ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-587-DP41-4 当院における身体抑制の見直しについて市立函館病院 3階南ICU 病棟十文字 英雄、本田 周司、菊地 智、北村 里絵、和田 望美、酒井 香、辻口 直紀【はじめに】 当院では気管挿管患者や不穏、せん妄の状態にある患者に対して身体抑制(以下抑制)をしている。2013 年よりCAM-ICU を導入し、ストレスの軽減のため、見守りにて抑制を解除するスタッフも増えていったが、同時に計画外抜去の事例も目立つようになってきた。そこでICU での抑制基準を見直す必要があり、現在使用している抑制基準と患者背景を検証したので報告する。【方法】 2014年1月から2015 年の5月までの約1 年間における計画外抜去事例の患者背景を分析し、ICU独自の抑制基準マニュアルを作成。【結果】 インシデントは33 件で最も多かったのが、胃管の15件(44%)、次いで動脈ラインの8件(23%)、気管チューブの5件(15%)であった。年齢別では70代の11 名(32%)と80代の10 名(29%)が多く、発生時間では16~19時の8 件(32%)と20~23 時の11 件(32%)が多かった。意識レベルはJCS2 が11 名(32%)、JCS3 が20 名(59%)で鎮静患者においてはRASS+1が9名(26%)と多かった。さらにCAM-ICUに関して7名(21%)の患者が陰性ではあったが、JCS1で痛みがある場合に計画外抜去されていた。【考察】 患者背景として70 代以上でJCS2 以上かつ鎮静スケールでRASS-1、さらに20 時以降は注意する必要がある。またCAM-ICUが陰性でも夜間帯で、さらに痛みなどが加わることで、注意力が低下し、インシデントに発展する可能性もある。これらより抑制基準としては、消灯以降で70歳以上、またJCS2以上もしくはRASS-1かつ疼痛のある患者には抑制を開始する。ただしマンパワーのある状況において可能な範囲で抑制を解除し、ストレスの軽減を図ることも重要である。今後も新たな抑制基準を使用し、患者の権利を最大限尊重したうえで患者の安全を守り、さらに治療が円滑に行えるようにしていくことが重要である。【結論】現在使用している抑制基準と患者背景を検証し、ICU独自の新たな抑制基準を作成した。DP41-5 安全帯フローチャートの導入と効果~安全帯の適正使用を目指して~公立陶生病院 集中治療室濱本 実也、生駒 周作、鈴木 麻里菜、川瀬 正樹【はじめに】ICU では、安全上の理由から抑制帯などの拘束具(以下、安全帯)を、患者や家族の同意の下で使用することがある。一方で、どのような患者に対し安全帯を使用するのか明確な基準はない。今回、安全帯の適正使用と自己抜管などの重大な事故の防止を目的に「安全帯フローチャート」を作成、導入し、その効果を検討した。【方法】安全帯フローチャート導入前(2014年7月1日~8月9日,53名,延べ入室日数131 日)と導入後(2014年9月1日~10月9日,40名,183日)での日勤帯での安全帯使用率(一時的でも使用した場合には「使用」と判断し、1日1dateとして集計)を比較。また、導入前(2013年8 月~2014年7月)と導入後(2014年9月~2015年8月)の自己抜管及びルート類の自己抜去数を比較。分析には、統計ソフトSPSS ver.21を用いた。【倫理的配慮】本研究はA 病院看護研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果・考察】安全帯フローチャート導入前後での安全帯使用率に有意差は認めなかった(35.9% vs. 43.7% ; p = 0.163)。これは、導入後の患者の方が生命維持装置使用患者が多かった(38.5% vs. 73.2% ; p<0.001)ためと考えられた。生命維持装置を使用している患者の安全帯使用率を比較した結果、安全帯使用率は有意に減少していた(70.0% vs. 48.5% ; p=0.009)。せん妄発症率に有意差は認めなかった(44.7% vs. 55.7% ; p=0.193)。また、ルート類の自己抜去数を比較した結果、安全帯フローチャート導入後に有意に減少していた(17 件 vs. 10 件 ; p < 0.05)。また、自己抜管も減少傾向を示した(2件 vs. 0件)。今回、安全帯フローチャートの導入により、自己抜管やルート抜去などを増やすことなく、安全帯の使用率を低下させることができた。安全帯の適正使用を検討する上では、このような実施基準の明確化が有用であると考えられた。DP41-6 ICU 経験1 年未満の看護師のインシデント報告要因分析 ―教育課題の検討―愛知医科大学病院 看護部河合 真由美、冨石 香代子、萬谷 和代【目的】ICU経験1 年未満看護師のインシデント報告書から初年度に必要な教育課題を検討する。【方法】H26年5月~H27 年3月の、A病院周術期集中治療室配属1 年未満の看護師(部署異動者38名、新卒者14名)のインシデント報告書を対象とし、P-mSHELLモデルを用いて分析する。【結果】当事者要因関連の報告書は部署総数209件中159 件で、部署異動者128 件(61%)、新卒者31 件(15%)だった。最多報告は『ドレーン・チューブ(以下チューブ)』関連で84/159件(52.8%)、次いで『薬剤』関連34/159件(21.3%)だった。『チューブ』関連内訳は、自己抜去41 件で抑制なしの事例26 件を含んでいた。次は自然抜去17 件、三方活栓操作間違いが10 件で、シリンジポンプ使用時7件を含んでいた。ルート類の自己抜去後再挿入率はICU経験1年未満者38.3%、配属1年以上者では26.7%だった。『薬剤』関連では過剰投与6 件の他、製剤管理の誤り等多様な内容だった。インシデント要因は確認不足が19 件だった。【考察・結論】A病院はH26 年に新病院が開院した。周術期集中治療室8 床は対象患者を拡大して28 床になった。看護師が大幅に増員され、ICU経験のない看護師が約2/3を占めた。また、指導者不足があった。インシデント報告分析結果は日本集中治療医学会の調査同様、『チューブ』と『薬剤』関連が多かった。部署異動者では『チューブ』関連が76/128件(59.3%)と多かった。自己抜去の多発は、せん妄症状や事故発生時の患者への影響等の認識不足、抑制マニュアル不備が要因と考えられた。ルート類の自己抜去後再挿入率が40%以下だったことより、不要なルートがあったと推察された。身体抑制時の自己抜去発生は、抑制方法の改善が必要と思われた。シリンジポンプ関連のトラブルから、シリンジ交換の安全・確実な方法の教育が必要と考えられた。確認不足事例より、ダブルチェックの意義の再確認や啓蒙活動が必要であることが明らかになった。