ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-651-CP23-4 人工骨頭置換術中に肺血栓塞栓症をきたし、PCPS導入で救命しえた超高齢者の一例兵庫県立淡路医療センター 麻酔科久保田 恵理、繁田 麻里、渡海 裕文【はじめに】整形外科の股関節骨折手術は深部静脈血栓症高リスク群であり、術中肺血栓塞栓症となる危険性も高い。今回、術中に肺血栓塞栓症から心停止をきたしたが早期のPCPS 導入によって救命し、良好な転機をたどった超高齢者の症例を経験した。【症例】90歳女性。身長140cm、体重50kg。既往は糖尿病・高血圧・不整脈に対して内服加療されていた。路上で転倒し歩行困難となり、当院救急外来を受診。左大腿骨頚部骨折の診断で、人工骨頭置換術の方針となった。術前心エコーでは心腔拡大なし、明らかな異常は認めず。D-dimer 168.7μ g/ml。受傷4日後、全身麻酔下に右側臥位で手術を施行した。閉創中に突然のEtCO2低下を認め、血圧測定不可能、心拍数37回/ 分の高度徐脈となったため、直ちに仰臥位とし心肺蘇生を行った。心エコーで右心系の拡大を認め、臨床所見と合わせて重症肺血栓塞栓症が強く疑われた。DOB投与で一時的に血圧上昇したが、再び47/12mmHgと高度低血圧から循環虚脱に陥ったためADを投与し、直ちにPCPSを導入。同時に未分画ヘパリンによる抗凝固療法を開始した。PCPS開始後は循環動態が安定したため、DOB・NAD持続投与下に退室した。ICU帰室後ヘパリン化に伴い創部から大量出血し、出血性ショックとなったためPCPSを終了した。術後のCT で両側多発肺動脈血栓を認めた。下肢静脈エコーでは左下腿静脈の血栓を認めた。中枢側に血栓は認められなかった。術当日に意識回復し、POD1抜管。創部は止血されたため未分画ヘパリンによる抗凝固療法を再開し、ワルファリンへ移行の方針とした。POD2 リハビリ開始、POD8 ICU 退室、POD52転院。その後自宅退院し、独歩で当院外来へ通院している。【結語】超高齢者の術中肺血栓塞栓症を救命し、PCPSの一時的使用とその有効性を確認した一例であった。CP23-5 胸腔鏡下肺全摘術後発症した肺塞栓症に対しVA-ECMOを使用し救命できた1 例1)豊田厚生病院 救命救急センター、2)豊田厚生病院 臨床工学技術科、3)豊田厚生病院 循環器内科、4)豊田厚生病院 呼吸器外科都築 通孝1)、沖島 正幸2)、南良 義和2)、林 大介3)、平松 義規4)、中前 健二2)、小林 修一1)52歳男性。既存症: 糖尿病,高血圧症,脂肪肝,肥満。原発性肺癌(扁平上皮癌)に対し呼吸器外科により胸腔鏡下左肺全摘術+縦隔リンパ節郭清が行われた。術後3日目,トイレ歩行後呼吸困難の訴え・意識消失が見られ心臓超音波検査及び造影CT 施行,肺塞栓症と診断された。CT検査終了後徐脈・血圧低下がみられたためVA-ECMO導入,気管挿管施行後ICU入室となった。入室当初はVA-ECMOにほぼ依存した状態であったが,発症翌日より自己による循環の回復が見られるようになった。その一方で穿刺部からの出血も含め輸血を継続しなければならない状態になったため,発症3 日目にVA-ECMO 離脱した。離脱後も血行動態不安定な状態が継続したため左胸腔内への出血の可能性も含め呼吸器外科と相談,胸腔鏡下鏡腔内止血術が施行された。その後血行動態安定した。発症4 日目に行った造影CT にては肺動脈内に血栓像を認めず,また観察できる範囲で下肢静脈内に血栓思われる所見みられなかったため弾性ストッキング+ポンプにて再発予防策を開始した。発症9 日目に合併症なく抜管した。発症10 日目に行った下肢静脈超音波検査にて左膝下に一部血栓思わせる所見がみられたためエドキサバン投与開始となり,同日ICU退室となった。本症例は肥満患者において胸腔鏡下左肺全摘術後3日目に発症した肺塞栓症の例であるが,その治療戦略の点も含め若干の考察を加え報告する。CP23-6 PCPS 導入後に胸骨圧迫による肋骨骨折から大量出血をきたした肺血栓塞栓症の1 例鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 救急・集中治療医学講座久保 拓也、山口 桂司、安田 智嗣、柳元 孝介、谷口 淳一郎、伊藤 隆史、寺田 晋作、宮本 昇太郎、政所 祐太郎、垣花 泰之心肺蘇生時の肋骨骨折から肋間動脈を損傷し、PCPS 導入後に大量出血をきたした肺血栓塞栓症例を経験したので報告する。症例は74 歳男性、突然の胸痛、呼吸困難を主訴に、近医に救急搬送された。胸部CTにて両側肺動脈主幹部に血栓塞栓を認めたため当院へ紹介となった。救命救急センター来院時は意識清明、血圧121/56 mmHg、心拍数111/min、呼吸数27/min、SpO2 93%(O210L/分)であった。直ちに抗凝固薬(ヘパリン)と、血栓溶解剤(モンテプラーゼ)の投与を行い経過観察とした。数時間後、血圧は維持されていたが、乳酸値の急激な上昇(7.5mmol/L)と不穏状態から突然にpulseless VT となった。直ちに胸骨圧迫を開始し、同時に大腿動静脈に送脱血カニューレを挿入し経皮的心肺補助(PCPS)を導入した。自己心拍は再開したが、胸部レントゲンにて左肋骨骨折と大量血胸を認めた。急速大量輸血を行ったがヘモグロビンの上昇は認められず、CT所見では左肋骨骨折、左大量血胸、左胸壁内大量血腫が認められ、血管造影で骨折部位に一致して左第4、5肋間動脈から造影剤の血管外漏出が確認できた。直ちに経皮的血管塞栓術(TAE)を施行したところ、出血のコントロールが可能となった。肺動脈本幹の血栓に対しては、カテーテル的血栓破砕・吸引術を施行し、肺動脈圧の低下と酸素化の改善を認めたため、PCPS導入3日目に離脱可能となった。経過は順調であったが、2 週間後に左胸壁が突然に膨隆し、CT で胸壁内に大量血腫が認められた。前回のTAE 施行血管からの再出血と判断し、外科的に止血術を行った。その後、本症例は意識レベルの問題もなく、順調に回復している。今回の大量出血、およびTAE後の再出血に関しては、抗凝固薬や血栓溶解薬の使用が大きく関与している。このような大量出血を合併した肺血栓塞栓症における抗凝固薬の使用量に関しては、リスクとベネフィットを十分に考慮し決定する必要があると考える