ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-639-CP17-4 多剤耐性アシネトバクタ(MDRAb)による医療機器汚染とアウトブレイク収束への臨床工学技士の関わり1)三重大学医学部附属病院 臨床工学部、2)三重大学医学部附属病院 救命救急センター行光 昌宏1)、佐生 喬1)、白前 達大1)、暮石 陽介1)、西川 祐策1)、加藤 隆史1)、岩田 英城1)、今井 寛2)【はじめに】当集中治療室では2014 年に多剤耐性アシネトバクタバウマニ(以下MDRAb)によるアウトブレイクを経験した。MDRAb は通常の細菌とは異なり、乾燥に強く長期にわたり環境に存在することからその収束は容易ではないとされる。今回のアウトブレイクにおける医療機器汚染状況と収束に向けた取り組みを臨床工学技士の視点から報告する。【経過および対応】収束への取り組みとして、医療機器を含めた環境の定期培養及び生菌数測定(ATP測定)が開始された。当初、清掃は清拭面劣化を考慮し、第4級アンモニウム塩の含まれるクロスを用いた清拭を実施。環境培養の結果を考慮し、ペルオキソー硫酸水素カリウムおよび塩化ナトリウムを含むクロス(次亜塩素酸)へ変更。培養陽性箇所の減少を認めたが、一部機器(医療機器以外)にて動作不良を認めた例も経験した。一方、医療機器を介した伝搬経路の検索として、人工呼吸器内部回路の培養を行ったが、内部回路及び呼気弁からの検出は認めなかった。その他の医療機器では、超音波診断装置などの機器表面、エコーゼリーからの検出を認め、伝搬経路の一つと考えられた。【考察】過去の報告では人工呼吸器を介した水平伝搬の可能性が示めされている。また、バクテリアフィルター付人工鼻によるMDRAb の阻止に関して添付文書、報告は示されておらず、その有用性は明らかではない。今回、人工鼻を用いた管理では人工呼吸器本体への汚染は認めておらず一定の効果があることが示唆された。【結語】MDRAb アウトブレイク収束には環境整備、水平伝搬の防止が重要であり、集中治療室に多くかかわりを持つ臨床工学技士も十分な知識を持つ必要がある。MDRAb のような医療機器を介した感染が疑われる事例では臨床工学技士の介入は有用である。CP17-5 ER で実施した血液培養検査における耐性菌の検出動向と薬剤感受性の解析名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野稲葉 正人、高谷 悠大、久保寺 敏、東 倫子、山本 尚範、角 三和子、松田 直之【はじめに】重症敗血症,敗血症性ショックに対して,来院後速やかに抗菌薬を投与することが予後に関連すると言われている。初期治療で適切な抗菌薬を選択する上で,多くの重症敗血症患者が搬送される救急外来(ER)で採取した血液培養検体より,分離される菌株の検出動向を把握することは重要といえる。そこで2012年からの3年間で,当院ER において実施した血液培養検査を解析した。【方法】2012年1 月1 日~2014 年12 月31 日までの3 年間を調査期間とし,ERで採取した血液培養検体より検出された菌種,耐性菌の検出率および薬剤感受性率を評価した。抗菌薬の感受性はCLSI M100-S22に基づいて判定した。【結果】3年間で計2708セット採取され,陽性セット数は562セットであった。陽性率は2012年より20.9%,20.5%, 20.7%であり3年間で大きな変化は認められなかった。分離された菌数は448 株で,検出された菌種は多い順にE.coli 100 株(ESBL 産生株 10 株(10%)),Klebsiella pneumoniae 57 株(ESBL 産生株 1 株(1.8%)),Staphylococcus epidermidis 39 株(MRSE 20 株(51.2%)),Staphylococcus aureus 25 株(MRSA 3 株(12.5%),Pseudomonas aeruginosa 13 株( 高度耐性3 株) であった。 E.coli のうちESBL 産生菌は,2012 年から13.3%(4/30),10.7%(3/28),7.1%(3/42)と減少傾向であり,Klebsiella pneumoniae のESBL 産生菌は2014年に1株分離されたのみであった。またStaphylococcus aureusのうちMRSAは16.7%(1/6),11.1%(1/9),10%(1/10)と減少傾向であった。【結論】2012年から3年間のERで実施した血液培養検査における耐性菌の検出率と薬剤感受性を解析した。陽性率は約20%であり,MRSAやESBL産生菌の割合はともに経年的に減少傾向にあった。CP17-6 当院救命センターにおいて検出されたMRSAに対するVCMの感受性の検討奈良県総合医療センター 救命救急センター關 匡彦、尾中 敦彦【はじめに】救命センターに入院となる患者はその重症度から,広域抗菌薬を使用する頻度が高く,その結果としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)の検出率が高いことが知られている.一方で,抗MRSA薬としてよく用いられるバンコマイシン(以下VCM)のMRSAに対する最小発育阻止濃度(以下MIC)の上昇(MIC creep)が問題となっている.今回,当救命センターに入院となり,検出されたMRSA 患者およびそのVCM に対する感受性に関して検討した.【方法】2010 年1 月から2014 年12 月までに当救命センターに入院となり,各種培養検査にてMRSAが検出された155例を対象にそのVCMに対する感受性を後方視的に検討した.【結果】2010年はMIC ≧ 2 の株は検出されなかったが,2011年にMIC ≧ 2 の株が16.7% で認められた.2012年は7.7%,2013年は2.8%と徐々に減少し2014年にはMIC ≧ 2の株は認めなかった.【考察】MRSA感染症の治療ガイドライン2014によるとVCM のMIC 2 以上の分離率は10%程度とされている.当救命センターにおいても2011 年に16%と高頻度で検出されたが,次第に低下してきており,現状ではMIC creep は問題となっていない.当院のVCMのMRSAに対するMIC の推移を文献的考察を交えて検討,報告する.