ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-653-CP24-4 くも膜下出血後のたこつぼ様心筋障害に伴い左室内血栓を認めた1 例小倉記念病院 麻酔科 集中治療部宮脇 宏、角本 眞一、近藤 香、瀬尾 勝弘くも膜下出血(SAH)後のたこつぼ様心筋障害に伴い、左室内血栓を認めたが、抗凝固療法により軽快した1例を経験した。【症例】67歳女性。意識障害で発症し、当院に救急搬送された。来院時の意識レベルはJCS300であった。頭部CT検査でSAH、脳室内出血、左内頸動脈-後交通動脈瘤を認めたため、緊急でコイル塞栓術を予定した。心電図上、QT延長を認めたが、ST-T変化はなかった。心エコー検査では心尖部を中心に冠動脈の支配領域に一致しない壁運動の低下と基部の軽度の過収縮を認め、たこつぼ心筋症が疑われたが、出血性脳合併症の危険性が高いため冠動脈造影検査は行わなかった。救急部で気管挿管後、全身麻酔下でコイル塞栓術、脳室ドレナージ術を施行した。気管挿管のままICUに入室した。心電図上、V1、aVR を除く全誘導でT波の逆転を認めた。翌日の心エコー検査では、たこつぼ様心筋障害に加え、心尖部に可動性のある左室内血栓(14× 41mm)を認めた。外科的な摘出手術は危険性が高いため、抗凝固療法(ヘパリン)を開始した。ヘパリンはAPTT で正常の1.5倍前後を目標として、投与量を調節(8000-15000単位/日)した。術後16日目に血栓の縮小傾向とたこつぼ様心筋障害の改善を認めたため、ワルファリン内服を開始した。その後、血栓は消失したため、ヘパリンは中止した。気管切開、脳室‐ 腹腔シャント術を行い、意識レベルもJCS3 まで改善し、術後67日で軽快退院した。【考察】SAHに伴い、たこつぼ心筋症を発症することがあるが、左室内血栓を生じた報告は少ない。しかし、たこつぼ心筋症では常に左室内血栓を生じる危険性があり、継続した心エコー検査が必要である。外科的摘出術は出血性脳合併症の危険が高いため、抗凝固療法が中心となる。【まとめ】SAH後のたこつぼ様心筋障害に伴って発生した左室内血栓に対し、リスクを伴う外科的摘出術の代わりに抗凝固療法抗凝固療法が有効であった。CP24-5 分娩後の脳幹梗塞による遷延性意識障害の1 例姫路赤十字病院 麻酔科仙田 正博、倉迫 敏明、八井田 豊、山岡 正和、稲井 舞夕子、古島 夏奈、出口 美希、増田 恵里香、中村 芳美、依田 智美【はじめに】妊娠による循環血液量増加、血圧上昇、ホルモン作用や凝固能亢進などにより、様々な合併症が生じる可能性がある。今回、われわれは産後に発症した意識障害の原因が脳幹梗塞であった1 例を経験したため報告する。【症例】32歳女性164cm、67kg。2日前に第2子を分娩。産院にて病室で嘔吐して倒れているところを発見され、当院へ救急搬送。JCS-20、呼びかけで短時間開眼するが意思の疎通は取れず、左半身不全片麻痺。強直性の痙攣発作あり、ジアゼパム5g 静注で頓挫。頭部CT およびMRIにて明らかな異常所見を認めず、てんかん初回発作もしくは子癇発作疑いにてICU入室となった。フェニトイン、グリセオール、Mg 補正に加え、血栓症の否定ができるまでヘパリン持続静注を併用する方針とした。脳波では異常波を認めず、また意識レベルの改善乏しいため、4日目にMRI再検し、脳幹梗塞と判明。エダラボン、抗血小板薬を併用開始した。自己抗体は検出されなかった。9日目MRI にて出血性梗塞が判明したため気管挿管した上で深鎮静、脳浮腫対策の強化、より厳密な血圧管理を行った。16日目に気管切開施行。意識レベルや麻痺の状態に変化なく、29 日目に一般病棟へ転床。38 日目にリハビリテーション病院へ転院となった。【考察】産後に意識障害をきたす病態としては、通常の鑑別に加え産褥期子癇の可能性も考慮する必要がある。また、妊娠中の脳卒中のリスクは、非妊娠時と大きな違いがなく産褥期のみに高いという報告もあり、その中でも脳梗塞は一般に妊娠第2-3期と産褥1週間に多いとされている。本症例では来院時の検査で明らかな異常所見を認めなかったため、てんかん、産褥期子癇、脳梗塞を念頭に置いた治療を並行して行った。また、脳幹梗塞としては症状が典型的ではなく血管攣縮の影響も考えられた。以上の経過に文献的考察を加え報告する。CP24-6 胸部大動脈瘤により生じた遅発性対麻痺の2 症例富士重工業健康保険組合 太田記念病院 麻酔科小澤 拓郎、木村 相樹、三喜 和明、塚越 美喜子、奈良 岳志、松本 晶平【はじめに】今回、上行弓部大動脈瘤術後、また急性大動脈解離(Stanford type B)で保存的加療中に発症した遅発性対麻痺の2症例を経験したので報告する。【症例1】81歳男性、弓部大動脈瘤+冠動脈病変に対して上行弓部人工血管置換術+CABG(1 枝)が低体温循環停止+ 脳分離体外循環併用で施行された。手術時間は9 時間58 分であった。ICU 第1 病日に覚醒させ人工呼吸器を離脱したところ、徐々に進行する両下肢麻痺を認めため、対麻痺と診断された。【症例2】61歳男性、乗用車運転中に突然の胸背部痛出現、救急搬送された。CT にて左鎖骨下動脈直下から下行大動脈末梢まで偽腔閉塞型大動脈解離が認められ血圧コントロールを主体とする保存的療法が選択された。ICU第1 病日早朝に突然左下腿の血流障害と疼痛出現、血栓閉塞が疑われ緊急カテーテルが予定されたが、直前に回復した。この際に鎮痛目的で塩酸モルヒネが追加投与、NPPV施行し経過観察していた。当日夕方になり両下肢麻痺を認めため、対麻痺と診断された。【経過】2症例共に直ちにスパイナルドレナージを留置、またnaloxone の持続投与とsteroidの投与を開始した。症例1 は著効し第4 病日より歩行開始となった。一方、症例2は知覚改善を認めたが、運動障害は遷延しリハビリ病院に転院となった。【考察】胸部/胸腹部大動脈瘤手術、急性大動脈解離の合併症として対麻痺は患者のQOL や予後にまで大きく影響することが知られている。遅発性に生じる対麻痺には確立された治療法が無く、有用と期待される治療法を組み合わせる事が必要と思われる。人工血管置換術後、一方は大動脈解離後と異なる経過症例であるが、施行開始時期や発症転機、解剖学的相違など様々な観点より比較し経過の相違を検討した。【結語】今回ICU で発症した遅発性対麻痺に対してスパイナルドレナージを施行した2 症例の検証を行い、その有用性に関して文献的考察を加え報告する。