ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-569-DP32-4 Fusobacterium nucleatumによる重篤な膿胸の1 症例長崎みなとメディカルセンター市民病院 集中治療科小寺 厚志【はじめに】糖尿病症例において,口腔内の不衛生な環境が契機となったFusobacterium属による重篤な膿胸の1症例を経験したので報告する。【症例】 67 歳の女性(身長147cm,体重80kg)。糖尿病,高血圧,陳旧性脳梗塞に対し,内服加療中であった。数日前より体調不良を認め,徐々に意識状態が悪化したため,近医へ搬送となったが,精査にて左胸腔全体を占拠する膿胸を認め,加療目的で当院へ転院となった。意識状態はGlasgow Coma Scale;E2V2M4 の8 点,心拍数;115 回/ 分,血圧;121/78mmHg,呼吸数;28回/分,体温;38.3℃,酸素飽和度;96%(10L/分のO2マスク)であった。左肺の呼吸音は減弱し,また,口臭が強く多数の齲歯を認めた。血液生化学所見は,白血球数;15900/mm3,CRP値;27.94mg/dlで,動脈血血液ガス所見(10L/分のO2マスク)は,PaO2;80.3mmHg,PaCO2;29.4mmHg であった。胸部X 線写真では左肺野の透過性は著明に低下し,胸部CT では多房性の膿瘍貯留により肺は圧排されていた。左胸腔穿刺による約1000ml の膿汁ドレナージ後も呼吸状態は改善せず,人工呼吸管理を行った。以後,タゾバクタム・ピペラシリン,クリンダマイシンの投与と間欠的胸腔内洗浄を開始したところ,炎症所見および呼吸状態も徐々に改善した。第5病日には人工呼吸管理より離脱可能となり,膿汁培養にてFusobacterium nucleatumが検出された。第16病日には左胸腔ドレーンを抜去し, 膿胸の再燃なく, 第30病日に近医へ転院となった。【考察・結語】Fusobacterium属はグラム陰性嫌気性桿菌で, 口腔内, 消化管における常在菌である。Fusobacterium属のなかでも,Fusobacterium nucleatum は基礎疾患のある人に感染症を誘発し,特に免疫不全状態時に,咽頭や扁桃から波及する重篤な感染症を引き起こしうると報告される。本症例も,糖尿病を基礎疾患として有し,不衛生な口腔内環境が契機となり重篤な膿胸へ進展した1 症例であった。DP32-5 Capnocytophaga感染症による電撃性紫斑病の一例1)新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター、2)新潟大学医歯学総合病院 集中治療部上村 夏生1)、鈴木 友康2)、青木 信将2)、本田 博之2)、岡部 康之1)、林 悠介1)、新田 正和1)、本多 忠幸1)、遠藤 裕1)【症例】51 歳男性【既往歴】高血圧、高尿酸血症【ペット歴】トイプードルを飼育【現病歴】20XX年7月1 日夜から悪寒があり翌日近医を受診した。体温が38.5℃であったが診察上異常はなく感冒薬を処方された。7月3日足の皮疹が出現し、再度近医を受診したところ、ショック状態であり敗血症が疑われ当院へ搬送となった。【来院時現症】脈拍数:124/min 血圧:105/50mmHg 呼吸数:30/min SpO2:96%(O25L/min)意識:GCS E4V5M6 体温:36.1℃ 頭頸部:顔面に点状出血あり 胸部・腹部:異常なし 四肢:両側の前腕・下腿に紫斑あり 血液検査所見:WBC 17070/ μ l Plt 1.8 × 104/ μ l CRP 35.58mg/dl PCT 388.08ng/ml PT-INR 3.23FDP 338.5μg/ml D-D 158.3μg/ml BUN 49mg/dl Cre 4.88mg/dl CT:脾萎縮を認める。炎症のフォーカスは特定できず。【経過】敗血症性ショック・急性腎不全・DICと診断し、気管挿管・人工呼吸器導入、昇圧剤および血液透析により全身管理を行った。CT上蜂窩織炎はなく、血流障害もなかったため四肢の紫斑は感染に伴う電撃性紫斑病と考えた。各種培養提出の上MEPM+LZD+MINO を開始した。7月7 日、血液培養からCapnocytophaga Sp. が検出された。MEPM→ SBT/ABPCと抗菌薬を変更し治療を続けた。その後全身状態は徐々に改善し、人工呼吸器管理・昇圧剤・血液透析は適宜終了となった。紫斑も軽快したが、右第5 趾と左第2-5 趾の先端は壊死したため、デブリドマンを行った。壊死に伴う炎症反応が持続しており、現在も治療継続中である。【考察】Capnocytophagaは犬や猫の口腔内常在菌であり、多くは咬傷により感染する。世界での報告は約250例と稀であるが、発症すると急激に敗血症をきたし、致死率は30%とされる。本患者はトイプードルを飼育していたが咬傷は無かった。自身でよく四肢を掻把し皮疹ができていた事、顔などをよく舐めらていた事から、皮膚もしくは粘膜の傷を通して感染が成立したと思われた。DP32-6 A 群β溶血性連鎖球菌による急性汎発性腹膜炎から救命し得た1 症例1)藤枝市立総合病院 心臓血管外科、2)藤枝市立総合病院 麻酔科、3)藤枝市立総合病院 外科鈴木 一周1)、酒井 宏明2)、白石 義人2)、山中 裕太3)、西山 元啓3)【はじめに】 急性汎発性腹膜炎症状から発症し救命し得た劇症型A群β溶血性連鎖球菌感染症例を経験した。【症例】 73歳、女性。特記すべき既往歴はない。他院での婦人科検診処置後から帯下が増加。検診3日後に腹痛で当院に救急搬送された。来院時に白血球数2100、CRP1.4、腹部CTでは小腸の肥厚と右卵巣腫瘍があり、当初腸炎と卵巣腫瘍茎捻転を疑われた。来院4時間後に腹痛の増悪とショック状態となり、輸液負荷とノルエピネフリン約 0.08μ g/kg/分を投与して収縮期血圧は70~80mmHg、心拍数130/分、体温39.0度であった。消化管穿孔所見は乏しかったが、来院8時間後に緊急試験開腹手術を行った。全身麻酔導入後の収縮期血圧はドパミンとノルエピネフリン併用で80~120mmHg、心係数は3.0~3.5L/ 分/m2 であり敗血性ショックを疑った。腹腔内に充実性卵巣嚢腫は存在したが捻転と穿孔性腹膜炎はなかった。米のとぎ汁様の腹水の採取培養と腹腔内洗浄ドレナージを行った。第1病日は人工呼吸管理下にエンドトキシン吸着療法を含む集中治療を行ったが血行動態は不安定であった。抗生剤はPIPC +TAZ13.5g/ 日、LVFX0.5g/ 日、VCM2.5g/ 日を投与開始した。急激にDIC も進行したためトロンボモジュリンα 12800 単位/ 日を投与した。第2病日に腹水よりA群β溶血性連鎖球菌が検出され、LVFXとVCMからCLDM600mg/日に変更しポリグロビン0.5g/日を投与した。第3 病日に白血球17900、CRP29.1 と最高値を示したが、血行動態は安定し、人工呼吸を離脱した。経過中利尿は良好で、菌は腹水からのみ検出された。【考察】 劇症型A群β溶血性連鎖球菌感染症は壊死性筋膜炎などで発症する「人喰いバクテリア」として知られている。本症例は同細菌としては非定型的な症状で発症し診断治療に苦慮した。迅速な開腹ドレナージと感受性のある抗生剤治療により救命することができた。 (尚、この発表に関して患者本人の同意を得ている。)