ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-628-CP12-1 ドメスト服毒により腐食性消化管炎と化学性肺炎となった1 例1)浜松医科大学 医学部附属病院 集中治療部、2)浜松医科大学 医学部 麻酔・蘇生学講座小林 賢輔1)、御室 総一郎1)、大橋 雅彦1)、鈴木 祐二1)、加藤 弘美1)、大杉 浩一1)、八木原 正浩1)、小幡 由佳子1)、土井 松幸1)、中島 芳樹2)【緒言】水酸化ナトリウム・次亜塩素酸ナトリウムを主成分とするドメストを服毒し,腐食性消化管炎と化学性肺炎となった症例を経験した。【症例】61歳、女性。10年前からうつ病のため抗うつ薬を内服中であった。自宅で自殺企図にてドメストを約200 mlを飲み、気分不快及び頻回の嘔吐のため緊急入院した。【入院時現症】軽度意識混濁(JCS 2)、脈拍102 bpm、血圧140/95 mmHg、体温36.2 ℃、SpO2 92%(酸素9L/分)【経過】泡沫状の粘稠痰、著明な喘鳴と酸素化の不良を認め、気管挿管し全身管理を目的にICUに入室した。入院2日目に上部消化管内視鏡検査を行い、咽頭、食道、胃にびらん、潰瘍と狭窄を伴う著明な腐食性変化を認めた。胸部X線で両側肺野全体にスリガラス影を認め、CTでは両側肺下葉に浸潤影と気管支周囲壁肥厚、両側胸水を認めた。以上より、ドメストの服毒による腐食性消化管炎と強アルカリの誤嚥による化学性肺炎と診断した。喉頭の浮腫が著明であったため、気管切開を施行し、人工呼吸管理と胃管留置、制酸剤投与による保存的加療が行われた。入院3日目にICUを退室し、10日目には人工呼吸器を離脱した。18日目の上部消化管内視鏡検査では咽頭から喉頭の浮腫と腐食性変化は軽快し、食道の狭窄はなく食道・胃吻合部にわずかに潰瘍を認めた。喀痰の排出は継続していたが胸部X線検査でスリガラス影の濃度は低下し、嚥下造影検査は少量ならば経口摂取が可能であり、嚥下訓練を開始した。入院29日目に精神科へ転科した。【考察と結語】アルカリ薬剤服毒による消化管の腐食性の変化は深部まで組織傷害が進展しやすいので重症化する可能性が高く、慎重に対応することが重要である。また急性期には気道浮腫による上気道閉塞を来す場合があるため、早期に診断し気道の確保を行う必要がある。ポスターCP 12 中毒・体温異常・悪性症候群① 2月12日(金) 9:30~10:30 CPポスター会場CP12-2 クレゾール中毒による声門浮腫に対し気道管理を要した1 症例沖縄県立南部医療センター 救命救急センター梅村 武寛、新里 盛朗、土屋 洋之、宮川 幸子、富山 修志、高江洲 怜、吉田 有法、川浪 淳一【はじめに】クレゾール中毒は中枢神経系および循環器系に対する全身症状に加えて腐食作用による局所症状が問題となる。今回、我々はクレゾールを服毒後に意識障害や血圧低下に加えて、声門浮腫を来し気道管理を要した症例を経験したため報告する。【症例】59歳、女性【経過】統合失調症で近医通院中であった。当センター搬送1時間前に自宅でクレゾール(50%、推定300ml)を服毒した。その後、意識障害が生じ倒れているのを発見され当センターへ救急搬送となった。初診時、意識レベルはGCSE1V1M1、収縮期血圧80mmHg、心拍数95 回/ 分、クレゾール臭が著明であった。外観上、上下口唇は腫脹し下顎の皮膚にビランを認めた。頸部呼吸音に競作音等は聴取せず、肺雑音も聴取しなかった。意識障害に加えて口唇の腫脹を認めクレゾールによる腐食性組織障害による気道閉塞のリスクを考慮し気管挿管を施行した。上部消化管内視鏡を施行したところ腐食性食道炎と声門部の著明な浮腫を認めた。入院5日目、突然心室細動を来したが胸骨圧迫を開始した2分弱で自然停止した。入院7日目、喉頭ファイバーにて再度気道を観察したところ声門部浮腫は改善していたためカフリークテストを行った後に抜管した。【まとめ】クレゾール中毒には全身作用に加えて腐食作用による局所症状に注意を払い治療を行う必要がある。意識障害があれば嘔吐や誤嚥により気道に腐食作用が及ぶ事もあるため気道緊急を念頭に治療にあたる必要がある。また腐食性食道炎により遅発性の食道狭窄を来す可能性も念頭におく必要がある。クレゾール中毒について若干の文献的考察を加えて発表する。CP12-3 王水蒸気吸入による肺障害の1 例日本医科大学武蔵小杉病院 救命救急センター遠藤 広史、松田 潔、菊池 広子、長谷川 智宏、石丸 直樹、山村 英治、渡邊 顕弘、黒川 顕【背景】王水蒸気吸入(濃硝酸と濃塩酸の混合により発生)による化学性肺炎と肺水腫を生じた症例を経験したので報告する。【症例】50 歳代男性、清掃作業中に塩酸と硝酸を混合した際に発生する煙に水をかけていたところ、誤って煙を吸って受傷した。直後から息苦しさと咳嗽を自覚しがまんしていたが症状が悪化したため救急要請し当院に搬送された。来院時、意識清明、血圧120/84mmHg、脈拍113/ 分、呼吸数35/ 分、体温35.9℃であった。頻脈と酸素リザーバーマスク10L 投与下でPaO2 108mmHg と低酸素血症を認めた。胸部単純Xp と単純CT で両側びまん性に広がる多数の斑状影を認めた。気管挿管を行い、人工呼吸器を使用し救命救急センターに入院となった。シベレスタットナトリウム水和物の投与を行った。集学的治療によって低酸素血症は改善し退院となった。【考察】本邦では医中誌Webで調べる限り、王水蒸気吸入による中毒症状の報告例は過去1例しか認めず稀な疾患と考える。王水蒸気吸入による肺障害を認めるとともに、同時に発生する塩素ガス中毒の可能性も考え治療を行った。