ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
727/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている727ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-725-CP60-4 Plastic bronchitisの関与が疑われる気道閉塞が生じ換気困難となったFontan循環症例国立循環器病研究センター 麻酔科中森 裕毅、金丸 栄樹、吉河 惇、森島 久仁子、前田 琢磨、亀井 政孝、吉谷 健司、大西 佳彦【症例】8歳男児。Right isomerism heart、僧帽弁閉鎖、両大血管右室起始症に対し、外科的介入が実施され、1 歳5 か月時にFontan 手術に到達した。完全血管輪、両側気管気管支も合併していたがこれらは経過観察となっていた。数日前より湿性咳嗽、粘性痰が出現し上気道炎として経過観察されていたが、チアノーゼが出現したため気管内挿管されたうえで当院へ転送された。初期対応中よりバッグによる換気が困難になり、経皮的酸素飽和度が40%台まで低下し徐脈となったため、胸骨圧迫を開始し、アドレナリン0.3mg を投与した。徐々に換気は可能となったが、陽圧換気の過程で気胸を生じていた。集中治療室入室後に長径2cmのcast 様の痰が吸引され、plastic bronchitis(PB)の関与が疑われた。【考察】本症例では、完全血管輪による圧排での一部の気管の狭小化、両側気管気管支のため挿管後の両側上葉の低換気、先行感染による気管支攣縮やPB の増悪により換気困難になったと考えられる。PBは炎症性変化やリンパ灌流障害に伴うとされるFontan循環の合併症の一つであり、末梢気道閉塞の際は、鑑別にいれ対応すべきである。気道内圧を高めた陽圧換気のみでは閉塞した気管支においてはcast を末梢側に押し込みさらに気道を閉塞させることに留意が必要である。本症例では開通していた一部の気管支および肺胞に過剰圧がかかることで気胸を生じ、酸素化への影響のみならずFontan循環の破綻も招いたと思われる。気管支鏡による選択的な気管内吸引や去痰薬投与、tPA吸入が換気改善に奏功する可能性がある。本症例では心肺蘇生の際に静注されたアドレナリンにより、末梢気道が拡張し閉塞が解除されたため救命可能であった。CP60-5 気管挿管と抜管に難渋したMorquio症候群の1 例広島大学病院 麻酔科加藤 貴大、原木 俊明、讃岐 美智義、濱田 宏、河本 昌志Morquio症候群はムコ多糖症の1型である。今回、Morquio症候群患者で、気管挿管にも抜管にも難渋した症例を経験した。【症例】20歳代、男性。身長98cm、体重21.5kg。環軸椎亜脱臼に対し、頚椎後方固定術が予定された。ムコ多糖沈着による咽喉頭部狭窄のため、術前より非侵襲的陽圧換気療法(nasal BiPAP)が導入されていた。さらに気管が声門直下で右方へ偏位していたため気道確保困難と判断し、麻酔導入は鎮静下に自発呼吸を温存して行った。フェンタニルとデクスメデトミジンの投与で適度な鎮静を得た後に、エアウェイスコープRに加えて気管支鏡による気管挿管を試みたが、喉頭蓋の視認ができなかった。そこで、声門上器具(i-gelR)を挿入し一旦気道を確保した後、i-gelR 経由で気管支鏡下挿管を試みたが気管チューブの挿入が困難であった。最終的に、気管支鏡視認下にガムエラスティックブジー(GEB)ガイド下挿管を行い気管挿管に成功した。この間、動脈血酸素飽和度(SpO2)の高度低下は生じなかった。手術は問題なく施行され、術後は気管挿管のまま外科系集中治療室へ入室した。術後の気道評価で両側披裂部に腫脹を認めたことと気管挿管が困難であったこと、頸部手術後であることから抜管は慎重に行うこととし、術後4 日目に計画した。披裂部の腫脹に変化はなかったため、再挿管に備えtube exchanger を留置し、上気道のスペースを維持するためnasal BiPAPを装着した状態で抜管した。抜管後、一時的にSpO2が低下したが短時間で回復した。Tube exchangerは抜管後気道狭窄のないことを確認し抜去した。以降はSpO2の低下はなく経過した。【結論】ムコ多糖症は気道へのムコ多糖の沈着により気道管理が困難となる。本症例では気管挿管困難に対し、i-gelRを通してGEB ガイド下に気管挿管を行い、抜管時にはnasalBiPAPで上気道のスペースを維持することで、トラブルなく気道管理を行うことが可能であった。CP60-6 舌根部嚢胞の乳児2 症例の周術期管理愛媛大学 医学部 麻酔・周術期学武智 健一、小西 周、西原 佑、菊池 幸太郎、藤井 園子、萬家 俊博【緒言】舌根部嚢胞は乳児期の喘鳴と呼吸不全の稀な原因であり、周術期の慎重な気道管理を要する。乳児の舌根部嚢胞2症例の周術期管理を報告する。【症例1】1ヶ月の女児が、吸気性喘鳴と陥没呼吸から舌根部嚢胞を診断され、経口腔的嚢胞摘出術を計画された。CTで舌根部正中に8.5mmの嚢胞を認め、喉頭ファイバー(LSF)で吸気時に喉頭蓋の引き込みを認めた。十分な酸素化の後、チアミラールとロクロニウムで麻酔導入し、エアウエイスコープ(AWS)を用いて気管挿管した。手術は問題なく施行され、術後に喉頭周囲の腫脹がないことをLSFで確認し抜管した。しかし腫脹による術後気道閉塞の危険があると考え集中治療室(ICU)で経過観察をしたところ、抜管から約1 時間後に陥没呼吸が出現し、LSFで喉頭蓋の腫脹を認めため再挿管となった。喉頭の腫脹は2週間で改善し、患者は抜管され術後16日目にICUを退室し、術後23日問題なく退院した。【症例2】1ヶ月の男児が、陥没呼吸からLSFで舌根部嚢胞を指摘された。CT撮影時にトリクロホスで鎮静を行ったところ、陥没呼吸が増悪し経皮的酸素飽和度低下が頻回となり、緊急経口腔的嚢胞開窓術を計画された。CT 上舌根部嚢胞は最大径22mmで気道をほぼ閉塞していた。十分な酸素化の後、セボフルランで麻酔導入しマスク換気が可能であると確認した後にロクロニウムを投与し、AWSを用いて気管挿管した。手術は問題なく施行され、術後は新生児ICUで人工呼吸を継続した。喉頭周囲の腫脹は術後9 日で改善し、患者は抜管され、術後18 日問題なく退院した。【考察】乳児期の舌根部嚢胞は換気挿管困難の危険を伴う。AWS は、マスク換気可能な頭位を維持しての挿管が容易であり、乳児期の舌根部嚢胞の気道確保に有効であった。両症例とも術後の喉頭腫脹を認めた。乳児期の舌根部嚢胞術後は気道狭窄の危険に配慮した対応を要する。