ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-621-CP8-4 重症呼吸不全を合併した絞扼性イレウスに対し,Damage Control Surgeryに引き続いた集中治療が奏功した1例1)岡山済生会総合病院 救急科、2)岡山済生会総合病院 内科、3)岡山済生会総合病院 麻酔科稲葉 基高1)、桃木 律也2)、水川 俊一3)、小林 洋二3)症例は78 歳女性。意識障害を主訴に救急搬送された。来院時のバイタルは脈拍130 回/ 分,血圧・SpO2 測定不能であった。意識レベルはGCSでE4V2M1,著明な腹部膨満が認められた。ERにて緊急気管挿管,急速輸液療法を含む蘇生処置を開始した。CTにて小腸の著明な拡張と腸間膜濃度の上昇,肺野のびまん性浸潤影を認め,重症呼吸不全を伴う絞扼性イレウスと診断し,蘇生処置を継続しながら緊急手術を施行した。腹腔内所見では骨盤内の小腸が索状物により絞扼・壊死し,口側小腸が著明に拡張していた。術中も100%酸素換気でSpO2は80%,収縮期血圧60前後とショック状態が継続しており,可及的速やかに手術を終える必要があると判断した。自動縫合器で壊死小腸の切離のみを行い,吻合は行わない,Damage Control Surgery(DCS)を決断。Openabdominal management(OAM)として手術を終了し速やかにICUでの全身管理に移行した。ICU入室後も呼吸不全が継続したため直後からairway pressure release ventilation(APRV)を開始し徐々に改善傾向を認めた。ショックの離脱のために大量輸液高濃度カテコラミンを要した。第2病日に再開腹するも著明な腸管浮腫のためAbdominal Compartment Syndromeが危惧され閉腹困難であったが,全身状態の改善した第4病日には腸管浮腫は著明に改善し色調も良好で吻合可能であると判断し,小腸断端を吻合したのちに腹壁を閉創した。第7病日に抜管,第8 病日にICU 退室・飲水開始。その後は合併症なく経過し,第26 病日に独歩で自宅退院した。DCS は外傷外科でよく用いられる手法であるが,近年では外傷のみならず重症内因性疾患にも応用されている。今回我々はショック患者に対するDCSに引き続いて,OAMやAPRVなどを用いた集中治療にて救命し得た重症呼吸不全を伴う絞扼性イレウス症例を経験したので考察を加えて報告する。CP8-5 脳梗塞の急性期管理中に壊死型虚血性腸炎を発症した2 例京都第一赤十字病院 麻酔科藤本 佳久、奥田 裕子、香村 安健、松山 広樹、竹上 徹郎壊死型虚血性腸炎は腹膜炎やbacterial translocation から容易に敗血症や多臓器不全に陥る重篤な病態であるため迅速な診断と緊急手術を要するが、脳梗塞後では様々な理由により診断が困難になる。今回、脳梗塞の急性期管理中に壊死型虚血性腸炎を発症した2 例を経験したので考察を加えて報告する。【症例1】65歳男性、既往は心房細動、高血圧。倒れているところを発見され左大脳半球の急性脳梗塞と診断、左内頸動脈閉塞に対して血栓補足回収術を施行。第12病日に嘔吐と血圧上昇認め頭部CT撮影されたが再梗塞や出血性梗塞の所見なく経過観察。第13病日に再度嘔吐と腹部緊満、血液ガス検査で著明なアシドーシス認め、腹部CTで門脈ガス、広範囲腸管気腫認め、壊死型虚血性腸炎と診断された。【症例2】73歳女性、既往は心房細動、糖尿病、肥大型閉塞性心筋症。意識障害、右片麻痺、全失語で救急搬送され、左大脳半球と右側頭葉の急性脳梗塞と診断。左中大脳動脈閉塞、右内頸動脈閉塞に対して機械的血栓回収術、頚動脈ステント留置術を施行。夜間より嘔吐と頻脈傾向も経過観察されていたが、第2病日の血液検査で炎症反応、肝酵素上昇、血液ガス検査で代謝性アシドーシス認め、腹部CTで腹腔動脈上腸管動脈閉塞と診断された。【考察・結語】脳梗塞の急性期管理中に壊死型虚血性腸炎を発症した2例を経験した。広範囲脳梗塞後の患者では症状表出が完全でなく、他病態の合併や急性血液浄化を施行している場合もあり、身体所見や臨床症状、検査結果の解釈が困難となる。提示した症例では、血栓塞栓症のリスクである心房細動の既往があったが、前兆となるバイタル変化から腸管虚血を疑うことができず経過観察となったため結果的に診断までに数時間を要した。再梗塞や出血性梗塞などでは説明のつかないバイタル変化を認めた場合、血栓症を視野にいれ、血液検査や腹部CT を行うべきと考える。CP8-6 Chilaiditi症候群に急性偽性腸閉塞を合併した2 症例横浜労災病院 中央集中治療部木村 康宏、小野 富士恵、柏 健一郎、七尾 大観、赤川 玄樹、藤本 潤一、西澤 英雄【緒言】Chilaiditi 症候群に急性偽性腸閉塞を合併した症例を2 例経験した。大腸内視鏡による腸管内減圧操作が循環動態の改善に著効したことから生理学的考察を加えて報告する。【症例1】86 歳男性。慢性Chilaiditi症候群の既往あり。呼吸困難を主訴に救急要請、CTで腸管拡張による横隔膜拳上を認めたが、腸管閉塞所見なし。入院翌日に心肺停止となり蘇生後にICU 入室となった。大腸内視鏡検査を施行するも閉塞所見、虚血・壊死所見はみられなかった。内視鏡による腸管減圧後に著明な循環動態の改善を認めたが、その後腸管拡張が再発。患者背景等から積極的加療の継続が断念され、死亡確認に至った。【症例2】67歳男性。腰部脊柱管狭窄症に対し手術予定であった。呼吸苦から意識障害をきたし、ICU 入室後に人工呼吸管理を開始した。CT で右横隔膜下に著明に拡張した腸管の嵌入を認めたが、明らかな閉塞所見なく、内視鏡による腸管減圧後に血行動態が著明に改善した。第4 病日に抜管、腸管拡張の再増悪も認めず、第10病日にICU退室となった。【結語】Chilaiditi症候群は、稀に腸管の機能的閉塞を合併し、重篤な循環虚脱をきたす可能性があるので注意を要する。