ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-535-DP15-4 経皮的心肺補助装置搭載型Mobile CCU による劇症型心筋炎例の搬送済生会熊本病院 集中治療室中村 通孝、西上 和宏、柴田 啓智、管田 塁、高山 洋平、永野 雅英、高志 賢太郎、坂本 美賀子、上杉 英之、中尾 浩一【背景】劇症型心筋炎は急激に発症し、ポンプ失調や重篤な不整脈を併発して、急速な経過で心肺危機に陥り、時に死亡に至る。近年従来では救命困難であった劇症型心筋炎例が、大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping, IABP)、経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)、補助人工心臓(ventricular assistant device, VAD)の使用により救命可能となり、積極的な急性期救命治療が提唱されているが、すべての施設で施行できる治療ではなく、VAD治療可能な施設への搬送も重要となる。今回、劇症型心筋炎に対してIABP/PCPS を導入した直後、IABP/PCPS 搭載型Mobile CCU にて転院搬送した症例を経験したので報告する。【症例】元来健康な56 歳男性、1 週間前より上気道炎症状を認め、5日前から左下腿の腫脹と疼痛を認め筋痛症の診断で近医に入院。2日後39度台の発熱とCK:5025IU/L を認めた。この頃より胸部不快感が出現し、心エコーにて心嚢液の貯留と下壁の壁運動低下を認めた。さらに呼吸困難と心電図でのII/III/aVF/V1-4でのST 上昇を認めたため当院に紹介となった。緊急冠動脈造影検査では冠動脈に異常を認めず、心筋炎の疑いで心筋生検を施行した。ノルアドレナリン投与下で収縮期血圧は70mmHg 台であったため、IABP を留置しICUに入室した。帰室後、持続性心室頻拍と洞不全症候群が出現。心エコー上、心機能も低下傾向であったため人工呼吸器管理とし、PCPSと経静脈ペーシングを留置した。その後もvitalは不安定であり、VADでの加療も必要と判断し、転院搬送方針とした。当院に導入していたIABP/PCPS搭載型Mobile CCUを用い、2時間をかけて、合併症無く転院搬送できた。【考察】循環補助装置の進歩により、IABP/PCPS搭載型Mobile CCUでの転院搬送の必要性が予想される。搬送時に安全面で考慮したこと、必要であった機材、各職種間での連携など、改善点も踏まえ報告する。DP15-5 PCPS 下開腹術の経験1)久留米大学病院 臨床研修管理センター、2)久留米大学病院 高度救命救急センター増田 健1)、下条 芳秀2)、中西 未来2)、宇津 秀晃2)、高須 修2)、山下 典雄2)、疋田 茂樹2)、坂本 照夫2)【はじめに】十二指腸潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎、敗血症性ショックから心肺停止となりPCPS 導入下に開腹術を施行し救命できた症例を経験したので報告する。【症例】64 歳、男性。3日前より腹痛、下痢、食欲不振が出現し近医を受診した。内服加療するも腹痛は改善しなかった。搬入当日朝、気分不良あり救急要請された。救急隊によりショック状態と判断され、ドクターヘリにて当センター搬入となった。【既往歴】心筋梗塞、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病【経過】搬入時、意識清明。血圧85/47 mmHg、脈拍数98 / 分、呼吸数33 回/ 分、体温38.9℃。腹部CT 検査にて腹部全体にfree air、腹水を認め下部消化管穿孔を疑い緊急手術の方針となった。敗血症性ショックに対しては初期輸液療法、ノルアドレナリンを開始し、さらに心機能の低下に対してドブタミンを併用した。手術室にて全身麻酔を導入後、開腹直前に心室細動となりACLS に基づき心肺蘇生を開始した。除細動とアドレナリン投与にて一時的に心拍再開するも心室細動を繰り返したためPCPS、IABPを導入。導入後まもなく開腹手術を開始した。開腹すると十二指腸球部前壁に約1cmの穿孔を認め、縫合閉鎖、大網被覆術を行った。続けて心臓カテーテル検査を行ったが致死的不整脈を来すような病変はなかった。ICU帰室前の頭部 CT では明らかな低酸素脳症の所見は認めなかった。術後呼吸循環ともに安定し第2 病日にPCPS 離脱。また、意識レベルもGCS9T(E3VTM6)を確認できた。第3 病日IABP を抜去。第10 病日に人工呼吸器を離脱。第23病日には独歩にて転院した。DP15-6 病的肥満のうっ血性心不全患者に対するヘマトクリットモニタリング下ECUM の有用性堺市立総合医療センター 集中治療科村上 紗羅、熊澤 淳史、青柳 健一、小畠 久和、小原 章敏【はじめに】極度の体液過剰を呈したうっ血性心不全患者に対し利尿薬のみでの治療が難しい場合、ECUMを用いての積極的除水を行うことが考慮される。当院ではヘマトクリット(Ht)の推移をモニタリングし除水量を決定することにより、効率的かつ短期間に適切な除水を行うことが可能と考えている。今回、病的肥満のうっ血性心不全患者に対してECUMを用いて管理し得た一症例を提示する。【症例】38歳女性。受診3ヶ月前より咳嗽出現、10日前より臥床困難となり近医を受診した。低酸素血症、胸部レントゲン上のうっ血所見からうっ血性心不全と診断され、人工呼吸管理を行うも低酸素血症が遷延し当院紹介となった。来院時BP174/121mmHg、HR168bpm(Af)、CVP18mmHg、BW145kg(BMI58)。レントゲン上のうっ血所見の他、高度全身浮腫を認めた。高度肥満による高心拍出心不全と診断し、利尿薬とECUMの併用による除水を開始した。Htが一定となるように適宜除水量を調節し、少量の除水でHtが変動し始めた第7病日にはBW109kg、CVP7mmHgとなっており、この時点でECUMを終了した。第7病日に人工呼吸器から離脱し、第11病日にICUを退室した。【考察】うっ血性心不全に対し、Htモニタリング下でのECUMは、利尿薬による治療と比較して合併症を増やすことなく除水を可能にする報告があるが、今回のような大量除水に関する報告はない。Htが一定に保たれることは、Hbの喪失がない限り、血管内血液容量が一定であることを示し、Htを持続モニタリング下に除水速度を調節することで、本症例のような大量除水が必要な症例においても、腎機能低下、血栓塞栓症などの合併症を起こすことなくECUM を施行可能にすると考えられる。一方、今回の症例では、血管内容量を一定に保っていると推測される中でもCVP の低下を認めた。CVPは通常右室拡張末期容量と右室壁のコンプライアンスに規定されるが、浮腫によって生じる間質圧が大きく影響している可能性がある。