ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-517-DP6-4 重症頭部外傷に対する脳低温療法施行時における血糖管理の意義.B-HYPO Study登録症例の検討.1)大阪府三島救命救急センター、2)山口大学脳神経外科、3)東京慈恵会医科大学救急医学、4)熊本大学医学部附属病院救急・総合診療部、5)山口大学医学部附属病院先進救急医療センター、6)香川大学救急医学、7)徳山中央病院 救急集中治療、8)山口県立総合医療センター小畑 仁司1)、杉江 亮1)、末廣 栄一2)、土肥 謙二3)、金子 唯4)、小田 泰崇5)、黒田 泰弘6)、山下 進7)、前川 剛志8)【目的】重症患者にみられるストレス高血糖は患者転帰に関連することが知られる.わが国で実施された重症頭部外傷(GCS 4-8)に対するRCT であるB-HYPO Study 登録症例における血糖値につき検討する.【方法】軽度低体温(H)群(32-34℃)94 名,体温管理(C)群(35.5-37℃)47 名について,来院時(Day0),翌日(Day1),復温前日(Day3),復温終了1 日後(Post)の血糖値と治療法および転帰との関係を比較検討した.本研究における血糖管理目標は70-180mg/dLであった.【成績】Day0, Day1, Day3,Post の血糖値(mg/dL)はH群で183.0, 170.5, 128.3, 127.0,C群で170.7, 150.0, 134.3, 132.6と経時的に低下した.血糖低下はC群ではDay0-Day1(-26.9, p=0.0049), Day1-Day3(-15.4, p=0.0495)で有意であったが,H群ではDay0-Day1(-9.5, p=0.28)に有意差を認めず, Day1-Day3 の低下(-38.5, p < 0.0001)のみ有意であった.転帰良好(GOSがGR, MD)と不良(SD, PVS, D)の血糖値を比較すると,患者全体ではDay1 において転帰不良群で有意に高く(151.2 ± 8.0 vs. 179.0 ± 8.0, p=0.016),H 群(160.1 ± 10.2 vs.184.0 ± 9.9, p=0.096),C 群(135.3 ± 12.9 vs. 168.6 ± 13.5, p=0.082)では転帰不良群で高い傾向がみられた.生死に関しては,患者全体でDay0(171.8 ± 5.9 vs. 196.6 ± 8.7, p=0.02)とDay1(151.8 ± 5.9 vs. 198.7 ± 10.4, p=0.002), H 群(160.5 ± 8.5 vs.197.3 ± 12.3, p=0.016)とC 群(137.7 ± 9.8 vs. 203.4 ± 19.4, p=0.004)ではDay1 で死亡群の血糖が高値であった.期間中の最低血糖値は59mg/dL,最高血糖値は503 mg/dLであった.【結論】血糖値は経過とともに低下するが,H群ではDay1の低下幅は有意ではなかった.両群ともにDay1の血糖値は死亡群で有意に高く,転帰不良群で高い傾向がみられた.血糖値は予後予測因子であるとともに,早期のストレス高血糖の管理が予後に影響する可能性が示された.DP6-5 頚髄損傷の経口挿管率と人工呼吸器離脱率1)神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科集中治療部、2)神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター浅香 葉子1)、瀬尾 龍太郎2)、朱 祐珍2)、蛯名 正智2)、山崎 和夫1)背景:頚髄損傷では、呼吸筋障害から痰トラブルなどの致死的合併症を伴うことが知られている。特に高位頚髄損傷は、横隔膜の障害を伴うため人工呼吸器のサポートが不可欠となることが多く、また完全麻痺症例も経口挿管率が高くなることが知られている。今研究では、受傷時点での呼吸器合併症の予測を可能とし致死的イベントを回避する目的で、頚髄損傷の経口挿管率と人工呼吸器離脱率を検討した。