を退室した。以降心不全治療を継続し、第34病日に軽快退院した。【考察】ハイリスク妊産婦においては臓器不全や出血、感染などの病態に加え、妊産婦特有の生理学的変化や産褥期母子のケアなど対処すべき問題は多岐にわたる。ICU入室を要するハイリスク妊産婦の全身管理については従来産婦人科医師を中心に呼吸器内科、循環器科、神経内科、内分泌内科などが併診する体制をとっていたが、今回周産期心筋症を発症したハイリスク妊産婦の集中治療管理をICU常駐医を中心として行った一例を経験した。ICU常駐医の介入により従来各科混合で行っていたICU管理が一本化され、各専門科及び多職種との有機的な連携がなされたことが良好な転帰につながったと考えられた。本症例を通じ、ICU常駐医の存在が当院ICUにもたらした「変化」を中心に紹介する。