ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-611-CP3-4 細菌学的診断を得られた破傷風の1 例聖マリアンナ医科大学 救急医学平澤 康孝、柳井 真知、川口 剛史、津久田 純平、高松 由佳、井上 哲也、森澤 健一郎、下澤 信彦、和田 崇文、平 泰彦【背景】破傷風は、広く土壌に常在する嫌気性グラム陽性桿菌であるClostridium tetaniの産生する神経毒素が原因と考えられているが、細菌学的診断を得ることは難しいとされている。今回我々は創部培養からC.tetani が分離同定され、破傷風の診断に至った一例を経験したので報告する。【症例】肺結核と胃癌の加療歴がある86 歳男性。当院受診前日より顎のこわばりを自覚し、破傷風が疑われたため当科入院となった。受診1 週間前に漬け物石で右第4指をはさんだ受傷歴がある。【来院時所見】意識清明 体温36.6 ℃ 血圧 183/90 mmHg 脈拍86 回/分 酸素飽和度 97%(室内気) 呼吸数 12 回/ 分 開口は2 横指と開口障害あり 右第4指に発赤腫脹とレントゲンにて右第4 指末節骨遠位端に骨折線を認める。【経過】右第4 指に爪下膿瘍を認め、膿瘍ドレナージと同時に細菌培養検査を提出した。臨床経過より破傷風第2期が疑われたため、破傷風トキソイド・破傷風ヒト免疫グロブリンを使用し、ペニシリンGにて治療を開始した。第7病日に創部培養よりC.tetaniが分離同定され、臨床所見と細菌学的検査結果を併せ破傷風の診断に至った。全身性痙攣は出現しなかったが、後弓反張と喀痰排出困難のため一時的に人工呼吸器管理とマグネシウムの持続投与を要した。歩行可能となったが嚥下障害が残存したため、第37病日にリハビリ目的に転院となった。 【考察】C.tetaniは高度嫌気要求性菌であるため培養が困難である。また、破傷風は臨床診断を基に早期から抗生剤加療が行われることも多く、細菌学的確定診断を得る例は少ない。本症例では、抗生剤投与前の創部浸出液から破傷風としての細菌学的診断を得られ、その後の治療方針決定に有益であった。CP3-5 硫酸マグネシウムの持続投与が有効であった重症破傷風の1 例名古屋第二赤十字病院 麻酔・集中治療部藤井 智章、寺澤 篤、秋泉 春樹、井上 芳門、村橋 一、古田 敬亮、古田 裕子、高須 宏江【はじめに】破傷風は破傷風菌が産生する毒素により強直性痙攣を引き起こす感染症である。本邦では破傷風トキソイドワクチンが導入されてから患者数・死亡者数が減少しているが、依然として致死率が高い(20~50%)感染症である。また発症後の治療に難渋することも多い疾患である。今回、破傷風を発症し、数週間にわたる集中治療管理を要した症例を経験したので報告する。【症例】78歳、男性。玄関先で転倒し右上肢受傷。5日後(第1病日)に右上肢筋緊張亢進が出現し、第3病日に開口障害を認めた為、一般床へ入院した。抗破傷風人免疫グロブリン、破傷風トキソイド、ベンジルペニシリンカリウムの投与を開始した。第4 病日、吸痰を契機に全身痙攣を発症(Onset Time<48hr)し呼吸状態が悪化した為、気管挿管を行った後に、ICUに入室した。刺激を避ける為、暗室管理とした。ミダゾラム、フェンタニルで鎮静し、硫酸マグネシウムを10mEq/hrで投与開始した。連日血清マグネシウム値を測定し、第6病日から5mEq/hrに減量した。その後、筋硬直は軽度残存するのみであり、筋強直のコントロールのために筋弛緩薬を必要とはしなかった。循環動態は血圧・脈拍の変動を認めたものの、循環作動薬の使用はICU入室日以外必要としなかった。第9 病日、第16 病日にマグネシウムの投与を中止したが、症状の再燃を認めた為、再開した。第24病日に気管切開術を施行した。第25病日にマグネシウムの投与を中止した以後は症状の再燃を認めず、人工呼吸器からの離脱も完了できた為、第27病日ICU を退室した。【考察】本症例のように、onset timeが48 時間以内である場合、予後不良であることが多いが、硫酸マグネシウムを持続投与したことで、自律神経症状や筋緊張のコントロールが容易になったと考えられた。CP3-6 硫酸マグネシウムの持続静注により長期人工呼吸管理を回避しえた破傷風患者の一例長崎大学病院 集中治療部 麻酔科岡田 恭子、矢野 倫太郎、松本 聡治朗、東島 潮、松本 周平、関野 元裕、原 哲也破傷風の急性期治療においては、呼吸・全身痙攣・自律神経症状のコントロールが重要であり、痙攣・血圧変動に硫酸マグネシウム(MgSO4)の併用が有効との報告がある。今回、長期間の鎮静・呼吸管理が予想された破傷風患者に、MgSO4 を持続静注し軽度の鎮静での痙攣のコントロールが可能となり、長期人工呼吸管理を回避しえた症例を経験したので報告する。61歳男性。右母指の挫滅から1か月後に嚥下困難を自覚、翌日には構音障害が出現し近医を受診した。症状と経過から破傷風との診断をされ、破傷風トキソイド、抗破傷風ヒト免疫グロブリン、抗菌薬での加療を開始された。その後、開口障害・筋緊張などの症状は増悪傾向にあり、発症から6日目に挿管され当院転院、ICU入室となった。人工呼吸器管理を継続し、ジアゼパム経鼻胃管投与、プロポフォール(PF)1mg/kg/hr・デクスメデトミジン(DEX)0.7μg/kg/hr・MgSO4 1g/hrの持続静注を開始した。MgSO4持続静注に際しては高Mg 血症による症状に注意し、血漿Mg 濃度と活性型である血漿イオン化マグネシウム濃度(iMg)を測定し、iMg の目標値を2mmol/L として最大3g/hr まで使用した。腰椎穿刺、喀痰吸引などの刺激により後弓反張を呈していたが、鎮静薬の調整で四肢の緊張・痙攣は消失した。ICU 入室3 日目に血中Mg 濃度の安定と痙攣消失を確認し、鎮静薬を漸減していき抜管した。吸引や咳嗽・発声などで筋硬直が出現したが、MgSO4 の持続投与に加えPF、DEXを少量から持続静注再開し、非挿管下での管理が可能であった。経過中最大iMg は1.83mmol/L であったが高Mg 血症の症状は認めず、筋緊張も良好にコントロールされた。破傷風患者では多くの場合、長期の鎮静・呼吸管理が必要となり、安静臥床によるADL 障害が問題となる。本症例ではMgSO4 の持続静注と少量の鎮静薬の併用により意思疎通可能なレベルを維持し積極的な理学療法も行うことができた。文献的考察を加えて報告する。