ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-574-DP35-1 人工呼吸下の小児・乳児に対するヘッドアップと分泌物の気管内挙動に関する実験的検討1)東京医療保健大学大学院 看護研究科、2)筑波大学附属病院 医療機器管理センター斉藤 岳史1)、赤星 博和2)【目的】米国の小児VAP バンドルでは、成人同様、30~45°の角度でヘッドアップすることが推奨されている。しかし、小児患者にはカフなし気管チューブが使用されるため、ヘッドアップによって口腔内分泌物の垂れ込みが増え、却ってVAPを誘発することが懸念される。そこで今回、小児の模擬気管を用いた実験により、人工呼吸下のヘッドアップの角度およびPEEP 値が、分泌物の垂れ込みにどのように影響するかを検討した。【方法】1歳児の気管と同寸法のシリコンチューブと小児用テスト肺で模擬気管を作製し、人工呼吸器Puritan Bennett 840(Covidien)に接続したカフなし気管チューブを挿入した。陽圧換気の状態で、模擬気管と気管チューブの隙間から、唾液と同等の粘度に調整した着色液を注入し、その挙動を観察した。具体的には、ヘッドアップ角度0, 15, 30, 45°、PEEP値0, 3, 5, 8 cmH2Oの各条件について、着色液が気管チューブの先端を超えるまでの時間を計測した。【結果・考察】ヘッドアップがない(0°)場合、PEEP値に関係なく、600秒の観察時間の間に垂れ込みは見られなかった。それ以外の条件では、ヘッドアップ角度が大きいほど、またPEEP 値が小さいほど、垂れ込みが速くなる傾向が認められた。とくに角度を45°にしたときには、PEEP 値を大きくしても、垂れ込みが顕著に速くなった。この結果は、ヘッドアップ角度が大きいとPEEP による垂れ込み防止効果が薄れることを意味しており、カフなしチューブを用いる小児の人工呼吸において、ヘッドアップの設定を慎重に行うべきであることを示唆する。今後、実験方法等を工夫してより臨床に近い条件を再現し、ヘッドアップ角度およびPEEPの至適範囲について検討する必要がある。デジタルポスター 35 小児・新生児② 2月13日(土) 13:30~14:30 デジタルポスターブース5DP35-2 気道閉塞所見を認めた頸部リンパ管腫に対して選択的に気管切開を行った小児の2 例1)滋賀医科大学 救急・集中治療部、2)滋賀医科大学 麻酔学講座、3)滋賀医科大学 救急集中治療医学講座清水 淳次1)、橋本 賢吾1)、岸本 卓磨1)、今宿 康彦2)、山根 哲信1)、田畑 貴久3)、辻田 靖之1)、江口 豊3)【はじめに】リンパ管腫は頸部に好発し、急速な腫脹の進行により気道狭窄症状を呈することがある。リンパ管腫に隣接する血管や神経温存のため、外科的切除を回避しOK-432局所注射などの硬化療法が第一選択肢となることが多い。OK-432局所注射後は一時的な腫脹や増大傾向を示すことがある。高度の気道圧排所見を呈し、OK-432注入および選択的気管切開を行った2例の小児例について報告する。【症例1】5ヶ月男児、左頸部の腫脹を認め画像検査によりリンパ管腫と診断、外来経過観察中であった。発熱および、喘鳴が出現し救急外来受診。抗生剤治療での改善乏しく、喘鳴増悪、SpO2 80% に低下し、気管挿管。CT で著明な気管圧排所見を認めた。気管切開を行い、OK-432注入を実施。一時的な腫脹増悪の後、縮小を認め5 週後に気管切開カニュウレを抜去した。【症例2】5 歳男児、生下時より右頸部に腫脹を認め、リンパ管腫と診断された。無症状であったが、著明な気管圧排所見を認め、気管挿管の上OK-432注入を実施した。一時的な増大および腫脹を認めたが縮小は認めなかった。長期間の治療が予測され、安全な気道管理のため気管切開を行った。30日後に2度目のOK-432注入を試みたが、液体の穿刺吸引が不可能であり、OK-432注入を断念した。家族に気管切開管理を指導し外来経過観察となった。1年10ヶ月後MRIで著明な腫瘤の縮小を認めたため、1年11ヶ月後に気管切開カニュウレを抜去した。【考察】頸部リンパ管腫は急速な増大により気道狭窄症状を呈し迅速な気道確保を要することがある。OK-432注入は一時的な炎症反応により腫脹増大がみられることがある。また、注入後に期待したような縮小がみられない場合もある。気道圧排所見を認める小児の頸部リンパ管腫の管理・治療においては第一に安全な気道管理が必須であり、治療選択および気管切開の時期について十分に検討し治療にあたる必要がある。DP35-3 当院における小児敗血症性ショック患者へのEarly Goal-Directed Therapyの検討1)東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部、2)久留米大学 医学部 小児科学講座鴻池 善彦1,2)、居石 崇志1)、渡邉 伊知郎1)、本村 誠1)、中山 祐子1)、新津 健裕1)、齊藤 修1)、清水 直樹1)【背景】敗血症性ショックにおけるEarly Goal-Directed Therapy(EGDT, 2001 年)は、その後の敗血症性ショックの治療を変える契機となった。成人領域ではその是非の検討が進められているが、小児領域では未だその検討が少ない。本検討は小児の敗血症性ショック患者を対象に、EGDTアルゴリズム遵守の現状把握とその有効性について後方視的に検討した。【方法】2010年3月から2014 年12 月までの4 年10 か月間に、当院PICU へ入室した敗血症性ショック患者35 人を対象に、診断からEGDT アルゴリズムにおける各治療ステップまでの経過時間を算出した。またその後のvital signの正常化や乳酸値の変化を記録し、EGDTの遵守がこれらに与える影響について考察した。【結果】治療ステップに関して、酸素投与、60ml/kgボーラス投与、抗菌薬開始、気管挿管、CVL 確保、強心薬開始の6 項目を検討した。EGDT の遵守率は高いもので酸素投与(5 分)57.1%、抗菌薬開始(15分)40.0%、気管挿管(60 分)37.1% にとどまり、過半数に達したのは1 項目のみであった。またそれぞれの治療ステップに関して、遵守・非遵守の2群間で心拍数、乳酸値を比較した結果、いずれにも有意差を認めなかった。各治療ステップまでの経過時間と心拍数、乳酸値との相関においては、60ml/kgボーラス投与と心拍数の間にのみ相関を認めた(Spearmanの順位相関係数、p<0.01、相関係数0.535)。【考察】小児の敗血症性ショック患者においてEGDT アルゴリズム遵守率はいまだ低い現状が示めされた。また治療アルゴリズムを遵守することはvital sign やバイオマーカーの正常化には関連しないとの結果を得た。しかし、迅速なvolumeresuscitaiotnに関しては、循環動態の安定化に寄与する可能性があると考えた。