ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-670-CP33-1 救命不可能であった犬咬傷によるCapnocytophaga canimorsus重症敗血症の一例1)仙台市立病院 外科、2)仙台市立病院 救急科小笠原 紀信1)、安藤 幸吉2)、村田 祐二2)【はじめに】Capnocytophaga.canimorsusは犬・猫の口腔内常在菌であり、咬傷による感染症の起因菌となる。本菌による敗血症は、一般的に免疫低下例(糖尿病、脾摘後、アルコール依存症、腎不全など)で重症化のリスクが高く、重症化すると死亡率が高く問題となる。今回我々は、犬咬傷をきっかけに健常者に発症したC.canimorsus 敗血症で、急速に病状が進行し救命できなかった症例を経験したので文献的考察を含め報告する。【症例】54 歳男性。飼い犬に左肘窩を咬まれ受傷した。受傷2 日後から38℃後半の発熱を認めたが、解熱鎮痛薬を内服しながら仕事をしていた。受傷4日後、呼吸苦とチアノーゼが出現し当院救急外来を受診した。四肢(特に患肢)は蒼白で冷感著明。血液ガス分析でpH 7.355, Lac 7.27mmol/lと著名な乳酸値高値を認めた。精査でその他病変明らかでなく、犬咬傷による敗血症性ショックの診断となった。抗菌薬、カテコールアミン投与、気管内挿管、人工呼吸器管理、中心静脈カテーテル挿入、持続濾過透析・エンドトキシン吸着を導入し、集中治療室で集学的治療を行うも全身状態改善なく、来院後約7時間、多臓器不全で死亡した。血液培養の結果からCapnocytophaga.canimorsusが起因菌と判明した。【考察】Capnocytophaga.canimorsus の敗血症は健常者での重症化はまれとされる。しかし重症化すると約30%と致死率の高い疾患である。本症例は受傷から4 日間治療介入されず、来院時には既にコールドショックの状態であった。犬・猫咬傷によるCapnocytophaga.canimorsusの敗血症は重症化すると致死率が高いことを認識し、早期治療介入していくことが重要と考えられた。ポスターCP 33 感染・感染対策③ 2月13日(土) 9:30~10:30 CPポスター会場CP33-2 Saccharomyces cereviciaeによる真菌敗血症の1 例北海道大学病院 麻酔科斉藤 仁志、森本 裕二症例68歳女性.多発性嚢胞腎を原因とする慢性腎不全により維持透析を受けていたが感染症を契機に自己免疫性肝炎を発症し,肝性脳症4度及びプロトロンビン時間活性21% を示す劇症肝炎に至った.脳死肝移植のレシピエントに登録され,血漿交換や血液透析などの治療を受けていたが,第15 病日に急性呼吸窮迫症候群と肺水腫を合併したため,循環呼吸管理を目的として集中治療室入室となった.病棟では細菌性肺炎も疑われており,TAZ/PIPC,CFPM,MCFGが投与されていたが,入室時の便培養から基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌が検出されたため,MEPM,VCM,MCFGの投与を行った.しかしその後サイトメガロウイルス感染が明らかとなり麻痺性イレウスなども併発,第23 病日には敗血症性ショックとなりカテコラミンの投与が必要となった.血液培養からカンジダ属の発育が確認されたためMCFGを中止,AMPH-B の投与を開始したが症状の改善は乏しかった.結局,第29病日に再び血液培養はカンジダ陽性となり,同時に同定菌種がSaccharomyces cereviciaeであることが判明,感受性検査により5-FC とVRCZにのみ感受性を持つ株であることが明らかとなった.考察一般に,Saccharomyces cereviciae はパン酵母やビール酵母として知られる共生細菌であると考えられてきたが,もともと抗真菌薬に対する耐性が高いこともあり,病原性を持つ侵襲的感染症の起因菌として報告する論文が1990 年代以降増加している.過去の報告を見るとカテーテル関連血流感染症の可能性をを第一に考えるべきだが,本症例では直前まで生のバナナを好んで摂食していたこともあり,bacterial translocation による敗血症である可能性も否定できない.複数の抗生物質を投与された易感染患者ではプロバイオティクスの投与に関しても十分注意する必要があると思われた.CP33-3 Parvimonas micraによる敗血症性ショックの一例横浜栄共済病院 救急科根岸 穂波、中野 貴明、宮崎 真奈美、稲村 宏紀、浅賀 知也、竹本 正明【症例】83歳 男性【主訴】腰痛【既往歴】前立腺癌(放射線治療後)【現病歴】X - 30 日,重いものを持ちあげようとして腰痛出現した.X - 3 日,腰痛増悪あり,近医入院となった.X 日,入院時の血液検査でCRP40.51mg/dl,WBC15800/ μ l と炎症反応上昇認めたため当院へ転院となった.【現症】来院時,意識清明,血圧97/44mmHg,心拍数140回/分,呼吸数39回/分.左大腿外側から膝関節部にかけて発赤,背部に自発痛,右下腹部に圧痛がみとめられた.【経過】敗血症性ショックと考え,精査にて腸腰筋膿瘍,大腿膿瘍,後腹膜膿瘍,膿胸,椎体炎と診断した.膿胸は胸腔ドレナージ施行.腸腰筋膿瘍,後腹膜膿瘍に対しCTガイド下穿刺施行.大腿膿瘍は切開排膿し,同部位より脊柱起立筋内にドレーン挿入した.後腹膜膿瘍,胸水を培養検査提出.グラム染色では胸水よりグラム陽性球菌,後腹膜膿瘍排液よりグラム陽性球菌,グラム陰性桿菌が検出された.入院ICU管理とし,抗菌薬はメロペネムを選択した.第2 病日,代謝性アシドーシス進行あり,第3 病日,急速に循環動態悪化し死亡退院となった.当院の培地では菌は検出されなかった.その後,膿瘍排液をDNA鑑定行ったところ,Parvimonas micra検出され,これが膿瘍形成の原因菌であると考えた.【考察】Parvimonas micra はグラム陽性嫌気性球菌(GPAC)であり,口腔内常在菌の一つである.GPACは遅発育性・難同定菌であることから今回のように培養検査で検出に至らない場合も多いが,低頻度ではあるが血流感染症も引き起こし,本症例のように不幸な転帰を辿ることもある.培養検査にて明らかな原因菌が検出されなかった場合,GPACを考慮に入れる必要があると考えられた.