ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-594-DP45-1 肝切除術中のPringle法による血行動態変化の検討1)九州大学病院 手術部、2)九州大学病院 集中治療部、3)九州大学大学院 麻酔・蘇生学白水 和宏1)、徳田 賢太郎2)、藤吉 哲宏3)、瀬戸口 秀一1)、外 須美夫3)【目的】肝臓切除手術ではpringle maneuver(pringle)が出血をコントロールする手段として用いられる。Pringleに伴う血圧変動には個人差がある。我々は、pringleがもたらす血行動態変化に影響を及ぼす因子と予測因子に着目した。【方法】当院で待機的肝臓切除術を受けた患者でEV1000(Flo Trac, Edwards lifesciences Corporation)を用いて観血的動脈圧と中心静脈圧を測定した症例(肝移植ドナー14 名、肝疾患患者13名:Child-Puph分類 A)を対象に後ろ向きに検討した。麻酔維持は全例、吸入麻酔薬とレミフェンタニルの併用で行われた。平均血圧(MAP)、心拍数(HR)、心係数(CI)、体血管抵抗(SVR)、一回拍出量変化(SVV)、中心静脈圧(CVP)、ICG負荷試験、99mTc-GSA検査の値を麻酔記録とカルテから抽出し、pringle前後でのそれぞれの値と血圧の変化との関連を検討した。数値はpringle施行前5分間の平均値、pringel施行時の血圧が最大となる時点でのそれぞれの値を抽出した。【結果】肝移植ドナー群ではpringleにより有意にMAPは上昇し、SVR、HR も上昇、SVは減少した。一方、肝疾患群でも同様にMAP、SVRは上昇したもののHR、SVは変化しなかった。両群間の違いとしてpringle施行までのin-out balanceが肝疾患群で有意に大きかった(p< 0.05)。また両群において血圧の変化と相関する因子はなかったが、血圧上昇に体血管抵抗上昇が最も強い相関を認めた(R=0.56)。【考察・結論】血圧変化の予測因子は見いだせなかったが、両群ともにpringleにより血圧の上昇が観察され、その原因として体血管抵抗の上昇によるものが大きい可能性が示唆された。体血管抵抗値を直接測定するのは困難だが、今後は液性因子など血圧上昇の原因の検索が望まれる。デジタルポスター 45 消化器 2月14日(日) 11:00~12:00 デジタルポスターブース5DP45-2 エンドトキシン吸着療法の施行の有無で下部消化管穿孔の症例検証1)東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター、2)昭和大学医学部 救急医学講座谷河 篤1)、清水 敬樹1)、濱口 純1)、荒川 裕貴1)、鈴木 茂利雄1)、萩原 祥弘1)、金子 仁1)、光銭 大裕1)、森川 健太郎1)、三宅 康史2)【はじめに・背景】ABDO-MIX、EUPHAS の結果やEN69ST膜の登場によりSIRS患者に対する血液浄化に関して依然として議論がある。従来、我々はSIRSを伴う下部消化管穿孔に対して積極的にエンドトキシン吸着療法(以下、PMX-DHP)を施行している。下部消化管穿孔は、汎発性腹膜炎から敗血症、多臓器不全に至る急性腹症であり、早期の緊急手術、全身管理が重要である。術後、集中治療室(以下、ICU)に入室し、PMX-DHP を施行する症例は散見される。【目的】下部消化管穿孔におけるPMX-DHP の施行による影響を検証する。【対象・方法】院外で発生し下部消化管穿孔と診断し、緊急手術を施行した症例を診療録、レセプトを参考に後ろ向きに集積した。対象期間は2010年4月~2015年3月の5年間で、術後にICUに入室しPMX-DHPを施行した群(P 群、9例)とHartmann 手術の術後にICUに入室しPMX-DHPを施行しなかった群(N群、7例)とし、来院時のvital、来院から手術室までの時間、手術時間、ICU滞在日数、入院日数、医療費を比較した。【結果】来院時のvital、意識レベルに差は認めなかった。来院から手術までの時間は、P群:409分、N群:212分と、約2倍の差を認めた。手術時間は、P群:163分、N群:206分とあまり差を認めなかった。ICU 滞在日数は、P 群:10.1 日、N 群:3.8 日であり、入院日数は、P 群:43.7 日、N 群:21.8 日と、P 群が著明に長かった。また、医療費は、P 群:480258 点、N 群:174841 点と、約2.5 倍以上の差を認めた。【結語】下部消化管穿孔でPMX-DHPを施行する症例は重症であり、ICU滞在日数、入院日数は長くなる傾向があり、医療費が拡がることが予想されるため、意識して治療に望むべきである。DP45-3 門脈ガス血症を呈していたにも関わらず、保存的治療により軽快した非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)の2 症例香川労災病院 麻酔科友塚 直人、坂本 里沙、林 久美子、住吉 公洋、岡部 大輔、鈴木 勉、戸田 成志、小野 潤二、北浦 道夫【症例1】69歳、男性。高血圧、糖尿病の既往があった。3年前および半年前に経皮的冠動脈形成術施行された。左下腹部痛を主訴に当院を受診した。バイタルは安定しており、血液検査でWBC 11100/ μ L、CRP 0.1mg/dL、動脈血液ガス分析でPH 7.37、BE-1.4mmol/Lであった。腹部CTで門脈内のガス像と回腸一部に造影不良を認め非閉塞性腸間膜虚血症(Non-obstructivemesenteric ischemia; NOMI)を原因とする門脈ガス血症(Hepatic portal venous gas; HPVG)と診断した。心臓超音波検査でEF25% と低下しており、腹部CT で明らかな腸管壊死所見がなかったことから保存的治療の方針とした。バイタル、検査データとも問題なく第2 病日に施行した腹部CT では門脈ガスは消失しており同日ICU退室となった。【症例2】82歳男性。肺癌に対して放射線化学療法施行中であった。右下腹部痛を主訴に当院を受診した。バイタルは安定しており、血液検査ではWBC 1500/μ L、CRP 0.7mg/dL、動脈血液ガス分析ではpH 7.47、BE -1.0mmol/Lであった。腹部CT で門脈内のガス像と小腸の一部に造影不良と腸管壁肥厚・気腫を認めNOMIとそれに伴う腸管壊死を原因とするHPVG が疑われた。緊急開腹術を施行したが腸管壊死は認めず試験開腹にて終了となった。翌日に施行した腹部CTでは門脈ガスは消失しており同日ICU退室となった。NOMIは血管の器質的閉塞を伴わない末梢循環不全による腸管虚血であり、虚血が不可逆的になると腸管壊死を引きおこす。一方HPVGは腸管虚血・壊死を示唆する所見であり予後不良とされてきたが、近年保存的治療で軽快する報告も多い。腸管壊死の有無を評価する因子として定まったものはないが、本症例では2例とも炎症反応や代謝性アシドーシスは軽度で腸管壊死を示唆する所見に乏しかった。HPVGを伴うNOMIにおいても腸管壊死の有無を慎重に判断し治療の適応を決定することが重要と考えた。