ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-563-DP29-4 持続血液透析により救命し得た急性カフェイン中毒の一例大阪市立総合医療センター 救命救急部山下 智也、重光 胤明、大川 惇平、森本 健、師岡 誉也、石川 順一、福家 顕宏、有元 秀樹、宮市 功典、林下 浩士本邦における急性カフェイン中毒は報告例が少なく,治療法は未だ一定しない.我々は致死量の急性カフェイン中毒に対して持続血液透析を行い,救命し得た症例を経験したので報告する.症例は境界型人格障害を有する21歳女性.自殺目的に市販のカフェイン約13g を服用し,近医に搬送された.胃洗浄後に全身状態が安定していたため帰宅となったが,翌日,自宅で意識障害を呈しているところを家人に発見されて救急搬送された.来院時,意識レベルは清明,血圧130/93mmHg, 脈拍数158 回/ 分,呼吸数20回/ 分,SpO2 99%(室内気), 体温38.5℃と洞性頻脈および高体温を認めた.輸液および体表クーリングにより一時的に頻脈は改善したが,来院約12 時間後には再度増悪し,血圧低下を伴ったため気管挿管されて集中治療室に入室となった.ランジオロール持続投与により頻脈の改善を図ったが奏功せず,大量輸液,ノルアドレナリン持続投与に反応しないショック状態が遷延したため,血中カフェイン除去を目的に持続血液透析を導入した.導入後約2 時間で頻脈は正常化し,それに伴いショック状態は改善した.第3 病日に持続血液透析を離脱,第4 病日にノルアドレナリン投与を中止し,抜管することが出来たため,第6 病日に精神科病棟に転棟となった.後日判明した血中カフェイン濃度は,持続血液透析の導入前は109mcg/mLと高値であったが,約6時間後に59.2mcg/mL,約48 時間後に1.8mcg /mL であった。考察:血中カフェイン濃度は臨床症状の改善に一致して経時的に低下した.急性カフェイン中毒において持続血液透析は症状の改善に有用であり、後日判明したカフェイン血中濃度からも持続血液透析は有用と考えられた.DP29-5 早期に持続血液濾過透析で治療した急性リチウム中毒の1 例名古屋第二赤十字病院 麻酔・集中治療部為近 舞子、井上 芳門、藤井 智章、伊藤 優、村橋 一、寺澤 篤、杉本 憲治、高須 宏江【はじめに】双極性障害の治療薬として広く使用されている炭酸リチウムは治療域と中毒域が近いため腎機能低下による排泄低下や過量内服により容易に中毒症状を引き起こす。今回中毒量のリチウムを内服した患者に対し早期より持続的血液濾過透析を施行した症例を経験したので報告する。【症例】38歳女性。双極性障害と診断され、近医で炭酸リチウムを処方されていた。来院2 時間ほど前に炭酸リチウム20000mg、アルプラゾラム 4mgおよびエスタゾラム 10mgを過量内服したとして独歩で来院した。来院時、意識障害(JCSI-1)を認め、心電図は洞調律でQTc の延長は認めなかった。ICU入室時には意識清明となっていた。内服量は中毒量に達していたため、血清リチウム濃度の結果を待たず血液浄化を施行することを決定し、来院3間後には持続的血液濾過透析を開始した。当初血清リチウム濃度の低下を確認するまで血液浄化を継続する方針であったが患者本人の強い退院希望があり11時間施行した時点で終了した(ピーク濃度は3.84 mmol/L)。家族の厳重な監視と外来通院を条件にICU 入室後24 時間で退院となった。外来で血清リチウム濃度が治療域以下に低下しているのを確認した。【考察】リチウム中毒の治療は補液と利尿を基本とし、炭酸リチウムは分子量が低く蛋白に結合しないため血液透析も有効とされている。今回は内服量が多かったため血中濃度の上昇を防ぎ、組織への移行を防ぐ目的で早期に血液浄化を開始しピーク濃度は予想値より低下させることができた。【結語】中毒量の炭酸リチウムを内服するも早期に血液浄化を導入することにより良好に管理し得た症例を経験した。当院での自験例他3 例(うち1例は透析施行)と共に文献的考察を加え報告する。DP29-6 HD 後にCVVHDF を行いQTc 時間を指標に透析を行いリバウンド現象を起こさずに治療し得たリチウム中毒の1 例川崎市立川崎病院 救急科土井 賢治、白川 和宏、近野 祐介、野口 啓、塩島 裕樹、伊藤 壮一、田熊 清継【背景】リチウム製剤は血中から細胞内に移行し血中に再分布する事で持続した血中濃度の上昇を来しうる。中毒域症例に対して血液透析が有効であるがその薬物動態の特徴から透析間欠期にリチウム血中濃度のリバウンド現象を来しうる。近年、HDに引き続いたCVVHDFの有用性が報告されている。今回、当院でも同様の治療で治療が奏功した症例を経験したので報告する。【症例】41歳女性。双極性障害で近医通院中。来院2 時間前に希死念慮で過量服薬。夫から救急要請。内服薬剤はリーマス 5000mg、リフレックス 570mg、コントミン 900mg、セパゾン 92mg。夫が嘔吐させたが食物残渣のみで薬塊は認められず。来院時、循環動態は安定。電解質異常なし。QTc 567msec であり延長あり。Anion Gap(以下、AG)は6.5と狭小化しリチウム血中濃度が中毒域にあることが推察された。無症状であり輸液負荷による利尿を図り経過観察目的にモニター装着下でICU入院。第2病日 朝QTc560msecと延長持続。経時的に心拍数50/minの徐脈となりAG狭小化が進行してきたことから透析を導入した。HDを4時間行いその後CVVHDFを開始。HD終了後、AG7.7と改善が認められた。血清リチウム濃度は即日検査不能であり、QT延長、AG を指標に透析の必要性を判断した。第3病日もQTc 延長があり同様の治療を行った。第5病日にはQT 延長は改善しておりCHDF 終了とした。第6病日もQT延長は認められず細胞内毒性は解除されたと考えられた。第7病日にはQT延長は認められず、第8病日に独歩退院した。【結語】リチウム中毒で心毒性を来している症例に対して、QTc延長を指標にHD およびCHDFを行うことで、リバウンド現象および致死的イベントを起こすことなく加療しえた一例を経験した。