ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
526/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている526ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-524-DP10-1 破傷風に合併した抗リン脂質抗体症候群が疑われた巨細胞性動脈炎の1 症例1)潤和会記念病院 集中治療部、2)潤和会記念病院 麻酔科樋口 和宏1)、成尾 浩明1)、中村 禎志2)、濱川 俊朗1)破傷風,顎関節症,巨細胞性動脈炎は開口障害をきたす.また,抗カルジオリピン抗体(aCL)は抗リン脂質抗体症候群(APS)や全身性エリテマトーデスで上昇する.開口障害と構音障害で来院し,APS に合併した破傷風と診断した巨細胞性動脈炎(GCA)の患者を経験したので報告する.【患者】60歳台,女性【既往歴】特記事項なし【現病歴】来院3 か月前より両耳介部痛,開口障害が出現した.5 日前に構音障害,2 日前に尿便失禁が出現し,症状が改善せず救急要請した.【妊娠歴】2 回妊娠2回流産.【身体所見】JCS:I-2,構音障害,開口障害あり,両耳介部~両顎下部の圧痛,右側方視での眼球運動障害があった.【頭部MRI】拡散強調画像で左小脳脚と左放線冠,脳梁に高信号領域.【血液検査】Hb:11 g/dL,Plt:80 万/ μ L,Alb:2.7 g/dL,CRP:12 mg/dL,APTT:36.4 秒,aCL:19 U/mL.【経過】MRIで多発脳梗塞と診断しヘパリン静注を開始した.脳梗塞と流産歴およびaCL陽性よりAPSと考えた.開口障害は破傷風を疑い,抗破傷風グロブリンと破傷風トキソイドを投与し抗菌薬治療を開始した.入院14日目の血液検査でCRP:7.6 mg/dL, ESR(60 min):140 mmと炎症所見が持続していた点がAPSに矛盾していた.精査加療目的で膠原病専門診療科へ転院後,両顎の圧痛と開口障害はGCA に特異的な顎跛行と考えられた.さらに血管エコーでの浅側頭動脈描出不良やPositron Emission Tomography-CTでの胸腹部大動脈,両側鎖骨下,内頚動脈壁でのフルオロデオキシグルコース集積亢進からGCAと診断された.ステロイドと免疫抑制剤が投与されたが,転院67日目に広範な脳梗塞と出血性梗塞を発症して脳幹反射,自発呼吸が消失し転院72日目に死亡した.   【考察】GCAによる顎跛行を破傷風と誤診した.aCLの陽性所見はAPS の診断に有用であるが,GCA患者でもaCL 陽性を認めたとの報告があるため,APS と診断する際にはaCL陽性をきたす他疾患の除外を行う必要がある.デジタルポスター 10 内分泌・代謝・免疫 2月12日(金) 11:00~12:00 デジタルポスターブース10DP10-2 続発性副腎不全に起因するQT 延長症候群から心室頻拍をきたし、心停止に至った一例1)兵庫県立尼崎総合医療センター、2)兵庫県災害医療センター中村 順子1)、三木 竜介2)、菊田 正太2)、石原 諭2)、川瀬 鉄典2)【症例】56歳女性【現病歴】来院4ヶ月前から食思不振があり、13kgの体重減少があったが精査はされていなかった。来院当日に息切れが強く、会話不能になったため救急搬送。救急車内で意識レベルJCS10、橈骨動脈触知不能、モニター上心電図波形はwideQRS tachycardiaであった。【来院時現症】血圧測定不可、脈拍260回/分、SpO2 76%(10L酸素投与)、頸動脈触知不能、呼びかけに反応はあるが不穏状態、全身に点状の発疹あり【来院後経過】来院直後に意識レベル低下を認めた。心電図上wide QRStachycardiaが持続し、死戦期呼吸も出現したためnear CPAと判断した。直ちにCPR を開始し、電気的除細動後に洞調律復帰が得られた。血液検査上心筋逸脱酵素の上昇や電解質異常を認めなかった。冠動脈造影検査でも有意な狭窄所見なし。頭部、胸腹部の単純CT でも原因となりうる所見を指摘しえなかった。入院後も昇圧剤に反応しない低血圧が持続、また薬剤ではコントロール不良のTdPを頻回に生じ、血行動態の破綻をきたしたため、第3病日よりVA-ECMOでの循環管理を開始した。来院時から連日の心電図記録においてQT時間が延長しており、最長835msecまで延長を認めた。追加で施行した内分泌関連検査でACTH感度以下、コルチゾール0.8μg/dlと低値を認め、続発性副腎不全が疑われた。ECMOでの循環管理開始後第8病日に心筋生検施行後、ヒドロコルチゾンの投与を開始したところQT時間は著明に短縮し、正常上限近くまで改善を認めた。循環動態も安定し第14病日に転院となった。【考察】副腎機能不全によるQT時間の延長の報告は非常に稀である。原因不明のQT延長症候群の鑑別として、副腎機能不全は重要なものの1 つであると考えられるので、本症例に文献的考察を加え報告する。DP10-3 重篤なアナフィラキシーショックを繰り返した症例の原因薬剤をICUで同定し得た1 例1)佐賀大学 医学部 附属病院 集中治療部、2)佐賀大学 医学部 附属病院 麻酔・蘇生学講座、3)伊万里有田共立病院 麻酔科中村 公秀1)、三浦 大介2)、山田 友子1)、中川内 章1)、谷川 義則1)、松本 浩一3)、坂口 嘉郎2)麻酔中のアナフィラキシーの頻度は、1/2,000-1/2,5000 とされている。今回、我々は原因薬剤の同定に難渋し、アナフィラキシーショックを繰り返した症例を経験した。【症例】21 歳、男性。身長 179 cm、体重 75 kg。上部食道の粘膜下腫瘍に対して鏡視下食道切除術を予定されたが、手術開始直後にアナフィラキシーショックを来したため、手術中止とした。アドレナリン投与でvitalsign が改善した後、ICU へ入室し、翌日、抜管した。原因薬剤の同定のため、被疑薬5剤でプリックテスト、皮内テストを施行された。皮内テストでロクロニウムが陽性であったため、交差反応を考慮し、ベクロニウム、スキサメトニウムで同試験を行い、ともに陽性であった。再手術時は筋弛緩薬を使用せず、麻酔導入を行った。しかし、再度アナフィラキシーショックを来したため、手術中止とした。再び原因薬剤の同定のため、前回、試験を行わなかった薬剤10剤で静注試験によるアレルギーテストを行うこととなった。検査中に強いアナフィラキシー反応を来す可能性があることを考慮し、ICUで少量から徐々に投与を行う方針とした。ウリナスタチン投与の3分後に、全身の紅斑・膨疹、口唇・眼瞼の腫脹を認めた。症状出現後よりアドレナリンを投与し、血圧低下や呼吸状態の増悪は認めなかった。3 度目の手術の際は、筋弛緩薬、ウリナスタチンを使用しない方針とし、アナフィラキシーを来さず、手術終了した。術後、ICUへ入室し、翌日に抜管した。周術期に大きな合併症なく、術後8日目で退院となった。【結語】皮内テスト陽性の薬剤を除外したにも関わらず、再度アナフィラキシーショックを来した症例に対して、ICUで全身管理ができる状態でアレルギーテストを行うことで、アナフィラキシーの頻度の低い薬剤を原因薬剤として同定することができた。