ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-601-DP48-4 III度熱中症に対する血管内冷却カテーテルおよび体表冷却の比較大阪府泉州救命救急センター安念 優、菱川 恭子、中尾 彰太、水島 靖明、松岡 哲也【はじめに】III 度熱中症患者に対する血管内冷却カテーテルによる冷却法とブランケットを用いた体表冷却法を比較した。【対象と方法】2013 年8月から2015年8月の期間で当センターに搬送された肝機能、腎機能、血液凝固能のいずれかの異常が認められたIII度熱中症患者の中で、血管内カテーテル冷却法をおこなった2例、ブランケットによる体表冷却法を施行した3例を対象とした。これらの症例の冷却速度、シバリング・不整脈出現の有無、筋弛緩使用の有無、カテコラミン使用の有無を比較した。【結果】カテーテル冷却群の初期体温は40.7℃と41.7℃、目標体温は37℃を設定した。冷却速度は0.4℃/hおよび0.3℃/hであった。一方、体表冷却群の初期体温は41℃、40.6℃、39.1℃であった。厳密な目標体温は設定せず過冷却を防ぐために37℃台に至った時点で冷却終了としたが、冷却速度は2~3℃/h であり、カテーテル群より急速であった。冷却中のシバリングはカテーテル群では認めなかった。体表冷却群では1例のみ冷却中に筋弛緩薬を使用したが、その他の2 例ではシバリングを認めなかった。不整脈の出現も両群で認められなかった。また両群共に冷却中にカテコラミンを要する事はなかった。血管内冷却カテーテルによる冷却法と従来の体表冷却法を比較したが冷却速度、有害事象の出現でカテーテル法が優れている結果は得られなかった。【結語】今回の比較では血管内カテーテル冷却法が従来の体表冷却法より有効である点は見いだせなかった。DP48-5 重症III度熱中症に対する血管内体温管理システム(サーモガードR)導入例の特徴日本大学 救急医学 救命集中治療医学分野酒井 康行、桑名 司、伊原 慎吾、澤田 奈実、堀 智志、小豆畑 丈夫、木下 浩作【はじめに】熱中症ガイドライン2015 では深部体温が38℃台になるまで積極的な冷却処置を短時間で行うことが重症化を避けるために重要とされている。新たな治療法として血管内体温管理システム(サーモガードR)が保険適応となったが重症熱中症に対する有効性は明らかではない。【目的】重症III度熱中症にサーモガードを用いた症例の予後を含めた特徴とサーモガードの導入・施行時間を検討する。【方法】2015年6 月1 日から8月25 日に集中治療室でサーモガードを導入した臓器障害2 つ以上を満たす重症III度熱中症について、診療録から検討した。【結果】対象は4症例、生存3 例、死亡1例であった。生存例と死亡例(生存: 死亡)を比較し、入院時のAPACHEIIスコアは 23.3 ± 2.8(平均 ± 標準偏差、以下同):30、入院中の最高深部温は40.1 ± 0.7 : 41.3(℃)、サーモガード導入時の深部温は39.3 ± 1.2 : 40.9(℃)であった。入院からサーモガード導入までの時間は231.3 ± 86.6 : 100(分)サーモガード導入から38℃台に達するまでの時間は93.3 ± 153.1 : 720(分)、サーモガード施行時間は956 ± 218.1 : 3816(分)であった。生存3例のICU退室時のGCSは全例14点であった。【考察】死亡例は入院時から重症であり、サーモガードを迅速に導入したにも関わらず、38℃台に達するまでの時間、施行時間共に長い傾向があり、体温コントロール困難であった。体温コントロールに難渋するケースでは、追加の治療法も検討する必要があると考えられた。どのような症例にサーモガードを用いるか現時点で明確な基準はないが、III度熱中症の中でも入院時APACHEIIスコアが高値などより重症例に、他の治療と並列で早急に導入し、早急に体温を下げるべきであると考えられた。【結語】サーモガードを導入した重症III度熱中症の中の死亡例は入院時から重症であり、サーモガード導入後も体温コントロール困難である特徴がみられた。DP48-6 急性汎発性発疹性膿疱症に対しガンマグロブリン大量療法を行った1 症例帝京大学医学部附属病院麻酔集中治療科長谷 洋和、杉木 馨、杉山 貴康、高田 真二、宇野 幸彦、澤村 成史【症例】55歳女性。【既往歴】30代から糖尿病でインスリン治療中、54歳から慢性腎不全により維持透析。透析液、クエン酸・酢酸によるアレルギーあり。【臨床経過】呂律障害、嘔気嘔吐を訴え近医を受診したところ脳出血と診断され手術目的に当院に搬送となった。頭部CTにて小脳体部中心に脳出血を認めたため同日開頭血腫除去術施行となった。手術中にSSI予防としてセファゾリンが投与されていた。ICU 入室後血圧コントロールのためニカルジピン、潰瘍予防のためにランソプラゾールが投与された。術後2日目より顔面を中心とする痙攣が出現すたためホスフェニトインが投与開始となった。術後3日目にアシドーシス、高カリウム血症が進行してきたため透析施行となった。維持透析の際に無酢酸であるバイフィル透析剤を使用しているという情報は聴取していたのだが、院内に在庫がなかったため同じく無酢酸であるカーボスターを用いた。透析を終了したころより両上肢・肩を中心にびまん性の膿疹が出現し,薬剤性の急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)の診断となった。水溶性プレドニン40mgの開始とともに、被疑薬であるセファゾリン、ホスフェニトイン、カーボスターは中止とした。術後4日目には口唇部、眼瞼周囲にびらんは認めなかったが上半身すべてに膿疹が出現したため増悪傾向と判断し、グロブリン製剤400mg/kg5日間の投与を開始とした。術後8 日目より膿疹は消退し、落屑に変化した。【結語】AGEPはスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群と並ぶ重症型の薬疹である。鑑別は容易であるが重症化すると致死率が高いため迅速な対応が求められる。被疑薬の中止のみで軽快することも多いがステロイド、ガンマグロブリン、血漿交換といった治療戦略を念頭において救命していくことが重要である。