ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-515-DP5-4 VA ECMO管理に塩酸ランジオロールが有用であった2 症例鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 救急・集中治療医学講座政所 祐太郎、二木 貴弘、宮本 昇太郎、寺田 晋作、谷口 淳一郎、柳元 孝介、有馬 都、山口 桂司、安田 智嗣、垣花 泰之【背景】近年、救急医療の高度化が進みVA ECMO施行症例数、施行施設数は増加傾向にある。また、日本からVA ECMO に関する良好な成績も報告されている。しかし、日本にはVA ECMOに関する具体的なガイドラインは作成されておらず、その管理は各施設ごとの知識と経験に委ねられている。今回、VA ECMO管理に塩酸ランジオロールが有用であった2症例を経験したので報告する。症例1:29歳、女性、妊娠21週、劇症型心筋症。症例2:50歳、女性、薬剤性心筋症。2症例とも入院直後から心原性ショックに対しVA ECMO(大腿動脈送血)導入。その後、心機能改善に伴い右上肢のSpO2が低下。それぞれの症例にて、VA ECMO開始後から肺水腫、肺胞出血を併発しており、その影響で心臓から酸素化不良の血液が拍出されたことがSpO2 が低下した原因と考えられた。Mixing Pointをコントロールする目的で、塩酸ランジオロールを投与したところ右上肢のSpO2の再上昇を認めた。【考察】VA ECMO管理中の体内の血流は、VA ECMOから送血された血液と心臓から拍出された血液を合わせたものである。VAECMOの送血を大腿動脈から行った際には、ECMO の送血流量と心臓の拍出量のバランスにより、両者の混合する位置(MixingPoint)が変わる。肺炎や肺水腫、肺出血などで肺での酸素化が十分でない症例では心機能が改善するに伴いMixing Point が末梢側へ移動する。その結果、心臓や脳への酸素供給量が減少し予後が悪いと報告されている。今回、私たちは、VA ECMO 管理に塩酸ランジオロールを使用することにより、心臓や脳への酸素供給が維持できたと思われた。DP5-5 2014年のランジオロールの急性期管理における使用調査名古屋大学 大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学分野久保寺 敏、東 倫子、高谷 悠大、稲葉 正人、山本 尚範、沼口 敦、高橋 英夫、松田 直之【はじめに】急性期の頻脈管理として,アドレナリン作動性β受容体遮断を用いることを,当講座は管理バンドルの1 つに組み込んでいる。ランジオロール使用の調査結果を報告する【方法と結果】2014年1 月1 日から2014 年12月31日までの1 年間に,当講座が管理する救急・内科系集中治療室(EMICU)でランジオロールが投与された患者は43人で,平均年齢は 64.3歳だった。APACHEII スコアとSOFAスコアの平均はそれぞれ27.6と9.3であった。ICU入室の原因の内訳は心疾患が25.6%と最も多く,次に感染症が20.9%,大動脈解離が7.0%だった。不整脈の内訳は,心房細動もしくは心房粗動が44.2%と最も多く,次に洞性頻脈のrate調節が39.5%,発作性上室性頻脈などが16.3%だった。平均投与量は,心房細動や心房粗動が150mg,洞性頻脈のrate 調節が117mg,その他の頻脈が180mg だった。その平均投与時間は,順に603 分,822 分,542 分であり,ほぼ適正にその間の心拍調節ができていた。【結語】ランジオロールは,心房細動に対して最も高い頻度で使われていた。投与量は,その他の不整脈や洞性頻脈のrate調節と有意差を認めず,さらに速やかに心拍数の調節ができていた。DP5-6 デクスメデトミジン投与で惹起されたと考えられる徐脈性不整脈4 例の検討東京医科歯科大学 医学部附属病院 集中治療部塩田 修玄、原茂 明弘、大森 敬文、増田 孝広、丸山 史、若林 健二、足立 裕史、中沢 弘一、槇田 浩史デクスメデトミジン(DEX)は呼吸・循環抑制が少なく、譫妄を生じるリスクが低い、理想的な鎮静薬として集中治療の領域を中心に広く用いられ、保険適用の範囲も年々拡大されている。我々はこれまでに経験したDEX に関連すると考えられる4例の不整脈合併例を経験した。【Case 1】56歳男性。心臓血管外科手術を終え、抜管後の術後第2病日夜間にDEXを投与した。投与5時間後、高度ブロックから心停止に至った。【Case 2】87歳男性。胸水排液後の再膨張性肺水腫の疑いでNIPPVによる呼吸補助を施行した。DEXで鎮静を図ったが深夜に徐脈となり投与を中止したが、心電図を見直すと2度房室ブロックを生じていた。【Case 3】75歳男性。間質性肺炎の診断でNIPPVを用いながらステロイドパルス療法を施行した。第7 病日にDEXの投与を開始し、36時間後に2:1の房室ブロックを生じた。【Case 4】79歳男性。下肢の虚血性変化に対して切断術を施行した。当日夜間に、頻脈の治療にアミオダロンの持続投与を開始したが、DEXの投与を併用した所、高度徐脈から心停止に至った。【考察】DEXはシナプス前性にα2A及びα2C アドレナリン受容体を活性化して交感神経系にネガティブフィードバックを生じさせる。徐脈は交感神経緊張の低下の結果と考えられているが、一部は心臓内での房室伝導遅延による直接的作用の可能性がある。近年、少しずつ重篤な徐脈性不整脈惹起の症例報告が増えているが、我々の経験と同様、房室ブロックによると考えられるものが多い。本邦での適用拡大の臨床治験に於いても、心拍数の記録は行われたが心電図の詳細な変化は評価されておらず、注意が必要と考えられる。DEXの徐脈性不整脈は濃度依存性にも乏しいと推測され、伝導障害の潜在する例や、抗不整脈薬が使用されている例では心電図波形自体をモニタリングする等の注意が必要と思われる。