方法:当院に2012年1月から2014年12月まで頚髄損傷で入院した成人を対象とし、経口挿管、気管切開の有無につて後方的に確認。損傷部位、損傷程度と経口挿管率、人工呼吸器離脱率について検討した。結果:期間中対象となった患者は72 名、男性 55 名(76.4%)、平均年齢63.86 歳であった。入院中、9 名(12.5%)が経口挿管が必要となり、そのうち6名(8.3%)が気管切開を必要とした。損傷部位としてはC1-3損傷が7名(9.7%)で、これらのうち57.1%が経口挿管を必要とした。C4-5損傷が最も多く52 名(72.2%)で、うち7.9%が経口挿管を必要としなかった。ASIAの頚髄損傷分類では、ASIA A が7 名(9.7%)、ASIA B が7 名(9.7%)、ASIA C が20 名(27.8%)、ASICA D-E が38 名(52.8%)であった。経口挿管率はASIA A で85.7%、ASIA B で28.6%、ASIA C で5% であった。気管切開が必要となったもののうち4 名(66.7%)では人工呼吸器から離脱が可能であったが、排痰の問題で気切孔閉鎖には至らなかった。考察・結論:これまでの報告の通り、高位頚髄損傷の症例と、完全麻痺の症例はそれぞれ経口挿管率が高かった。しかし中位頚髄損傷であっても、ASIA A-Bであると経口挿管を必要とする可能性が高く、高位頚髄損傷であってもASIA A-B以外では気管挿管を必要としない症例がみうけられた。来院時の損傷部位とASIA分類を組み合わせることで、リスクが高い患者の予測ができる可能性がある。また、多くの挿管患者は退院時には人工呼吸器が離脱可能となっていた。DP6-6 当院心臓外科手術後の下肢対麻痺に対するbundle treatmentの取り組み自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科集中治療部簗瀬 史貴、小室 哲也、飯塚 悠祐、増山 智之、神尾 直、大城 国夫、中嶋 いくえ、青松 昭徳、讃井 將満緒言 心臓外科手術後に発生する下肢対麻痺は前脊髄動脈の虚血が原因と考えられている。開胸での胸腹部置換術の際には脳脊髄液ドレナージを行う事で下肢対麻痺の予防となる事が知られているが、発症後の治療は確立されていない。当ICU では下肢対麻痺を認めた症例に対し適正な酸素供給を目的にbundle treatment(心係数> 3l/min/m2、ヘモグロビン> 10g/dl、平均血圧>90mmHg、SpO2>98%、PaCO2>35mmHg、可能な症例であれば脳脊髄液ドレナージ、ナロキソンの投与、早期離床)を発症から2日間から5 日間を目安に行っている。今回、カルテレビューを行い下肢麻痺発症時と比較し、ICU退室時、退院時に下肢徒手筋力テスト(MMT)に改善が認められたか検討する。方法 2012 年4 月から2015年6月の間に当ICUに入室した心臓外科術後患者のうち下肢麻痺を発症した患者のカルテレビューを行った。結果 心臓外科術後に下肢対麻痺を発症した症例は7例あり、そのうち4 例が緊急の大動脈解離術後患者であった。2 例が人工心肺不使用の腹部血管術後患者、1例が予定手術の胸腹部置換術の患者であった。全例にbundle treatmentが行われたが、2 例は臨床的な出血傾向のため脳脊髄液ドレナージは施行されず、定時手術の1 例は術前に脳脊髄液ドレナージが挿入された症例で、残りの5例が発症後数時間以内に脳脊髄液ドレナージが試行された。Bundle treatment により7 例中5 例の患者で下肢MMTの改善を認めた。脳脊髄液ドレナージは下肢MMTの改善を認めた患者5例中4例に挿入され(1例は術前に挿入)、改善を認めなかった患者2例中1例に挿入された。また、全例でICU退室時から退院時にかけて下肢MMTの変化は認めなかった。結論 本研究は後ろ向き研究で対照群が存在しないためbundle treatmentの有用性については不明であるが、7 例中5 例で下肢MMTの改善を認めた。また、ICU入室中のみに下肢MMT の回復が認められ、早期発見及び介入の重要性が示唆された。