ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-644-CP20-1 侵入門戸不明の肺炎球菌感染症に血栓性微小血管障害(TMA)を発症した66 歳の男性藤沢市民病院 救命救急センター澤井 啓介【症例】66歳の男性。既往に未治療の2型糖尿病があり来院時のHbA1cは13.2%。入院前日に発熱・咽頭痛を主訴に前医を受診、血液検査にて著明な血小板の低下・電撃性の紫斑を認めたため当院に転院。血液培養にて肺炎球菌が陽性であったが肺炎像は認めず、全身のCT 検査上も感染病巣は認めなかった。SIRS は4 項目満たし血小板は1.5 万、PT-INR 1.93、FDP 1763 μ g/ml にて播種性血管内凝固症候群(DIC)スコアは8 点。末梢血液像にて破砕赤血球を認め、直接coombs 試験は陽性、便培養上も病原性大腸菌は検出されなかった。血小板減少・発熱・溶血性貧血・腎機能障害・精神症状などの血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)要素は満たしているが、著明な凝固異常も合併しており侵入門戸不明の肺炎球菌菌血症によるDICと診断し抗菌薬の投与(MEPM、MCFG、VCM)を開始し、出血傾向の合併も認めることから第1病日より2日間血小板輸血を施行したが血小板は0.7万と増加は認めず破砕赤血球の増加および採血上溶血所見の悪化を認めたためTTP と診断。第3 病日より血漿交換および3 日間のステロイドパルス療法を開始した。血漿交換は第12病日まで行い、ステロイドパルス療法後はプレドニゾロンの内服の後療法を施行した。ステロイドの投与および血漿交換にて血小板値は15 万まで改善、本症例においてADAMTS-13活性は正常であった。その後は血小板の低下はなく感染コントロールも良好、末梢の壊死の合併は認めたが生存退院となった。TTPは予後不良な疾患で大半が後天性のものであり、特発性と続発性に分類される。わが国では半数が特発性であり、続発性には膠原病・悪性腫瘍・造血幹移植・妊娠・薬剤性などがあるが感染症によるものはまれである。重篤な感染症に2 次性のTTPを併発することがあり、DICとTTPの鑑別に難渋することがある。肺炎球菌菌血症に続発したTTPの報告は少なく、貴重な症例であり若干の文献的考察を加えて報告する。ポスターCP 20 血液・凝固線溶② 2月12日(金) 15:00~16:00 CPポスター会場CP20-2 急性リンパ性白血病に対するHLA半合致造血幹細胞移植後に致死的なEB ウイルス感染症を発症した1 例1)成田赤十字病院 救急集中治療科、2)成田赤十字病院 血液腫瘍科上野 昌輝1)、中西 加寿也1)、奥 怜子1)、山地 芳弘1)、栗田 健郎1)、竹田 雅彦1)、稲垣 俊一郎2)、増田 真一2)、青墳 信之2)【はじめに】造血幹細胞移植後の免疫抑制状態ではEpstein-Barr virus(EBV)の再活性化をきたして伝染性単核球症(IM)やEBV関連リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)を発症しうる。今回、難治性急性リンパ性白血病(ALL)に対するHLA 半合致造血幹細胞移植後に致死的なEBウイルス感染症をきたした1 例を経験したので報告する。【症例】53歳女性。52歳でALLを発症し、前医での化学療法に不応性であり当院に紹介された。難治性ALL に対し、HLA半合致造血幹細胞移植を施行後、mPSL とタクロリムスによる免疫抑制療法を行った。Day11に生着が確認されたが、その後サイトメガロウイルス抗原血症などのウイルス感染を合併した。Day37頃より発熱、頸部リンパ節腫脹と肝腫大が出現し、数日のうちにリンパ節腫脹は急激に増悪し、全身浮腫や胸腹水貯留が顕著となった。Day37 の白血球中EBV-DNAが上昇していたため、EBV-LPDを疑い、Day41 にリツキシマブを投与した。その後も病勢は留まらず、急性腎障害、循環不全、呼吸不全も出現したため、Day43にICU に入室しCHDF を開始、Day45には人工呼吸器管理を開始した。他施設に依頼したEBV 解析でEBV-LPDは否定的であり、重症のIM が疑われた。自己免疫の賦活による感染制御とGVHD予防という相反する意図の中、治療法の選択に苦慮しながらmPSL の増減や、リツキシマブ投与、ドナーリンパ球輸注などのEBV-LPDに準じた治療を施行したが、多臓器不全が進行しDay69に永眠された。【考察】IMの多くは自然寛解する一方で、EBV-LPDの致命率は高く早期の治療介入が必要である。本症例のように移植後の重症IMでは、EBV-LPD と同様に高サイトカイン血症をきたし致死的となる可能性があるが、臨床上はこれらの鑑別は困難である。EBウイルス関連疾患が重症化した場合、自己免疫の賦活とGVHD予防、高サイトカイン血症の制御を考慮して免疫抑制剤の調整を行いつつ、EBV-LPDに準じた治療を早期に検討する必要がある。CP20-3 遅発性血胸と静脈血栓症を合併し血栓予防に難渋した胸部外傷の1 例日本医科大学 武蔵小杉病院 救命救急センター長谷川 智宏、松田 潔、菊池 広子、遠藤 広史、石丸 直樹、山村 英治、渡邊 顕弘、黒川 顯【症例】59才男性。【現病歴】階段で転落し、当院救急搬送となった。右多発肋骨骨折・右血胸の診断で保存的加療目的に当科入院となった。【入院後経過】入院経過中第16病日にD-dimerの上昇を認めたため、下肢静脈血栓予防目的でFXa阻害薬を開始した。第24 病日早朝に咳嗽後突然の胸痛と呼吸苦を訴えたため、胸部CTを施行。右大量血胸を認めたため、胸腔ドレーンを挿入し人工呼吸器管理となった。造影CT で右胸腔内へ造影剤の血管外漏出を認めたため緊急でTAE を施行し出血源である下横隔膜動脈を塞栓した。第31病日に骨折肋骨断端による損傷から生じた再出血を疑い胸腔鏡補助下に小開胸で胸腔内を観察したが、横隔膜損傷や胸腔内に突出する肋骨骨折断端は認めなかった。再出血の可能性も考え、抗凝固療法を中止していたが第39病日にD-dimerが上昇し、造影CT を施行したところ右肺動脈と左総腸骨静脈から左膝窩静脈まで大量の血栓を認めたため、同日下大静脈フィルター挿入術を施行した。施行後よりヘパリン、ワーファリンで抗凝固療法を開始した。第73病日にフォローの造影CTを施行したところ、下大静脈フィルター内に大量の血栓が捕獲されていたため、血栓吸引術を施行した。血胸再発のリスクもあるが、静脈血栓予防のため再度FXa 阻害薬で抗凝固療法を開始。第114病日に再度フォローの造影CTを施行。フィルター内の血栓が消失していたため、下大静脈フィルター除去術を施行し、第116 病日退院となった。【考察】今回、下横隔膜動脈損傷による遅発性血胸という稀な合併症を経験した。外傷患者は出血のリスクと、ADLが制限され血栓性の合併症を引き起こすリスクがある。外傷患者の抗凝固療法には十分な注意が必要である。