ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-562-DP29-1 ホウ酸中毒の一例香川県立中央病院 麻酔科大西 淳司、林 裕之、谷津 祐一、武知 かおる、池田 智子、井上 一由、平崎 盟人ホウ酸はゴキブリなどの害虫駆除用に用いられているが誤食による中毒が多数報告されている。当初、細菌性腸炎からの敗血症性ショックを疑っていたが、皮膚障害からホウ酸中毒と診断した症例を経験したので報告する。症例は80歳女性、認知症があるが一人暮らしをしていた。下痢、嘔吐があり近医を受診したところ腎機能障害を認め輸液に反応せず無尿であり、意識障害もあることから当院紹介された。来院時呼びかけに反応なく、無尿でショック状態のためICU入室した。当初は細菌性腸炎からの敗血症性ショック、腎障害を疑い治療を開始した。抗菌薬投与、人工呼吸、カテコラミンによる循環補助、CRRT行うも治療に抵抗性であった。来院時全身に紅斑があり、次第にびらんとなり中毒性表皮壊死症(TEN)様の皮膚障害、口腔粘膜の潰瘍を認めたためホウ酸摂取の可能性を疑い家族に確認したところ、数日前に町内でゴキブリ駆除用のホウ酸団子を作り自宅に持ち帰ったとのことであった。経過中、難治性下痢、急性腎障害、横紋筋融解、骨髄抑制、敗血症を合併した。徐々に全身状態は改善、意識も回復したが腎障害は遷延し血液透析行いつつICU を退室した。その後血液透析からも離脱した。後に来院時のホウ酸血中濃度は1246μg/mlと異常高値であり、自宅の鍋におかゆ状の物が残っておりそれはホウ酸であることが判明した。認知症があり、ホウ酸団子を誤食したものと考えられた。ホウ酸中毒の症状は消化器症状、神経精神症状、肝・腎障害、循環抑制、皮膚障害など多彩であり特異的な治療はなく、対症療法が基本となる。重症のホウ酸中毒では血液透析が有効との報告がある。原因不明のショックにTEN 様の皮膚障害を伴えばホウ酸中毒を疑い病歴を確認する必要がある。デジタルポスター 29 中毒・体温異常・悪性症候群① 2月13日(土) 11:00~12:00 デジタルポスターブース9DP29-2 メトホルミン中毒が想定された過量服薬後の乳酸アシドーシスに対し、集学的治療が奏功した一例東京大学医学部附属病院 救急部集中治療部丹生谷 啓介、前田 明倫、早瀬 直樹、浅田 敏文、上田 吉宏、土井 研人、中島 勧、矢作 直樹【背景】2 型糖尿病治療薬のビグアナイドは副作用に乳酸アシドーシスが知られている。自殺目的に過量服薬を行った後に著名な低血糖・乳酸アシドーシスを来した症例に対して、メトホルミン中毒を想定した集学的治療が奏功した一例を経験したのでここに報告する。【症例】38 歳男性。2 型糖尿病・統合失調症のため内服加療中であった。自宅にて自殺目的に過量服薬を行った患者は、意識障害を主訴に家族の要請で救急搬送となった。当初家族および救急隊情報では眠剤の過量内服のみであった。来院後に意識障害の悪化と著明な低血糖と乳酸アシドーシスを認めたため、既往疾患と病歴から臨床的にメトホルミン中毒を疑った。尚、誤嚥性と考えられる肺炎を合併していた。糖補充、挿管・人工呼吸管理、炭酸水素ナトリウム点滴による可及的なアシデミアの補正の後、ICUにて高流量CHDF・血液透析を含めた集学的治療を行った。乳酸値は第二病日に最大33mmol/L に至ったが、治療が奏功し後遺症なく軽快するに至った。希死念慮が遷延したため、第9 病日に精神科病床に移動となった。後日、ICU 入室時のメトホルミン血中濃度146μ g/mLと著明高値が確認された。【考察】メトホルミン中毒による乳酸アシドーシスは、約30%に及ぶ高い致死率の報告もある。自験例では当初メトホルミン内服の有無・錠数ともに不明であったが、同中毒を想定した集学的治療を行い良好な経過を得た。後遺症なく救命に至った要因に関し、文献的考察を踏まえて報告する。DP29-3 急性血液浄化にて救命し得たメトホルミン中毒の一例1)兵庫県立尼崎総合医療センター 救急集中治療科、2)兵庫県立尼崎総合医療センター ER総合内科松本 優1)、恒光 健史1)、野田 健仁2)、鈴木 崇生1)症例は75歳女性。2型糖尿病、慢性腎不全のために近医通院中であった。当院搬送10日前頃より食事摂取が進まなくなったが、メトホルミンを含む各種処方薬を内服されていた。搬送当日、自宅でトイレに行こうとした際に動けなくなり当院へ救急搬送。来院時、意識レベルGCSE1V1M1、呼吸数24 回/ 分、血圧130/45mmHg、心拍数80bpm、体温36.0 度、酸素飽和度99%(室内気)であった。来院時動脈血液ガスではpH6.874と著明な代謝性アシドーシス、高乳酸血症、腎機能障害、血液凝固異常を呈しており、高度の乳酸アシドーシス、急性腎障害の診断でICUに入室とした。病歴・処方薬等からメトホルミン投与による乳酸アシドーシスを考えた。当初高度の乳酸アシドーシスに対して持続血液濾過透析法(CHDF)を行うも、代謝性アシドーシスの改善を得ることができず、循環が不安定であったものの血液透析(HD)を行うことにより乳酸アシドーシスの改善および全身状態の改善を得た。今回迅速な急性血液浄化を行うことによりメトホルミンによる高度の乳酸アシドーシスの一救命例を経験したので、若干の文献的考察を加えてこれを報告する。