ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-728-CP62-1 子宮型羊水塞栓により心停止をきたし、産褥早期に低Na血症にて発症したSheehan症候群の1 例大阪市立総合医療センター 総合周産期母子医療センター 産科岡田 麻美、田中 和東、鹿野 理恵子、由井 淳子、松木 厚、三田 育子、梶谷 耕二、中村 博昭、中本 收【背景】Sheehan症候群は、分娩時大量出血により下垂体壊死および汎下垂体前葉機能低下を来す疾患である。多くは分娩から数年経過した後に無月経や月経不順を主訴に診断され、分娩早期の発症は稀とされていた。今回、子宮型羊水塞栓症による大量出血・心停止に対して子宮全摘を行い、術後に脳梗塞を来し、同時期に低Na血症によって発症したSheehan症候群の1例を経験したので報告する。【症例】症例は36歳女性。羊水過多、前置胎盤にて外来管理中であった。妊娠34週時に腹痛と性器出血にて救急受診。常位胎盤早期剥離の診断で超緊急帝王切開術を行った。帝王切開終了直後より非凝固性の出血が持続し、子宮底輪状マッサージを行ったところ膣から大出血を認め、心停止に至ったためCPRを開始した。子宮型羊水塞栓と診断し直ちに子宮全摘術を行った。術後も貧血進行を認めたため翌日に試験開腹術を施行したところ、腹腔内に大量の凝塊血と静脈性出血を認めた。入院時からの総出血量は16830ml、輸血量はRBC64 単位、FFP66 単位、PC60 単位であった。第4 病日に抜管し産科病棟へ転棟したが、第6 病日に血管攣縮による脳梗塞を発症した。また同時期より低Na 血症が発症。下垂体ホルモンは低値を示し、第7 病日に撮影した造影MRI画像では下垂体辺縁部のみが造影され、内部の造影効果を認めないhook-shaped enhancementを呈し、Sheehan症候群と診断。Na補充とステロイド補充により電解質は正常化した。【結語】今回、子宮型羊水塞栓症による大量出血に伴い早期にSheehan症候群をきたした1 例を経験した。本症例では同時に血管攣縮による脳梗塞も発症したため、輸液量の管理が重要であった。早期にSheehan 症候群と診断しステロイド補充療法を開始できたことにより良好な転機を得られたと思われる。ポスターCP 62 産婦人科 2月14日(日) 9:30~10:30 CPポスター会場CP62-2 妊娠中に特発性肺動脈性肺高血圧症が顕在化し救命できなかった1 例1)福井大学 医学部 器官制御医学講座 麻酔・蘇生学領域、2)福井大学医学部附属病院 集中治療部松木 悠佳1)、佐上 佑介2)、小畑 友里江2)、斉藤 律子2)、藤林 哲男2)、重見 研司1)[はじめに]特発性肺動脈性肺高血圧症は、妊娠中に増悪する可能性が高く、周産期死亡率が高いため妊娠は原則禁忌である。しかし妊娠前に肺高血圧症と診断されておらず、妊娠経過中に症状が出現増悪し、初めて診断される例もある。今回我々は、妊娠中に特発性肺動脈性肺高血圧症を発症し、集学的治療を行ったが救命できなかった症例を経験したので報告する。[症例]39歳女性、妊娠16 週。これまで既往疾患はなく、日常生活も特に制限なく過ごしていた。妊娠12 週頃から軽い動作でも息切れがあった。近医産婦人科に腹痛、呼吸困難で受診し、SpO2 74%であり、原因精査・加療のため当院に搬送された。当院初診時、NYHA心機能分IV度、心エコー検査で右心室拡大、左心室虚脱所見を認め、造影CTでは肺塞栓や肺野異常陰影はなかった。心臓カテーテル検査で、肺動脈圧77/39 mmHg と著明な上昇を認め、肺動脈性肺高血圧症と診断した。ICU 入室時、血圧86/58 mmHg と低血圧を認め、カテコラミン持続投与を行った。また気管挿管による人工呼吸管理とし、肺血管抵抗減少目的でPGI2持続投与とNO吸入を開始した。しかし低酸素血症や心拍出量低下が持続、これ以上の妊娠継続は困難であると判断し、第2病日に帝王切開術にて児を摘出した。その後も循環動態不安定は継続し心肺停止を来たしたため、V-A ECMOを導入し、ホスホジエステラーゼ-5阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬の追加投与を行い、肺高血圧症に対する治療を継続した。V-A ECMO導入後、一時的に体血圧は安定したが、肺高血圧症は治療に反応せずV-A ECMO 離脱困難となり第11 病日に死亡した。[考察]循環器系の妊娠による生理学的変化は、肺高血圧症の血行動態にも影響する。特発性肺動脈性肺高血圧症合併妊娠の集学的治療について、文献的考察を加え報告する。CP62-3 発症時期の異なる周産期心筋症の2 例小牧市民病院安本 高規【はじめに】周産期心筋症は妊娠に伴う心不全の一因である。発病率は約20000分娩に1 例ともいわれており稀な疾患である。発症時期の異なる周産期心筋症の二例を経験したので報告する。【症例1】35 歳女性、妊娠37週、妊娠高血圧にて入院した。入院後咳と呼吸苦出現しSpO2 80%台(room air)、心機能低下、肺鬱血あり、NPPV装着となり、全身麻酔下に緊急帝王切開となった。術後ICU にて挿管管理となりカルぺリチド、ニトログリセリンにて治療施行、心不全改善し術後1日目に抜管、13 日目に退院となった。【症例2】40 歳女性、妊娠40 週、妊娠高血圧、子癇前症にて硬膜外麻酔にて緊急帝王切開施行された。術前SpO2 96 %(RA)であった。術中SpO2 90 %(RA)前後に低下しO2 開始した。術当日夜にはSpO2 98 %(RA)に回復し、術後6 日目退院した。退院後呼吸苦あり救急外来受診した。SpO2 84 %(RA)、心機能低下、肺鬱血あり入院となった。入院後NPPV 装着、ニトログリセリン、カルぺリチド、抗プロラクチン療法施行した。治療施行後心不全改善し術後24日目退院した。【結語】周産期心筋症は重症例では母体の死亡にもつながり、早期発見、早期治療が大切である。妊娠後期から産褥期にかけての咳や呼吸困難により周産期心筋症の可能性を疑うことで予後の向上につながることが期待される。