ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-711-CP53-4 若年女性にみられた非腫瘍随伴性抗NMDA受容体抗体脳炎の1 症例大阪医科大学附属病院 集中治療部下山 雄一郎、梅垣 修、大地 史広、服部 一生、三原 良介、今川 憲太郎、門野 紀子、日外 知行【はじめに】抗NMDA受容体抗体脳炎は卵巣奇形腫に随伴することが多い傍腫瘍性脳炎であり、NMDA受容体の細胞外成分に対する抗体を有する自己免疫性脳炎である。【症例】患者は20歳女性、生来健康であったが、夜に奇声を発する、母親に暴力をふるうなどの行動が出現したため当院精神科に医療保護入院となった。入院時38度の発熱を認めた。頭部CTで左側頭葉のlowdensity、頭部単純MRIで左裂脳症、脳波で徐波を認めた。腰椎穿刺で髄液中の白血球の上昇を認め、脳炎の診断でステロイド、アシクロビルの投与を開始した。非定型精神病の合併を考慮し、オランザピンを投与した。その後、脳血流シンチ上、脳炎は否定的であることに加え、第7病日以降に中枢性低換気、口部ジスキネジア、手指のアテトーゼ様運動、けいれんが出現したため抗NMDA受容体抗体脳炎と診断した。抗NMDA受容体抗体は陰性であった。骨盤MRI上、卵巣腫瘍を認めなかった。治療は5回の免疫吸着療法を行い、徐々に意識が回復した。さらにステロイドパルス療法と免疫グロブリン療法を併用した。第18病日に集中治療室を退室し、第75 病日に退院した。【考察】抗NMDA受容体抗体脳炎は、前駆期、精神病期、無反応期、不随意運動期、緩徐回復期という臨床症候を経る。本症例の臨床症候は典型的であり、診断は容易であった。5回の免疫療法を主体とした治療で徐々に意識が回復し、腫瘍非合併例としては典型的な治療経過であった。【結語】若年女性に発症した非腫瘍随伴性抗NMDA受容体抗体脳炎の症例を経験した。CP53-5 縦隔奇形腫を合併した抗NMDA受容体脳炎の1 例1)沖縄県立中部病院 集中治療部、2)沖縄徳洲会 中部徳洲会病院 内科、3)沖縄県立中部病院 外科毛利 英之1)、中山 泉1)、小山 淳2)、村上 隆啓3)症例は20歳女性。初診2 日前から頭痛・嘔吐が出現し、入院当日に発熱、全身性強直性間代痙攣を認めて救急搬送となった。気管挿管後に脳炎・髄膜炎として治療を開始したが髄液検査では単核球優位の細胞数の増多を認め、グラム染色では菌体を認めなかった。細菌性髄膜炎は否定的と考え無菌性髄膜炎の治療を開始した。翌日には見当識障害は残っていたが痙攣の軽快を認めたため抜管となった。頭部MRI(T2WI, FLAIR)では両側の海馬に高信号を認め、胸部CT では大動脈弓部外則に石灰化を伴う直径2cm大の腫瘤を認めたため、手術目的に当院に紹介となった。当院入院後から見当識障害・短期記憶障害が出現し、徐々に増悪傾向となった。病歴、画像所見などから抗NMDA受容体脳炎の可能性が高いと判断して入院4日目からステロイドパルス療法を3日間施行したが、入院7 日目に意識レベルの低下、酸素化の悪化を認めたためICU に入室して気管挿管を行った。同日から免疫グロブリン療法を5日間行ったが症状の改善はみられず、入院12 日目に胸腔鏡下で前縦隔の腫瘤を摘出した。入院時の髄液検査ではHSV/PCRが陰性、抗NMDA受容体抗体が陽性(抗体価20倍)、前縦隔腫瘤の病理結果は成熟型奇形腫と判明し、診断が確定した。腫瘤摘出後にも口部ジスキネジアや上下肢のジストニアなどの不随意運動、あるいは複雑部分発作などの症状が強くみられたため血漿交換を行った。さらにステロイドパルスや免疫グロブリン療法も追加したが改善せず、痙攣との鑑別が困難な不随意運動を抑制するために複数の鎮静薬や抗てんかん薬を現在も必要としている状態である。抗NMDA受容体脳炎は卵巣奇形腫を合併することが多いが稀に卵巣以外に腫瘍がみつかることがある。今回我々は前縦隔に奇形腫を合併した抗NMDA受容体脳炎を経験したので文献的考察を加えて報告する。CP53-6 集中治療室で経験する代謝性脳症における不随意運動の検討藤田保健衛生大学病院 救急総合内科都築 誠一郎、植西 憲達、多和田 哲郎、日比野 将也、神宮司 成弘、田口 瑞希、近藤 司集中治療室では高浸透圧性昏睡や低血糖脳症、熱中症、電解質による意識障害など様々な代謝性脳症に遭遇する。また集中治療室で頻回に使用される鎮静薬による薬剤性の神経障害も経験することがある。これらの代謝性脳症では様々な神経学的所見を呈することが報告されており、その出現により診断や治療に悩まされることがある。重症で画像検査のための移動もできない場合は身体所見により診断を行う必要がある。そのため集中治療を行う上でこれらに特徴的な症候を知っておく必要がある。今回われわれは高血糖高浸透圧症候群や熱中症、薬剤に伴う不随意運動を呈した症例を経験したので、観察した不随意運動を動画を供覧し紹介するとともに、集中治療室で遭遇する頻度の高い代謝性脳症でみられる不随意運動について考察する。