ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
725/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている725ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-723-CP59-4 熱傷において手術介入が遅れることの影響神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター朱 祐珍、瀬尾 龍太郎、有吉 孝一【背景】熱傷患者において、早期手術が死亡率の低下や在院日数の短縮に寄与するという報告もあるが、熱傷早期はバイタルが不安定なことも多く、熱傷範囲や深度が不明な時期に手術をすることは無用な侵襲につながるという意見もあり、適切な手術時期については議論がある。【目的】手術介入が遅れることで死亡率や感染症合併率に影響するかを検討する。【方法】2011 年7 月から2015年7月までに当院に入院した18歳以上のTBSA>15%の広範囲重症熱傷患者を対象とし、手術介入をせずにいた日数、感染症合併率、菌血症発症率、死亡率、在院日数などを後方視的に検討した。入院時点で治療撤退となった患者や、3日以内の死亡や転院は除外した。【結果】患者数は24人、平均年齢は50.1歳、TBSAは平均31.4%であった。手術介入をせずにいた日数は平均14日であり、12日以内をA 群(13人)、13日以上をB 群(11 人)とするとA 群で有意に感染症合併率が低かった(p=0.047)。菌血症発症率はA群で少ない傾向にあったが、有意差はなかった。死亡率、在院日数には有意差は見られなかった。【考察】当院に入院した広範囲熱傷患者では、12 日以内に手術介入をした群で有意に感染症合併率が減少し、菌血症発症率も減少する傾向にあった。12日以内に手術介入をすることで感染症の合併を防ぎ菌血症の発症を減らすことができる可能性がある。今後さらに症例数を増やし、検討したい。CP59-5 重症熱傷後の白血球減少と凝固異常独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 救急科大須賀 章倫【目的】重症熱傷受傷後に、白血球の低下と凝固異常が見られることがしばしばある。凝固異常に関する報告はあるが、白血球の動態に関する報告は見られない。重症熱傷後に起こる白血球減少と凝固異常の経過を観察し、予後を示唆しうるかを検討した。【方法】2012 年1月1日から2014年12月31日の間に当院熱傷センターに搬入された20%以上の広範囲熱傷患者を対象とした後方視的観察研究である。電子カルテから受傷後14 日目までの血算、凝固マーカーおよびCRP の値を抽出した。第一に全患者のデータをプロットし、自然経過を観察した。次により広範囲熱傷患者(熱傷面積31%以上)と比較的範囲の狭い熱傷患者(熱傷面積 20-30%)とを比較し、熱傷面積による影響を解析した。最後に生存群と死亡群とにわけ、予後不良を示唆する検査結果を検討した。【結果】広範囲熱傷では、受傷直後の白血球数は正常値より高値であるが、すぐに低下し3 日目あたりを最低値として再び上昇し、12000/uL あたりで収束した。血小板も同様に3 日目を最低値とするが、その後上昇し続けた。熱傷面積が与える影響として、来院時のFDP高値、および期間を通じてのCRP高値が見られた。生存群と死亡群との比較では、3日目の白血球の低下が著明であり、血小板は低下した後改善が見られなかった。PT-INR, APTTは期間を通じて延長していた。CRPは2群間で優位差を認めなかった。【結論】広範囲熱傷後の白血球低下を伴う凝固以上は予後不良の因子であると考えられる。CP59-6 灯油による化学熱傷の1 例独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター宗宮 伸弥、小田 裕太、藤野 光洋、狩野 謙一、浜崎 幹久、岡田 信長、大木 伸吾、藤井 雅士、竹下 淳、志馬 伸朗 症例は特に既往歴のない25歳男性。自宅で灯油を誤ってかぶり、シャワーを浴びたのみで前医を受診。灯油による化学熱傷の診断で、集中治療を要するため受傷6 時間後当院紹介搬送となった。来院時E4V5M6, BT37.9℃, BP140/88mmHg, HR111/ 分SpO2=93%(空気呼吸下), RR24/分と安定していた。熱傷面積はII度BSA で背部全面および両上肢伸側、両大腿後面、右手背で合計30%(25% SDB, 5%DDB)であった。Burn index は約13% で重症熱傷と考えられた。Baxterの公式に則り大量輸液を施行し、尿量・血液濃縮推移を参考に、循環の安定に努めた。シャワー洗浄+ ジメチルイソプロピルアズレン軟膏塗布にて創部管理し、清潔保持、乾燥防止に努めた。創部浸出液多く、悪臭増強あり、Day 5 の創部およびDay7 の血液培養よりメチシリン感受性黄色ブドウ球菌検出され、セファゾリンにて加療した。アルブミン喪失強く、Nutrition support teamと共に摂取エネルギー増加を図った。創部治癒は良好で植皮は必要とせず、全身性合併症も認めず、day 4にICU退室、day 22にHCU退室した。 灯油による化学熱傷の病態は、急性刺激性接触皮膚炎であり、脂肪族化合物による脱脂作用、蛋白変性作用が起こり、皮膚粘膜を刺激し、腐食を起こすと言われている。 化学熱傷は一般に、組織内部に浸透した化学物質が不活化されるまで組織破壊が進行するため初期には損傷深達度の判定が困難である。灯油による化学熱傷に関する報告は多くないが、受傷面積が広く、接触時間が長いため経皮吸収され肝障害を来した報告例もある。灯油による化学熱傷に対する処置、治療に関して文献的考察も含め報告する。