ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-648-CP22-1 当院における門脈ガス血症3 例の臨床的検討1)那須赤十字病院 救急集中治療部、2)獨協医科大学救命救急センター木多 秀彰1)、田崎 洋太郎1)、林 堅二1)、根本 真人1)、寶住 肇2)門脈ガス血症(hepatic portal venous gas:HPVG)は、腸管虚血などの原因で起こりかつては予後不良の兆候ともされていた。しかし、近年では保存的治療での治療例や軽症例の報告も増加している。当施設において経験した3 例のHPVG 症例について文献的検討を加え報告する。【症例】症例1 は62 歳の男性で、大腸憩室炎の診断で近医入院したが、3 日後にショック状態となり当院へ紹介された。腹部CT で、肝内門脈に樹枝状ガス像、門脈本幹から下腸間膜静脈にガス像が認められた。著明なS 状結腸肥厚と憩室多発がみられ、S 状結腸多発性憩室炎によるHPVGと診断した。ICU に入室し、敗血症性ショックに対する治療を開始した。臨床および画像所見から腸管壊死は否定的であり、保存的治療が選択された。3 日後にはショック状態から離脱し、6日後のCT検査ではHPVGはほぼ消失していた。症例2は69 歳の男性で、絞扼性イレウスの診断で当院入院となった。腹部CTで、肝内門脈に樹枝状ガス像が認められた。イレウス解除術を施行しICU入室となった。術中所見では、移動盲腸による絞扼を認めたが腸管虚血は軽度であり腸管切除は行わなかった。敗血症性ショック、DICに対しての治療を行い、第5 病日には症状改善を認め、第6 病日に一般病棟へ退室となった。症例3は83歳の女性で、急性膵炎疑いで当院へ紹介となった。腹部CT では下部腸管気腫と門脈、腸間膜静脈内にガスを認めた。腸管虚血所見がないため保存的治療が選択されICU 入室となった。血液培養からClostridiumperfringensを認めたが、循環状態は安定しており、禁食、補液、抗生剤投与により経過観察を行い、入室9日後にICUを退室した。【考察】HPVGは、画像診断の進歩により珍しいものではなくなっている。また、HPVGが予後不良の徴候とはいえなくなっている。HPVG の存在する臨床的意味を考え、丁寧な理学的所見の観察と画像所見の解釈が治療方針の決定に重要であると考えられた。ポスターCP 22 消化器② 2月12日(金) 15:00~16:00 CPポスター会場CP22-2 ノロウイルス感染を契機に腹部コンパートメント症候群を発症し集中治療管理を要した1 歳女児例松戸市立病院 小児集中治療科岡田 広、山下 由理子、三好 義隆、平本 龍吾【はじめに】腹部コンパートメント症候群(以下ACS)は膵炎や外傷を契機に腹腔内圧の著明な上昇と多臓器不全を引き起こす重篤な病態である。今回我々は、ノロウイルス感染を契機にACS を発症し、開腹・CHDF をはじめとした集中治療管理を要した症例を経験した。文献的考察を加えて報告する【現病歴】1歳女児、2週間前から消化器症状、1週間前から発熱があり、近医外来通院をしていた。来院日に近医受診し著明な頻脈を認め総合病院へ紹介、循環不全・腹部膨満・イレウスの所見があり、当院へ搬送となった【入院後経過】著明な腹部膨満と水様便が持続しており、重症腸炎にともなう敗血症と診断し、膀胱内圧(以下UVP)を経時的にmonitoringしつつ、集中治療管理を開始した。UVPは初療時10mmHg程度であったが徐々に上昇し、腎機能も増悪したためACSと判断した。経鼻胃管や浣腸での減圧・鎮静・体位管理などで加療継続したが入院2 日目にはUVP 20mmHg以上に上昇した。腹水穿刺ドレナージを施行し一時的に10mmHg 台に低下したものの再上昇し、挿管・筋弛緩管理としても改善がなく、減張切開・開腹管理・CHDFを含めた加療目的に入院3日目に高次医療機関へ搬送した。先方で9日間の開腹管理・14日間のCHDF管理を施行後に当院へback transferとなり、その後抜管・栄養管理等をすすめ、軽快退院となった。上部下部内視鏡検査・生検・消化管造影検査・造影CT検査・代謝スクリーニング検査で特記所見なく、便からノロウイルスが検出され、ACS の原因と考えた【考察】小児のACS は、重症患児の0.6-4.7%に発症し50-60% の死亡率とされている重篤な病態である。本邦での報告はまだ少ないが、腹腔内腫瘍に関連したものや虫垂炎穿孔による報告は散見される。今回、common な疾患でもACS を発症し高度な集中治療管理を要する症例を経験した。ACS の認識を広め、本邦での全体像の把握を通して、管理方法の確立や予後改善への取り組みが必要である。CP22-3 腸管出血性大腸菌(O-157)による溶血性尿毒症症候群に急性膵炎を合併した1 例1)国立病院機構 災害医療センター 救命救急科、2)国立病院機構 災害医療センター 臨床研究部金子 真由子1)、金村 剛宗1)、加藤 宏1)、高田 浩明1)、神保 一平1)、井上 和茂1)、岡田 一郎1)、霧生 信明1)、長谷川 栄寿1)、小井土 雄一1,2)【はじめに】溶血性尿毒症症候群(以下HUS)では急性膵炎を合併することが知られているが、その報告例は少ない。今回、腸管出血性大腸菌(以下EHEC)によるHUSに急性膵炎の併発を認めた1例を経験したので報告する。【症例】19歳女性。生肉(ユッケ)を摂取した翌日より腹痛、下痢、血便を認め、虚血性腸炎の診断にて近医入院。入院6 日目、貧血、血小板数低下、腎機能障害を認め、便培養にてEHEC(O-157)、ベロトキシンが検出され、EHEC 感染症によるHUS の診断にて当院転院となった。第1 病日、腹部CTではびまん性膵腫大を呈していたが血中アミラーゼ(AMY)254IU/L、尿中AMY 714U/Lであり経過観察としていた。第4病日、血便は消失していたものの上腹部痛が増悪し、血中AMY434IU/L、リパーゼ784U/L、尿中AMY 1701U/Lと膵酵素の上昇を認めたため、急性膵炎の合併を考え、持続的血液濾過透析(CHDF)、蛋白分解酵素阻害薬による加療を行った。以後、膵酵素は漸減し腹部症状も消失したため第24病日独歩退院となった。【考察】EHECによるHUSでは急性膵炎を合併することを念頭におき、膵酵素の上昇や腹部症状の変化に注意して経過をみる必要があると考えられた。